2007年は「iPhone」の年のように思えたかもしれないが、2008年はAppleにとって携帯電話メーカーになった年なのではないだろうか。
2008年にはiPhoneにとって難しい時期もあったが、Appleは自社初の電話機である同デバイスを最も重要な製品に育て、1年を終えた。2008年の初めには4カ国でガジェットのステータスシンボルであったiPhoneが、2008年の終わりには世界で2番目に売れているスマートフォンへと成長した。そのため、世界の景気が深刻に悪化しているにもかかわらず、Appleはテクノロジ業界の中で恐らく最も健全な財務状況を維持している。
iPhoneには困難もあった。米国のカリフォルニア州クパチーノを本拠地とするAppleは、iPhoneにアクセスするハッカーをコントロールできなかったため、iPhoneのロック解除が横行した。Appleでは通信料を分配する「レベニューシェア」価格モデルを断念して、業界で支持されているキャリアの販売奨励金モデルを採用しなければならなかった。広域にわたって電波受信状態に関する不具合が生じたため、ソフトウェアの大規模なアップデートが必要となったが、Appleは、iPhoneで初めてのこの重大な技術的失敗を乗り越えた。また「App Store」に対する開発者の反応に、Appleが苦労しているように見えることもあった。
しかし、iPhoneの成果は問題を補って余りあるものだった。「iPhone 3G」で目覚ましい結果を残した四半期の後、AppleはiPhoneの具体的な売り上げを公表した。iPhone 3Gには技術的な問題があったにもかかわらず、2008年第3四半期に販売されたiPhone 3Gの台数は、Research In Motion(RIM)の「BlackBerry」とすべての「Windows Mobile」フォンを上回った。開発者がこのプラットフォームにリソースを注ぎ込むにつれて、アプリケーションのダウンロードが急増した。
iPhoneが至る所で評判になる一方、「Mac」は着実に利益を上げ続けた。Macへの買い換えは増え続け、10月にはノートブックのラインアップを見直したことから、Appleの市場シェアは四半期ごとに拡大した。しかし、Appleでは7月と8月に失敗が続き、従来の「.Mac」ユーザーを「MobileMe」と呼ばれる新サービスへ移行させることは困難を極めた。
9月になり、毎年恒例となったAppleのiPodイベントを開催すると、Appleは調子を取り戻した。新しいiPodは今までほど話題にはならなかったものの、iPodの発売から何年たってもiPodの地位を脅かすほどの成果を上げた企業はほとんどない。iPodに関してAppleが現在抱えている最大の懸念は今後どうするかということであり、2008年の終盤には「iPod touch」をゲーム機器として売り込み始めた。
経営に関する2008年最大の話題は、iPodおよびiPhoneハードウェアエンジニアリング部門の責任者として、Tony Fadell氏の後任にIBMのMark Papermaster氏が選ばれたことと、同氏の入社が遅れたことだった。IBMはPapermaster氏のAppleへの移籍に対し、非競争契約を持ち出し、法廷闘争を始めることで、激しく抵抗する構えを見せた。この訴訟は2009年まで長引く可能性が高い。
最も興味をひいたのは、フロリダ州にある小さな会社Psystarが、「Mac OS X」のライセンスに関するAppleの制約条件に挑んでいることが業界で話題になったことかもしれない。必要最小限の機能だけを備えたデスクトップPCにMac OS Xをプレインストールして販売するというPsystarの決定は物議を醸し、最終的には訴訟にまで発展した。Macコミュニティーでは、Macクローンは得策であるかどうかが再び議論された。
最後になるが、Appleの最高経営責任者(CEO)であるSteve Jobs氏が6月のWorldwide Developers Conferenceに登場した際にやつれて見えたことから、さまざまなヘッジファンドや投資家がJobs氏に癌の診断を下そうとしたが、Jobs氏は2008年を乗り切っている。結局、Jobs氏は2005年のすい臓癌の治療に関連して消化器疾患の手術を受けたことを公表した。Jobs氏が2008年のその後の公のイベントや、Appleの決算発表に珍しく登場したことで、Jobs氏の健康に関する憶測は静まった。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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