Appleは米国時間10月21日、第4四半期決算発表の電話会議を開催した。しかし、この会議はいつもと異なり、特別ゲストの参加によりやや盛況なものとなった。そのゲストとは、最高経営責任者(CEO)Steve Jobs氏だった。
Appleの決算報告にJobs氏が出席するのは、今回が初めてというわけではない。しかし、普段は最高執行責任者(COO)Tim Cook氏と最高財務責任者(CFO)Peter Oppenheimer氏が同電話会議を取り仕切っており、Jobs氏の出席は非常にまれだ。Jobs氏は、同会議に飛び入り参加した理由について、Appleの決算に対する「iPhone」の貢献度をより明確にしようという同社の決定を補足するためと述べた。しかし、同氏が登場するのにこの日を選んだ理由は、恐らく1つだけではないだろう。
iPhoneの数字は確かに驚くべきもので、Jobs氏は自慢の種の成功について誇らしげに語った。Appleが第4四半期に販売した「iPhone 3G」は、これまでに販売したiPhoneの台数を上回った。しかし、Appleは2008年、Jobs氏が人前に姿を見せるたびに飛び交う同氏の健康をめぐる憶測や、Appleがメディアに後継者計画を公開していないのは計画がないからと信じる一部の自慢屋の能力のなさに悩まされてきた。さらに、念のために述べるが、現在はこれまでのような好景気ではない。
Jobs氏は、どのような場面においても、Appleとその未来について社内の誰よりもやや自由に話す傾向がある。おそらく、同氏がそうした権限を与えられた唯一の人物だからだろう。ここでは、Jobs氏のコメントを抜粋し、コメントが語られた状況とともに紹介したいと思う。
Jobs氏は、「隣の人はわれわれと同じく正確に(経済の健全性を)予測できる」といった、将来に悲観的な評価を述べるまでには至らなかったが、いくつか景気に関して警告を促すコメントをした。しかし、Appleには巨額の資金があり、これがあらゆる困難を乗り切るうえで役立つだろうと指摘し、「現在の経済環境は、現金を持つ企業にとってチャンスかもしれないと思う」と述べた。
また、Jobs氏は、少なくともライバル会社と比較して、Appleには固定客がいると考えている。「Appleの顧客を世界中のほかの顧客と引き替えに手放すことはしない。Appleは世界中で最も賢明で、製品に高い関心を寄せる顧客を抱えている。彼らは、経済状況が厳しいときには購入を控えるかもしれないが、Appleを見捨てることはない。(彼らは)他社に切り替えるのではなく、購入を遅らせるだけだ」
Appleの事業全体について、Jobs氏は、10月と4月はAppleにとって1年の中で「最も予想が付かない」月であり、一般的に最も緩やかな時期だという見解を述べたが、これは興味深い情報だ。また、同氏は、Appleが多額の現金を使って人材を採用し続けていくべきだとする金融アナリストの提言を冗談交じりで受け入れ、「『シリコンバレーのすべてのエンジニアを雇う』のはいい考えだと思うが」と述べた。
電話会議中、Jobs氏は「Mac」の価格についていくつか質問を受けた。一部のアナリストは、Appleが先週行ったときよりも大幅にMacの価格を引き下げると予想し、現在の経済状況から、人々はAppleよりも安いPCを購入するようになるかもしれないと考えていた。
しかし、Jobs氏はさほど気にしていないようだった。
「Appleがしたいのは、顧客により高い価値を提供することだが、あえて対応しないことにした顧客も存在する。われわれには、500ドルの価格でがらくたといわれないコンピュータを作る方法がわからない。われわれのDNAはそのようなことをするのを許さないだろう。われわれは、特定の市場区分に集中し、あらゆる人たちに対応する何でも屋にならないようにすることで、大成功を収めてきた。この必勝法は今後も変わることはない」(Jobs氏)
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