IP電話市場が主役として爆発的に拡大する鍵 - (page 2)

VoIPに突きつけられた課題の克服

 そんな大和氏がIP電話の課題として捉えているのは、「IP電話が“電話”という概念に囚われすぎて、電話の形をしたコミュニケーションという広がり方しかしていないことだ」と言う。これでは、今後におけるVoIPの発展を妨げる可能性もある。

 大和氏は、VoIPを効果的に使った真のIPコミュニケーションのメリットとして以下の3点を挙げた。(1)IPネットワーク上でアプリケーションとして動作する(業務アプリケーションとの連動・選択)こと、(2)音声を情報として扱えること、(3)IPネットワーク(IPアドレス)と電話番号を組み合わせられること。つまり、コミュニケーションの仮想化と個別化が実現するという考えだ。

 仮想化としては、これまでの「固定電話」や「携帯電話」といったツールオリエンテッドな考え方から、ネットワークセントリックへと移行することで、同じIPと電話番号で最適なツールを選べるようになる。例えば、メールやボイスメール、チャット、ビデオチャットなどの中から選択する。個別化が実現すれば、個人の履歴を利用できるようになるので、自然言語の判断やリッチメディアの使い方、デバイスによるデータ形態の変化などから、ユーザーに最適なかたちを提供できるようになる。コミュニケーションがより自由になるという発想だ。

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「2005年末の利用者は約7500万人に」とSkypeのショーティノ氏

 Skypeのショーティノ氏は、同社のビジネスモデルや今後の展開を語った。「2003年に会社を設立して以来、アジアにおけるSkypeの利用者は全体の27%を占める」と言う。それでもショーティノ氏が日本担当に就任した2004年8月は、まだ市場が伸び悩んでいる時期だった。しかし、2005年の夏より状況が変化し、AmazonやeBayよりも成長率が高いブランドへと一転する。2005年の第3四半期はユーザー数が5700万人を記録し、2005年末で約7500万人を見込んでいる。

 Skypeが現在提供している有料サービスは、固定もしくは携帯電話からSkypeへ電話できる「スカイプイン」、Skypeから固定または携帯電話へ電話できる「スカイプアウト」、留守番電話サービス「ボイスメール」だ。今後は、クリックすればSkypeで相手にコールする「Skype Me Button」をはじめとしたインターネット上での視覚展開、ソフトウェアとの連携、モバイル展開、APIの公開による企業への本格的なアプリケーション導入などを考えている。

 「Skypeは、最初から法人マーケットを狙ってはいない。それぞれのマーケットで様々なアプリケーションを加えて、初めて大企業で使ってもらえるようなモデルだ」と、ショーティノ氏は戦略を語った。

 セッション会場からは、「電話との融合を考えた際、現実問題としては今日明日でのPBX IP化は不可能ではないか」という意見が出た。現時点では、従来の電話とのゲートウェイをどこに置くべきなのかということがポイントとなる。ゲートウェイがある限り、企業においてVoIPの爆発的なブレイクが難しいのではないかというわけだ。

 それに対してケリー氏は、「たしかに、IP PBXの話をしに行く企業の90%以上が、『いつかはIPになるのだろうけど……』という話から始まる。移行するコストが予想以上にかかるし、従来の業者もかなり値下げするため、IPだからといって激安にはならない」とVoIP普及の難しさを認めた。その上で、「もうIPしかつなぐことができないという時代がそこに控えている。そのときにネットワークを2つ維持するのは高額だ」と説明した。安いからIPを選択するのではなく、今後の時流について理解してもらえるように務めているのだ。

 シスコシステムが勧めているのは、「新しい電話の増設や、PBXからの移動があったところからIP化を進める」という、ネットワークの新規導入や変更時の移行だ。その上でルータースイッチをゲートウェイとして利用する。PBXとの間にルータースイッチを入れ、IPテレフォニーとルーターとのゲートウェイとしてPBXを共存して使ってもらうという方法を採る。

 大和氏によると、「IPテレフォニーを導入した企業は、ほぼ100%自分たちでアプリケーションを作り込んでいるのだ」と言う。例えば、既存のメールやデータベースを電話番号にリンクさせ、クリックするだけで利用できるようにしたり、より高度なユニファイドコミュニケーションとして音声自身をデータで扱える仕組み提供するといった具合だ。

 そうした実績もあり、シスコシステムズでは各企業に「もう一度コミュニケーションを見直した方がいい」と説いている。安くなるだけではなく、仕事の効率が劇的に向上することや、大きな成果を得られることをアプローチするやり方で、今後のVoIP導入におけるコミュニケーションを提案した。

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