電機大手8社の2011年3月期第1四半期連結決算は、NECを除く7社が最終黒字となり、業績回復の兆しを裏付ける内容となった。
連結売上高では、パナソニックの前年同期比35%増の伸び率を筆頭に、シャープ、日立製作所、三菱電機、東芝の5社が2桁増の伸び。営業利益ではNECが232億円の赤字となった以外は、7社が黒字。前年同期に唯一営業黒字だった三菱電機は6倍という大幅な伸びを見せている。
また税引前利益では日立製作所が1442億円を計上するなど、NEC以外は黒字。そして最終利益についても、日立製作所が860億円の黒字、パナソニックが437億円の黒字、三菱電機が262億円の黒字、ソニーが257億円の黒字を計上するなど、NECの431億円の赤字を差し引いても、8社合計で1510億円を超える黒字幅となった。
業績拡大の要因は、IT分野では企業の投資意欲回復や、クラウドコンピューティングといった新たな事業領域の成長のほか、世界的なPC市場の拡大といった動きが見られる。また、中国をはじめとする新興国市場での成長や、日本国内ではエコポイント制度のプラス影響もある薄型テレビ事業の拡大、さらにはPC需要の拡大などによって堅調な半導体事業が、各社の業績回復を下支えしている。
また、見逃せないのは各社の構造改革が業績拡大を後押ししていることだ。
「構造改革によりコスト構造が強化。損益分岐点を引き下げた。売り上げの増加以上に、利益が増加する体質になっている」(パナソニック、財務担当役員の河井英明氏)と、収益力の強化が業績を下支えしていることを示す。ソニーでも、コスト削減や事業構造改革の成果、そして商品力の向上による販売増加によって、テレビ事業が黒字化した点を強調する。
第1四半期の好調ぶりを背景に、上期業績見通しを上方修正したのが日立製作所、パナソニック、三菱電機の3社だ。富士通は上期の売上高を下方修正したものの、利益面では上方修正を発表。さらにパナソニック、ソニー、三菱電機の3社が、通期業績見通しを上方修正した。
こう見てみると、電機業界における業績回復は本格的なものにも思えてくるが、一方で海外ITベンダーおよび電機大手の業績の好調ぶりと比較してみると、まだ回復は「道半ば」のようにも見える。
アップルの4〜6月の業績は、前年同期比61%増の157億ドルと過去最高の売上高を達成。純利益も78%増の32億5300万ドルとなっている。4月3日に米国で発売した「iPad」が327万台を出荷したこと、6月24日から発売した「iPhone 4」が発売3日間で170万台を販売するといった新製品の好調ぶりとともに、Macが347万台と四半期ベースでの販売台数で過去最高を更新するといった動きも見逃せない。
マイクロソフトは、売上高が22%増の160億ドル、純利益は48%増の45億2000万ドル。4〜6月の四半期決算としてはこちらも過去最高を達成。Windows 7を累計1億7500万本販売したとして、Windows 7効果が見られていることを強調した。インテルも売上高は35%増の108億ドル、純利益は前年同期に欧州委員会から課された制裁金の影響で赤字となっていたが、純利益は29億ドルと大幅に改善。「42年間で最高の四半期業績」(CEOのPaul Otellini氏)という。
このように米国の主要ITベンダーは軒並み「過去最高」を更新している状況にあるほか、アナリストの予想を上回る業績が相次いでいるというのが実態だ。また、韓国のサムスン電子は、売上高は17%増の37兆8900億ウォンとなったものの、営業利益は前年同期比88%増の5兆100億ウォンとなり、やはり過去最高を更新している。
こうしてみると、日本の電機大手の回復ぶりは、世界的に見れば、まだ「本格的」とはいえないようだ。一方で、新興国の成長率鈍化、欧州の金融危機の影響、米国における個人消費の伸び悩み、そして円高基調で推移している為替の影響といった懸念材料もあり、下期には慎重な姿勢をみせる企業も少なくない。2011年1月以降の国内エコポイント制度終了後の反動を懸念する声もある。
日本の電機大手の業績回復が本格的なものかどうかを見定めるためには、もうしばらく時間が必要となりそうだ。
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