日立製作所は4月12日、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)方式を採用した大型リアプロジェクションディスプレイ「LCOSマルチディスプレイ」を開発したと発表した。従来の製品に比べて解像度が高く、ランニングコストが安く済む点が特徴。業務用のハイエンド機種と位置づけ、交通機関のコントロールセンターなどに向けて売り込む。
リアプロジェクションは、スクリーンの後ろからプロジェクタを使って画像を映し出すもの。LCOSは液晶方式やTexas InstrumentのDLP方式に比べて解像度が高く、色の再現性が優れるといった特性がある。LCOSはすでに一部の民生用ディスプレイに採用されているが、業務用のディスプレイは今回が「世界で初めて」(日立製作所ユビキタスプラットフォームグループCOOの篠崎雅継氏)という。
日立製作所ユビキタスプラットフォームグループCOOの篠崎雅継氏 |
LCOSマルチディスプレイは電力事業者や交通機関のコントロールセンター向けに提供する。制御・監視用の市場は大きなものではないが、リプレイスを含めて毎年安定した需要が見込まれるうえに、ブロードバンド化に伴って市場が拡大すると日立では見ている。
LCOSマルチディスプレイの特徴は主に3つ。細かい情報表示が可能な高精細化、ランニングコストの低減、高速ランプオートチェンジャの導入だ。まず画質については、解像度がSXGA+(1400x1050ドット)、コントラスト比は1100:1。応答速度は12ミリ秒で、液晶方式の20ミリ秒から大幅に縮めた。これにより、大画面でもちらつきや残像がなくなったという。
ランニングコストについては、表示パネルに高耐光性液晶パネルを採用し、紫外線による劣化を防ぐことで長寿命化を図った。また、偏光板の交換を不要にしたことで、ランニングコストを従来の半分以下に抑えたとしている。
ランプ交換については、ランプの寿命を感知して予備ランプに自動交換するオートチェンジャを搭載した。予備ランプの切り替え時間も数秒で済むという。また、24時間365日稼働するシステムに対しては、2つのランプを交互に利用してランプの長寿命化を図る仕組みも取り入れた。
50型4面マルチシステム(右)。液晶型のディスプレイ(左)に比べて画像が明るい |
サイズは50型と70型の2つで、7月30日より順次出荷する。価格は70型が1050万円、50型が840万円(ともに税込、マルチシステム構築標準作業を含む)。海外展開も行う予定だ。販売目標数は最初の2年間で国内が3000台、海外が2000台としている。
今後はスタンドアロンタイプの製品なども手がける方針。また、今回の技術を利用した民生用機器についても計画中で、「年内には民生用も作りたい」(篠崎氏)としている。
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