サンフランシスコ発--AT&Tの弁護士は米国時間5月17日に開かれた法廷で、同社が国家安全保障局(NSA)に通信設備を使わせるよう、Bush政権が法的承認を与えた可能性を示唆した。
連邦法は「場合によっては、通信会社が(行政に対して)情報を提供する必要を認めている」とBradford Berenson氏は語った。同氏は2001年の同時多発テロ直後にBush米大統領がNSA監視プログラムを承認した当時、ホワイトハウスの法律顧問だった人物で、現在はワシントンDCの法律事務所Sidley Austinのパートナーを務めている。
AT&Tは違法な盗聴行為の共謀者などではなく、「本質的に罪のない傍観者だ」とBerenson氏は言う。
AT&Tが主張したいのは、合衆国法律集第18編第2511条に定められた、不明瞭な部分についてなのかもしれない。同条は、司法長官が承認した場合に限り、通信会社が連邦政府に「情報」および「設備」を提供することを認めている。この承認は「・・・米国の司法長官によって書かれ、令状や裁判所命令を必要としないことが法律によって定められている証明書」の形式によるものでなければならない。
まだ公表されていない情報によって「罪のないことが示され、AT&Tの行動が申し分のないものだったことが明らかになるだろう」とBerenson氏は語った。しかし同氏は、AT&TがNSAの監視プログラムにかかわったとされる疑惑の詳細な点については、何一つ認めなかった。監視プログラムの問題発覚から米連邦議会での論議に火がつき、また1月には電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation:EFF)による集団訴訟も始まった。
法律家のなかからは、もしNSAプログラムが開始された当時の司法長官John Ashcroft氏が証明書を発行していたなら、AT&Tは責任を免れるだろうという見方も出ている(司法長官だけでなく、司法副長官や州検事総長なども証明書を発行する権限を有する)。
「もしも証明書が存在するのなら、AT&Tはかなり有利だと言える」と、電子プライバシー情報センター(EPIC)のエグゼクティブディレクターを務めるMarc Rotenberg氏は話す。同氏は「Information Privacy Law」という本の著者の1人だ。
この訴訟でEFFは、AT&Tがプライバシー法を破り、米国内で行われる通信のNSAによる大規模な監視に協力したと主張している。EFFが訴えの過程で掘り起こした極秘書類--開示されておらず非公開--によると、AT&Tは政府に対し自社のネットワークへの完全なアクセスを許可し、膨大な数の電子メール、ウェブ閲覧のセッション、通話の傍受を可能にしたとされる。
政府による証明書が存在するならば、AT&Tにとってはとっておきの切り札になる。合衆国法律集第18編第2707条によると、証明書を「善意」に基づいて信頼している場合は、いかなる民事、刑事訴訟においても完全に擁護される。
17日に米連邦地方裁判所でVaughn Walker判事のもとで行われた審理では、Carl Nichols司法次官補代理も、そのような証明書の存在をほのめかした。Nichols司法次官補代理は「AT&Tが自らの弁護のために提出したいはずの事実」が未公表になっていると語った。
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