米下院で先ごろ、標準化された、コンピュータで読み取り可能な運転免許証の実現に向けた法案が可決されたが、これがナショナルIDカードの導入につながるのではないかと懸念する声が上がっている。
同法案については、各党の方針に沿って賛否が大きく分かれたが、米下院は共和党が提出した同法案を可決した。同法案が立法化された場合、米国の各州は、2008年以降、連邦政府が定めたテロ対策基準に準拠した運転免許証の発行が義務付けられる。連邦政府職員は同基準に準拠していないライセンスやIDカードを受け付けないため、連邦政府が管理する航空機、国立公園、一部の裁判所などは米国人による利用が制限される可能性がある。
米議会内で駆け引きが行われている背景には、IDカードに機能性/安全性強化を目的とした技術を組み込むことについて、各国政府が関心を強めているという事情がある。米国務省は、間もなく、RFIDが組み込まれたパスポートの発行を開始する。またバージニア州は、米国で初めて、すべての運転免許証にRFIDを組み込む見込みだ。
同法案に反対した8人の共和党議員のうちの1人であるRon Paul下院議員(テキサス州選出)は先週行われた審議の中で、「(同法案の)支持者らは、同法案はあくまで任意であるため、これはナショナルIDではないと主張する」と述べ、さらに次のように続けた。「しかし、同法案の導入を見合わせた州の住民は、自動的に社会的弱者にされてしまい、航空機や列車を利用できなくなる」
Paulは、「Real ID Act」と呼ばれる同法案が立法化されれば、国土安全保障省が、州のIDカードや運転免許証を自由に設計できるようになってしまうと警告する。IDカードに組み込まれる可能性のある情報/技術としては、網膜スキャン、指紋、DNAデータといったバイオメトリック情報やRFIDを使った追跡技術などが有力だ。
Real ID Actの支持者らは、同法案は同時多発テロに関する独立調査委員会(9・11委員会)の提案に沿って作成されたものであり、テロ行為や違法移民を阻止するために必要であると主張する。IDカードについての規定は、同法案のごく一部であり、その他の部分は移民法や亡命希望者の扱いに関連したものだ。F. James Sensenbrenner下院議員(ウィスコンシン州選出、共和党)は先週、次のように語った。「米国民は、誰がこの国にいるのか、本当に彼らが自ら名乗っている通りの人物なのか、自動車免許証に記載されている氏名が偽名ではなく本物であるのかを知る権利がある」
下院多数派院内総務のTom DeLay下院議員(テキサス州選出、共和党)は、「これらの常識的な改革が2001年に行われていたとしたら、同年の9月11日に発生した同時多発テロを阻止できていただろう。さらに今後も9・11と同様の惨事の発生を防止する上で大いに役立つだろう」と語った。
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