口コミと広告の差はどこにある?

2009年3月3日 18時20分

 ブロガーに対価を支払って記事を書かせる「ペイパーポスト」をはじめとした口コミマーケティングが話題になっています。「WOMマーケティング協議会」という組織を設立し、口コミマーケティング市場の健全な育成と情報共有を進めようという動きもあります。同協会の設立準備会は2月末に研究会を実施し、ガイドライン策定の前段階として、「口コミと広告の境界は何か?」について議論する場を設けました。

 研究会ではまとまらなかったこの問題について、パネリストの皆さんはどのようにお考えでしょうか。ブロガーとして、あるいはいちネットユーザーとして、ご自由な立場で意見を聞かせてください。読者の皆様からのコメントもお待ちしています。


  • 大西宏
    大西宏さん (マーケティング・コンサルタント)
    広告は商品やサービス、また企業をブランド化するために行うもので、どのような訴求で、またどのようなメディアで、どの程度展開するかのコントロールが効きます。
    一方、口コミは、企業、商品やサービス、マーケティング活動などの結果に対する評価で生まれてくるもので、どのような内容や評価が伝わり、どの程度広がるかはコントロールが効きません。
    もちろん、昨今のようにインターネットでの口コミが重要になってくるにつれ、口コミを広げ、促進するためにさまざまな工夫をすることは可能です。
    ブログパーツを提供したり、動画をブログに貼れるようにしたり、画像を自由に使えるようにしたり、ブログで書くための特別な情報を提供するということができます。しかしそれはあくまで口コミで伝えることをサポートするということであり、あくまで主役はブログを書く人であり、書く内容の自由は保障されています。
    また影響力のあるブロガーに商品を提供したり、イベントに招待して、そういったブロガーにより詳しい商品やサービスの内容を知ってもらい評価を受けるということもできます。
    しかし、そのときもそのブロガーがその商品やサービスについて書いてくれる保証はありません。商品やサービスに関心を持ってもらわなければ書いてもらえません。
    また特定の限られた人たちに中味の濃い情報提供を行い、また体験をしてもらって、ファン化し、口コミ効果を期待するというマーケティングは有効でしょうが、その際でも本当に口コミが広がるかどうかの保証はありません。
    口コミマーケティングの難しさや不確実性はそこにありますが、基本的には、口コミが生まれるかどうかは、売り手の考え方、また商品やサービスへの共感や感動の大きさや深さで決まるので、狭いユーザー、あるいは個人にそういった共感や感動を生み出す体験や深いコミュニケーションをはかっていくというマーケティングのありかたは、広く、浅いコミュニケーションになってしまいがちなマス広告を補う、あるいは代替するマーケティングとして、今後さらに注目されてくるのではないでしょうか。

    さて、広告と口コミとが決定的に異なるのは信頼性を生み出す構造の問題です。広告は売り手が伝えたいメッセージを訴求します。その信頼性は、その商品やサービスの評価、広告の品質や内容への評価、またブランドへの信頼性などによるものです。つまり売り手そのもの、あるいは売り手の行動への信頼性から生まれます。
    口コミは、あくまで見たり、使ったりした人の評価であり、売り手とは独立したものです。伝える人そのもの、伝えられてきた内容が共感でき、納得できるかどうかということが信頼の源泉になります、さらに重要なのは、口コミがどの程度広がっているかも信頼のバロメータになります。
    ブログで紹介すれば報酬がもらえるというペイ・パー・ポストは、その商品やブログを書く動機が報酬であり、からなずしも伝える人のホンネで伝えられているとは限りません。ホンネを装っているに過ぎません。
    広告は誰しも、書かれている内容が売り手からメッセージであることを知っているし、その書かれている内容については売り手の責任になってきます。
    報酬を支払うと言うことは商行為であり、小さな広告のアウトソーシングなので、厳密には、書き手のホンネを装った売り手からのメッセージであり、売り手側からのにも書かれた内容に道義的には責任が発生します。
    さらに口コミの信頼性の重要な要素である口コミの広がりが意図的につくられたものであるために、それを信頼性の尺度にしている人たちを欺くことになります。
    手段なのか、評価された結果のボーナスなのかの大きな溝が、広告と口コミの間には厳然とあると思います。
    2009-03-04 12:13:48

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