米国政府の新出入国プログラム、RFID採用でプライバシー侵害の懸念も

文:Declan McCullagh(CNET News.com) 翻訳校正:向井朋子、長谷睦2006年04月19日 22時37分

 バージニア州アーリントン発--国土安全保障省の当局者は米国時間4月18日、将来、政府が発行する渡航文書にコンピュータチップが埋め込まれ、最大で30フィート(約9m)離れた場所からも読み取り可能になることもあり得ると発言した。これに対し、そのようなチップはプライバシー侵害につながりかねないと懸念する声も上がっている。

 国土安全保障省の出入国管理プログラム「US-VISIT」のディレクターを務めるJim Williams氏は、当地で開催されたスマートカードに関する会議の席上で、米国人のカナダ、メキシコへの渡航手続きを簡略化するために2008年から採用される財布サイズの次世代型身分証明書に、この種のチップが組み込まれるかもしれないと語った。これらのチップはRFID(無線認識)技術を用いている。

 「米国内でも混雑する国境検問所を訪ねたことがない人に対し、わたしはいつも、あれが経済的なボトルネックになっていると説明している(中略)。われわれは技術を使い、現状を改善するべきだ」とWilliams氏は述べた。同氏の部門では、米国発行のビザを所持して米国境を越えようとする人の指紋が本人の指紋と一致するかを照合するための生体認証技術の導入プログラムを進めている。

 Williams氏による今回の発言は、RFIDに対する懸念を高めることになりそうだ。RFIDは活動家からの猛反発を招き、米国議会や米連邦取引委員会(FTC)でもその問題に関する公聴会が開かれた。また、カリフォルニア州議会では、ある議員がRFID規制法案を提出したことさえある。

 一般に、RFIDタグとは個別のID番号を伝送する短いアンテナが付いた極小チップを指すが、このチップをめぐるプライバシー侵害の懸念は、主に遠くからでも読み取り可能かどうかという点に集まっている。読み取り可能な範囲が数インチであれば、プライバシーへの懸念は緩和される。しかしこれが30フィートにおよぶとなれば、道端やショッピングモールにひそかに設置されたセンサーや、あるいは通りすがりの人の身元をID番号を使って特定しようとする犯罪者の手によって、RFIDタグが読み取られることも理論上はあり得る。

 会議の参加者からは、読み取り範囲が数インチに限られたタグを使ってはどうかとの意見も出されたが、これに対してWilliams氏は、遠くからでも読み取り可能なRFID身分証明カード導入の妥当性を強調した。同氏は、国境警備隊が読み取り範囲の狭いカードの採用に反対していると述べ、その理由を「現場の係官は、人々がカードを紛失する恐れがあることや、車の窓からカードを提出させると手間がかかる点を懸念している」と説明した。「国境通過プロセスをスピードアップするという任務の目的を、それでは果たせないと係官たちは考えている」とWilliams氏は語った。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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