楽しいテレビの未来を考える会は7月22日、「第12回 テレビとネットの近未来カンファレンス」を開催した。会場では、YouTubeやニコニコ動画などの動画共有サービスや全録マシン「SPIDER zero」など、テレビを取り巻く新たな環境について語られた。
モデレーターにKandaNewsNetwork,Inc.代表取締役の神田敏晶氏と情報考学Passion For The Futureの橋本大也氏を迎え、2部構成で行われた。第1部を早稲田大学大学院国際情報通信研究科客員助教授の境真良氏によるプレゼンテーション、第2部に全録レコーダーSPIDER zeroを企画開発するPTPの代表取締役社長有吉昌康氏によるSPIDER zeroの機能が紹介された。続いてアジャイルメディア・ネットワーク取締役の徳力基彦氏、メタキャスト取締役チーフ・ビジョナリーの井上大輔氏らも参加し、パネルディスカッションとなった。
境真良氏によるプレゼンテーションでは「テレビ産業、コンテンツ産業のあるべき姿と、そのための産業政策」をテーマに、約1時間程度行われた。
「テレビの普及期では、コンテンツとクオリティは映画が上だったにも関わらず、テレビの手軽さが映画に勝った」(境氏)などテレビ創世記の話から、デジタルレコーダーや動画共有サイトの登場により、オンタイムで番組を見なくなったという「テレビの見方の変化」、楽しまれるコンテンツ自体が変わってきているという「視聴者の変化」などが分析された。
境氏は「YouTubeやニコニコ動画の動画共有サイトは、テレビというメジャーコンテンツがあってこそ成り立っている部分が大きい。『メジャーコンテンツがインディーズを誘発する』という関係性は変わらない。今後はテレビがネットに合わせて一緒に進化していってほしい」とまとめた。
第2部に登場したPTPの有吉氏は、話題の全録マシンSPIDER zeroの機能説明からスタート。「1999年にTiVoを見て第1号機の開発に着手した」(有吉氏)というSPIDERは、6月に個人向けのSPIDER zeroを発売、テレビでもその全録機能が紹介されるなど、話題を呼んでいる。
「リモコンはケータイと同じサイズを目指した」、「画面切り替えや検索はストレスを感じさせないよう高速化し、これを『0.2秒の法則』と呼んでいる」(有吉氏)など、ケータイ、AV機器そしてPCと、多岐に亘るデジタル機器から優れた部分をうまく汲み取り、製品へと落とし込んでいることを窺わせた。
続いてのパネルディスカッションでは、動画共有サイトのビジネス事情や今後のテレビについて、ディスカッションが催された。
「(動画サイトだからといって)YouTubeとニコニコ動画を比べても意味はない。ただし、こういう動画共有サイトが出てきたことによって、映像というコンテンツの楽しみ方が『2時間映画を見ます』という形からめちゃめちゃバリエーションが増えた。このバリエーションは未来はもっと増えると思う」(徳力氏)。
「すでにテレビの視聴者や広告主は進化している。そうした中でテレビも進化せざるを得ない」(有吉氏)。「デジタルハリウッドで8年間教えているが、CGを制作する生徒たちは以外とYouTubeやニコニコ動画向けのコンテンツを作っていない。その理由は動画共有サイトのコンテンツを作っても自分のキャリアにつながらないから。動画共有サイトのコンテンツが、プロの目に留まって引き上げてもらえるとか、将来プロとしてやっていけるという流れにまだのっていない」(橋本氏)など、積極的な意見が交わされた。
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