PC、家電を凌駕するゲーム機
いずれにしても、進化したゲーム機の用途がゲームに限定したものではなくなりつつあるのは事実だ。例えば、スペックまで発表された次世代ゲーム機のプレイステーション 3(PS3)とXbox 360を現行機種と比較してみよう。
CPUの浮動小数点演算能力でみると、PS2から3への進化で35倍(6.2Gフロップから218Gフロップ)、Xbox 360ではなんとXboxの78倍ものパワー(1.46Gフロップから115.2Gフロップ)になっている。特にPS3のCellチップは、一般的なPCと比較して10倍から15倍程度の処理速度を擁しているとすらいわれている。PCを凌駕している、といっても過言ではない。
皮肉にもPS3とXbox 360(そして、詳細はわからないが、任天堂のRevolutionも)のCPUコアは共にIBMのPowerコアをベースにしたものだ。単純にはいえないものの、PS3のCellチップは8つのコアを搭載している分、システム全体での浮動小数点演算性能でコア3つのXbox 360の2倍(Xbox 360が1Tフロップ、PS3が2Tフロップ)にもなっている。
いずれにしても、仮にWindowsやMac OSを移植すれば、そのまま現行PC以上の性能を叩き出すに違いない。あるいは、チューナーカードを挿せば、デジタルハイビジョン対応のハードディスクレコーダー(PVR)やホームサーバー、またはサーバー型放送端末といったデジタル家電(CE)の心臓部として十分に機能するだろう。
放送・通信・家電の融合の中核に?
以前、米国でケーブルがブロードバンドの本命と言われたとき、ケーブルSTBの規格を決定するコンソーシアム「Cable Television Laboratories(CableLabs)」の存在が大いに注目を集めたことがあった。今でいうところのトリプルプレー(放送とネット、電話サービスの一体提供)実現のためのハードウェアとしてケーブルSTBが有望視されたからだ。同様に、PS2やXboxが発売された当初、ホームサーバーとしての可能性が指摘されたが、ブロードバンドの普及状況やネットワークへの対応の遅れなどが響いて、ゲーム機が家庭とネットの接点となる可能性はあまり現実味を持つことはなかった。それでも、最終的な到達目標がリビングルームであることは、依然として間違いない。
ただ、現在ではブロードバンドが一般家庭の多くに導入され、IP電話がかなりの割合で利用されている。後はいかに放送を取り込む装置=テレビにつながるポジションをとるかが、今後さまざまな産業を巻き込んで成長していくであろう放送通信の融合市場という側面から重要になってきている。
ここで、(複数のTVチューナーを備えて1週間分のすべての放送番組を記録できてしまうソニーのVAIO type Xは極端な例としても)ほとんどの家庭用デスクトップPCがTVチューナーを備えた形で出荷されているという現実と、Linuxをベースにした組み込みOSとダウンロードしたアプリケーションやドライバによって機能を進化させることが可能なDVDレコーダーの世帯普及率が28%を超えているという状況(内閣府消費動向調査で2005年3月末時点)をかんがみると、ハードウェアの更なる進化の方向性はPCとCEの中間にあるという予感がする。
とはいえ、OSも含め何から何までもHDDに書き込むことで可塑性を高めているために利用面での不安を感じざるを得ないPC、逆にすべてがハードで形作られて何も変更ができない点で不便さを感じさせてしまうCEに拘泥している限り、その中間解は見えてこない。この点で、ハイスペックCPUとソフトによる可塑性を担保するHDDやシリコンメモリを標準で備えた次世代ゲーム機はPCとCEの中間に位置しうるのではないか。
例えば日本では家電メーカーの牽制もあってあまり普及していないが、Windows XP Media Center Editionを抱えるマイクロソフトは、PCからリビングルーム/TVへの侵攻のための橋頭堡としてMedia Center Extenderを内蔵したXbox 360を位置づけるだろう。すなわち、PCとゲーム機をセットにしてリビングルーム攻略を狙うことになる。ただ、政治的な影響を考慮してか、そのことを全面的にマイクロソフトは示していない。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」