最終更新時刻:2011年2月28日(月) 21時26分

Techventure 2008 CNET NETWORKS Japan

放送の視聴機革命が、通信融合の未来を変える--PTP有吉社長に聞く

高瀬徹朗

2008/04/24 16:32  

各方面に配慮したビジネスモデル

――テレビ放送とは共存という考え方。

 共存というより、もとより対立する軸のないサービスと考えています。ユーザー視点で考えれば「接触機会の増大」ということになるわけですから。ただし、インターネットを活用したサービスということもあり、テレビ局に誤解を与えることだけは避けるよう、慎重に進めた部分はあります。

 そうした活動のかいもあってか、現在では多くの放送局関係者からも正しい理解を得ることができました。放送映像をすべて蓄積するという機能を考えれば放送事業者は大切なユーザーともなりえます。実際、多くの放送局で高い評価をいただけるようになりました。

 もちろん、ルール上で放送事業の妨げになるような機能は用いていません。例えば、お気に入りの番組やCMを他のユーザーに勧める機能がありますが、これは「SPIDER」ユーザー同士でのみ有効であり、また動画そのものを流通させるものではありません。あくまでお勧め動画に関する情報を共有することで、個々のSPIDERから当該動画を呼び出すことができる機能。通信回線や社内LANによる動画のやりとりなどは敢えて行われないようにしています。

――現在は主にプロ用。将来は一般用になる?

 もともと「TiVo」を見て開発した製品ですから、当然、将来は幅広く一般家庭向けの商品にしたいと考えています。しかし、ステップとしていきなり一般向けの大量生産ビジネスは難しい。企業としても実績を積んで、厳しいプロの目でお墨付きをもらってから廉価版を出す、という段階を踏もうと考えていました。

 現在は放送関係者のほか、一般企業でも120社以上でご利用いただいています。広報や宣伝、マーケティングなどのプロフェッショナルな方々がお使いになられています。

 プロの方からのクチコミが広がり、いまの製品を自宅に「欲しい」と言ってくださる一般ユーザーも多いんです。価格面、サポート面は現状のままということを条件に販売していますが、こうした声を聞く限り、やはりいずれは一般向けへ、という気持ちが高まります。

 もうひとつ、現在はアナログ放送対応機であり、完全デジタル放送移行となる2011年に向けてデジタル放送対応を考えていかなければなりません。コピー制御などデジタル固有の条件もあり、制度的な動きも見守りながら早急な対応を進めています。

――最後に、今後の展望を。

 これまではハード・ソフト、サービスなどすべてに責任もって自前で対応していくことに優位性を持ってきましたが、一般向け販売を行う際には「餅は餅屋」と考えています。量産、流通などさまざまな面で大手メーカーの優位性が発揮されることは確実ですから。

 また、現在、検索などに関する各種メタデータ生成は外部に委託していますが、これも同様です。。顧客からのニーズはフードバックして共有しながら、専業の会社に任せることで、より詳細で優れた情報提供が可能となっているわけです。

 「新たなライフスタイルの提供」という当初からの目的を果たすために、1社ではできないことは企業連携をして柔軟に対応しながらSPIDERの強みを生かして前へ進んでいきたいと考えています。

ベンチャー支援企業の取り組み
プラットフォーム事業でベンチャーとWin-Winの関係を
NECビッグローブ株式会社
2006年7月にNECからインターネットサービス事業部門が独立、分社化したNECビッグローブ

国内の投資成果を生かし海外への進出も積極的に
株式会社サイバーエージェント
事業ドメインの3本柱として、「ネット広告代理店業」「ネットメディア事業」とともに、「投資育成事業」を掲げているサイバーエージェント

企業市民活動の一環としてベンチャーを自治体とともに支援
日本マイクロソフト株式会社
33年前、アメリカシアトルの一ベンチャー企業として出発し、21世紀を代表する世界的企業に成長したマイクロソフト

SpikeSourceを核にWeb2.0企業との協業を進める
日本電気株式会社
半導体事業からハードウェア、ソフトウェア開発までコンピュータ関連ビジネスを幅広く手がけているNEC

起業直後のベンチャーが事業に集中できる環境作りを
ソネットエンタテインメント株式会社
好調な業績を背景に今年1月17日に東証一部への上場を果たしたソネットエンタテインメント

協賛企業
最新インタビュー
グローバル展開こそネットの醍醐味--アイ・ブロードキャスト上田社長に聞く
株式会社アイ・ブロードキャスト
携帯電話向け画像・動画変換ソフト開発のアイ・ブロードキャスト。同社代表取締役である上田拓右氏に企業概要と今後の展開などについて聞いた。

位置連動型広告は日本から世界へ--シリウステクノロジーズ宮澤社長に聞く
株式会社シリウステクノロジーズ
「位置情報に付随して表示するマッチング広告」を武器に大学在学中に起業したシリウステクノロジーズ代表取締役社長の宮澤弦氏に聞いた。

モバイルサイトを育て、起業家を生み出す―エンターモーション島田社長に聞く
株式会社エンターモーション
モバイルの世界で近年盛り上がりを見せているのが、広告を主体とした一般サイトだ。エンターモーションはそうした一般サイトのビジネスを支えるソリューションを提供するとともに、起業家の育成にも力を入れている。

「世界初」が世界進出への個の力を結集させる--エニグモ須田共同CEOに聞く
株式会社エニグモ
エニグモが提供するサービスはどれも独自性に溢れている。その源泉となるものは何か――。同社共同最高経営責任者を務める須田将啓氏に聞いた。

2chの哲学、異質な動画共有「ニコ動」として世界へ--ニワンゴ杉本社長に聞く
株式会社ニワンゴ
PCのID登録者数が600万人を突破した「ニコニコ動画」の勢いが止まらない。その成功の原点と今後の方向性についてニワンゴ代表取締役社長である杉本誠司氏に聞いた。

目指すは国境なき取引市場の中継地点--オークファン武永社長に聞く
株式会社オークファン
モノとモノの取引は、価格情報が明確であれば容易に取引の場は国境を越える――。商品の総合的な相場検索サービスを展開するオークファン社長の武永氏に、設立の経緯や今後の展開などを聞いた。

世界的なソフトウェア会社を日本から--コミュニティーエンジン中嶋社長に聞く
コミュニティーエンジン株式会社
オンラインゲームなどに活用される通信ミドルウェアの開発などを行うコミュニティーエンジンの中嶋謙互社長に、事業の現状と今後の展望を聞いた。

放送の視聴機革命が、通信融合の未来を変える--PTP有吉社長に聞く
株式会社PTP
地上波全チャンネル、24時間すべての番組を録画する。しかも、圧倒的な使い勝手の良さ――。大容量ハードディスクレコーダー「SPIDER PRO」を展開するPTP代表取締役社長である有吉昌康氏に聞いた。

豊かな交流促す技術の舞台は「携帯」であり「グローバル」--ウタゴエ園田社長に聞く
ウタゴエ株式会社
「うたごえ検索」を看板技術として設立されたウタゴエ。「人々のコミュニケーションを豊かにする」をポリシーとし、「グリッド技術」を用いた映像等の配信事業にも着手。すでに海外進出へも踏み出している同社社長の園田智也氏に聞いた。

画像認識技術で新たな広告市場を切り開く――ジェイマジック宮田社長に聞く
ジェイマジック株式会社
ジェイマジックは、芸能人の誰に似ているかを教える「顔ちぇき!」で一躍有名になった。ただ、元々は画像認識技術を活用したサービスを展開する企業であり、携帯電話やネットと絡めることで、大きなビジネスの展開を狙っている。