最終更新時刻:2011年2月28日(月) 21時26分

Techventure 2008 CNET NETWORKS Japan

豊かな交流促す技術の舞台は「携帯」であり「グローバル」--ウタゴエ園田社長に聞く

松島拡

2008/05/01 22:21  

 ユーザーが携帯電話のマイクを通して歌った曲名を、高速な検索手法を使って当てる「うたごえ検索」を看板技術として、2001年に設立されたウタゴエ。「人々のコミュニケーションを豊かにする」をポリシーとする同社は、グリッド技術を用いて、高品質かつ低コストで映像・音声・ファイルを配信する事業にも着手し、すでに海外進出への第一歩も踏み出している。

 同社代表取締役社長の園田智也氏に、事業概要や今後の展望などについて聞いた。

「24時間、365日、全世界をつなぐ」

――「うたごえ検索」の事業と、使われている技術について解説して下さい。

 当社設立当初からの事業である、歌声による曲検索システム「うたごえ検索」は、私が早稲田大学在学中に研究していた技術を事業化したもので、携帯電話向けの音声による楽曲検索サービスとして、携帯電話事業者にライセンス提供しています。2006年9月からは、このサービスをプリインストールした端末も発売されており、ユーザー数は増え続けています。

 「うたごえ検索技術」は、いわゆる音声認識とは違い、歌声という不完全なメロディパターンを、J-POPを中心とする数万の対応楽曲の全パートとマッチングさせ、順位付けする仕組みです。従来の技術では、音の高低のみを利用するものが多かったのですが、「うたごえ検索技術」では、音程とテンポを同等の情報量を持つ記号列に変換し、非常に精度の高い高速な検索を可能としました。現在では、現行の「うたごえ検索」の約1万倍の速度で動作し、より自由に歌ってもマッチングできる新アルゴリズムも開発済みです。

――では、もう一方の主軸である、グリッド事業について説明して下さい。

 当社は「うたごえ検索技術」からスタートしましたが、2003年に社名変更した際、「24時間、365日、全世界をつなぐ」という当社のミッションを再確認し、次第に通信分野へと興味が移っていきました。そこで始めたのが、グリッド技術を応用した、映像コミュニケーション事業です。

 当社では2年前から、実地での試験を繰り返し、精度を高めてきた結果、商用レベルのものを作り上げることができました。2008年に入ってからは、テレビ東京ブロードバンド社と共同で、日経CNBC(経済ニュース専門チャンネル)の電波で流れているコンテンツをネット上で同時配信するという実験を行いました。著作権の問題をクリアするのが難しいため、こうした技術がテレビ局に採用されるのは非常に珍しいケースといえます。現在では、このグリッド事業が当社の中核となりつつあります。

 かつてウェブは、サーバーとクライアントというモデルで動く世界でしたが、人と人とをダイレクトにつなぐグリッド技術を使えば、ユーザーのPC同士を直接やりとりさせ、いろいろなビジネスモデルや経済効果を生むことができます。2011年には地上アナログ波が停止されますし、電波をインターネット上に乗せることは、新たな社会インフラを作っていく重要な試みです。

 ただし、当社はあくまでも技術の立場として、テレビ局、インターネットプロバイダ事業者、そして著作権保護団体と一緒に作っていきたいと考えています。

――グリッド事業のビジネスモデルは。

 「うたごえ検索」同様、中心は技術のライセンス提供です。加えてアメリカでは、ユーザーがチャネル番号を購入することで、自分のPCから映像配信する権利を持てるというビジネスモデルを導入しています。チャネル番号はすでにインターネットで購入可能ですが、まだマーケティングの最中で、今後の展開を模索している段階ですね。

ベンチャー支援企業の取り組み
プラットフォーム事業でベンチャーとWin-Winの関係を
NECビッグローブ株式会社
2006年7月にNECからインターネットサービス事業部門が独立、分社化したNECビッグローブ

企業市民活動の一環としてベンチャーを自治体とともに支援
日本マイクロソフト株式会社
33年前、アメリカシアトルの一ベンチャー企業として出発し、21世紀を代表する世界的企業に成長したマイクロソフト

