ネット+モバイル世界の最新ソーシャルコミュニケーション事例 - (page 2)

執筆:ヤマグチガク アドバイザー:福島慎一 監修:海老根智仁(株式会社オプト)2008年07月14日 17時23分

 私はこのキャンペーンの成功のポイントを以下の3点と捉えています。

  • ターゲットのインサイトをしっかりと掴んだ
    例)携帯電話が欲しい。通話料金が払えない。勉強はわからないから、つまらない。つまらないから、わからない。勉強しても得しない。
  • ターゲットとコミュニケーションするための最適な媒体を作った
    コミュニケーションデバイスとしての携帯電話
  • インセンティブを与えることで勉強への挫折感の前に達成感を味わせた
    インセンティブを与えて勉強させることに、多くの方は抵抗を感じるでしょう。しかし、良い点を取った時の大きな達成感(=インセンティブ)を味わったことがない子供達には、まずは小さな達成感(=友達と通話ができるようになる)を味あわせて、徐々に大きな達成感へ導くという、良いスパイラルを生み出すのが、やはり、最良の方法なのだと私も思います。実は私の小2の子供も某社の通信教育をやっており、最初はインセンティブ目当てだったので、若干心配したのですが、今ではすっかり勉強すること自体を楽しんでいるようです。

 さらにこのキャンペーンは協力企業のVerison、Samsungにも以下の4つの大きな成果をもたらしたのではないでしょうか。

  • 将来の顧客及びその家族からのブランドロイヤリティの向上
  • 意欲の高い従業員の獲得、維持
  • キャンペーンの報道によるPR効果
  • ニューヨーク市との強固な関係構築

 このキャンペーンから学ぶべきは、インターネット+携帯電話がターゲットごとにカスタマイズしたコミュニケーションに非常に適しているということです。

MILLIONキャンペーンMILLIONキャンペーン図解(クリックすると拡大します)

 周知のことですが、STP(セグメンテーション/ターゲティング/ポジショニング)はマーケティング戦略を立てる上でとても大切な要素です。それがきちんと設計できている企業・商品・ブランドであればあるほど、インターネットやデジタルデバイスなどを最新技術に振り回されず使いこなすことができるのではないでしょうか。

 カンヌを獲るようなプロモーションにおいても、ソーシャル系のマーケティングにおいても、通常のマーケティングと大切なポイントは全く同じで、1)以下のような順序・鉄則をきちんと守り、かつ、2)以下のどの場面でもクリエイティビティを忘れないことなのだと思います。

  • STPをしっかりとブレなく構築する
  • ターゲットインサイトをがっちりと把握する
  • 媒体にこだわらない自由なコミュニケーションプランを設計する
  • そのコミュニケーションプランに応じて媒体を最適配分する(場合によっては媒体を作る必要がある)
  • 上記に沿った上で、最大限の表現上のクリエイティブジャンプさせる

モバイルマーケティング、ソーシャルマーケティングはもっと大胆に

 日本のモバイルマーケティングは世界の最先端を進んでいると信じている方も多かったのではないでしょうか。私もその1人でした。小手先の技術やミクロな部分では確かに最先端を行っているのかもしれません。

 しかし、今回ご紹介したキャンペーンのように、携帯電話を無料で配布してしまったり、ターゲット用にカスタマイズしたりするような大胆なアイディアを採用できる方は、日本のマーケティング業界には稀有な存在ではないでしょうか。来年の世界の広告賞における、日本のモバイルマーケティング、ソーシャルマーケティングの健闘を祈ります。

ヤマグチガク株式会社オプト
コミュニケーション開発本部 主任研究員

青山学院大学国際政治経済学部卒。在学中より環境NGO、エコロジーショップに勤務。卒業後、総合広告代理店にて情報システム管理業務、ウェブ制作プロデュース&ディレクション業務を担当。数々のウェブサイトを立ち上げ、2006年10月よりオプトにて、クリエイティブ・企画業務を担当。D2Cモバイル広告大賞プッシュ型広告賞受賞。BLOG「広告が世界にできること」執筆中。32歳1女1男の子持ち。家族と仕事を愛してます。

福島慎一株式会社オプト
経営戦略部

外資系光学機器メーカーを退職後、渡米。カリフォルニア州立大学サクラメント校を卒業後、2005年1月(株)オプト入社。マーケティング部配属となり、ネット広告全般のプランニングや調査など経験。現在、経営戦略部に所属し、海外の市場動向を探る。

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