国内の投資成果を生かし海外への進出も積極的に
株式会社サイバーエージェント
事業ドメインの3本柱として、「ネット広告代理店業」「ネットメディア事業」とともに、「投資育成事業」を掲げているサイバーエージェント

SpikeSourceを核にWeb2.0企業との協業を進める
日本電気株式会社
半導体事業からハードウェア、ソフトウェア開発までコンピュータ関連ビジネスを幅広く手がけているNEC

起業直後のベンチャーが事業に集中できる環境作りを
ソネットエンタテインメント株式会社
好調な業績を背景に今年1月17日に東証一部への上場を果たしたソネットエンタテインメント

協賛企業
最新インタビュー
グローバル展開こそネットの醍醐味--アイ・ブロードキャスト上田社長に聞く
株式会社アイ・ブロードキャスト
携帯電話向け画像・動画変換ソフト開発のアイ・ブロードキャスト。同社代表取締役である上田拓右氏に企業概要と今後の展開などについて聞いた。

位置連動型広告は日本から世界へ--シリウステクノロジーズ宮澤社長に聞く
株式会社シリウステクノロジーズ
「位置情報に付随して表示するマッチング広告」を武器に大学在学中に起業したシリウステクノロジーズ代表取締役社長の宮澤弦氏に聞いた。

モバイルサイトを育て、起業家を生み出す―エンターモーション島田社長に聞く
株式会社エンターモーション
モバイルの世界で近年盛り上がりを見せているのが、広告を主体とした一般サイトだ。エンターモーションはそうした一般サイトのビジネスを支えるソリューションを提供するとともに、起業家の育成にも力を入れている。

「世界初」が世界進出への個の力を結集させる--エニグモ須田共同CEOに聞く
株式会社エニグモ
エニグモが提供するサービスはどれも独自性に溢れている。その源泉となるものは何か――。同社共同最高経営責任者を務める須田将啓氏に聞いた。

2chの哲学、異質な動画共有「ニコ動」として世界へ--ニワンゴ杉本社長に聞く
株式会社ニワンゴ
PCのID登録者数が600万人を突破した「ニコニコ動画」の勢いが止まらない。その成功の原点と今後の方向性についてニワンゴ代表取締役社長である杉本誠司氏に聞いた。

目指すは国境なき取引市場の中継地点--オークファン武永社長に聞く
株式会社オークファン
モノとモノの取引は、価格情報が明確であれば容易に取引の場は国境を越える――。商品の総合的な相場検索サービスを展開するオークファン社長の武永氏に、設立の経緯や今後の展開などを聞いた。

世界的なソフトウェア会社を日本から--コミュニティーエンジン中嶋社長に聞く
コミュニティーエンジン株式会社
オンラインゲームなどに活用される通信ミドルウェアの開発などを行うコミュニティーエンジンの中嶋謙互社長に、事業の現状と今後の展望を聞いた。

放送の視聴機革命が、通信融合の未来を変える--PTP有吉社長に聞く
株式会社PTP
地上波全チャンネル、24時間すべての番組を録画する。しかも、圧倒的な使い勝手の良さ――。大容量ハードディスクレコーダー「SPIDER PRO」を展開するPTP代表取締役社長である有吉昌康氏に聞いた。

豊かな交流促す技術の舞台は「携帯」であり「グローバル」--ウタゴエ園田社長に聞く
ウタゴエ株式会社
「うたごえ検索」を看板技術として設立されたウタゴエ。「人々のコミュニケーションを豊かにする」をポリシーとし、「グリッド技術」を用いた映像等の配信事業にも着手。すでに海外進出へも踏み出している同社社長の園田智也氏に聞いた。

画像認識技術で新たな広告市場を切り開く――ジェイマジック宮田社長に聞く
ジェイマジック株式会社
ジェイマジックは、芸能人の誰に似ているかを教える「顔ちぇき!」で一躍有名になった。ただ、元々は画像認識技術を活用したサービスを展開する企業であり、携帯電話やネットと絡めることで、大きなビジネスの展開を狙っている。