東急、「街」そのものをパッケージ輸出--都市化進むベトナムに広がる日本の街づくり

 2023年に人口が1億人を突破したベトナム。東南アジアの中でインドネシア、フィリピンに次いで3番目に人口が多い国となり、急速な都市化が進んでいる。

 そのベトナムで存在感を高めているのが、日本の東急グループだ。ベトナムの高い成長ポテンシャルに注目した同社は、日本国内での100年を超えるノウハウを活用し、ビンズン省で本格的なまちづくりプロジェクトを推進。現地企業とのジョイントベンチャー「ベカメックス東急有限会社」を通じて、ビンズン新都市を構成する住宅や商業施設、交通インフラといった「街づくり」を包括したパッケージとして輸出するという、総合的な都市づくりに取り組む。

  1. 高成長続けるベトナムで開発進むビンズン省
  2. ビンズン省で進む東急流「街づくり」--日本企業と連携して差別化図る

高成長続けるベトナムで開発進むビンズン省

 東急グループは、国内では「東急電鉄」などを中心とした移動インフラや、関連地域での不動産、街づくりといった事業を展開する。

 ベガメックス東急 設計部 部長を務める釣佳彦氏は、海外でプロジェクトを進める背景として「東急沿線は経済が停滞する日本の中では比較的恵まれており、2035年に総人口のピークを迎える。しかし、老齢化や働き手の減少などは予想されている。一方で世界では、アジアやアフリカで順調な人口増が見込まれている」と話す。東急が成長を続けるため、必要な経済活性が見込めるエリアへのシフトチェンジの必要性を強調する。

日本の人口推移イメージ 日本の人口推移イメージ
※クリックすると拡大画像が見られます
アジア、アフリカは人口増が予想されている アジア、アフリカは人口増が予想されている
※クリックすると拡大画像が見られます

 東急グループは、シフトチェンジ先のエリアとしてベトナムに注力。東南アジアの中で人口が3番目に多いこと、GDP成長率も安定的に推移していること、今後の成長の継続が見込めることなどが理由にあるという。

 「ベトナムの直近のGDPは、住宅販売市場が急拡大した日本の1970~1980年代と非常に酷似している。豊富な働き手がおり、都市部への流入者の年齢も非常に若い」(釣氏)。輸出加工型のみだけでなく、内需型ビジネスとしても魅力的な市場と話す。

1975年の日本と2020年のベトナムの人口ピラミッド比較 1975年の日本と2020年のベトナムの人口ピラミッド比較
※クリックすると拡大画像が見られます

 開発を進める地域は、神奈川県ほどの大きさの約2700平方kmに約276万人が暮らす、ホーチミン市に近いビンズン省だ。多くの工業団地を抱えるため直近まで安定的な人口増が続いており、ベトナム内での月間平均所得は1位となっている。

 また、ホーチミンの中心地からビンズン省は車で約1~2時間だが、直線距離では約30km。交通インフラが整えばベッドタウンとしても期待できる、これからの伸びしろもある街だという。実際にホーチミンからビンズン新都市まで、日本政府の支援でMRT(Mass Rapid Transit:大量高速輸送)およびBRT(Bus Rapid Transit:バス高速輸送)を整備する計画もあるとのことだ。

 釣氏は「2024年の12月22日、ホーチミンにMRT1号線がようやく開通した。ビンズン新都市の中心に(交通インフラが)延伸する予定もある」とし、ビンズン省のさらなる価値向上への期待を口にした。

ベガメックス東急 設計部 部長 釣佳彦氏 ベガメックス東急 設計部 部長 釣佳彦氏
※クリックすると拡大画像が見られます

ビンズン省で進む東急流「街づくり」--日本企業と連携して差別化図る

 東急グループは2012年、ベトナムの国営企業となるベカメックスIDCと、合弁会社となるベカメックス東急を設立。資本金8兆6000億ベトナムドン(約525億円)、従業員数約400人、東急が65%の出資比率を持つ企業だ。

ベカメックス東急の概要 ベカメックス東急の概要
※クリックすると拡大画像が見られます

 ベカメックス東急は、総面積約1000haのビンズン新都市のうち街区面積110ha(敷地面積約71ha)を「東急ガーデンシティ(TOKYU GARDEN CITY)」の「Hikari Area」「SORA gardens Area」「MIDORI PARK Area」として開発。約10~15年後の完成を目指して2割ほどを開発しており、街の認知度向上と定住に向けた街づくりを進めているという。

ビンズン新都市のうち約1割を手がける ビンズン新都市のうち約1割を手がける
※クリックすると拡大画像が見られます
具体的なプロジェクトイメージ 具体的なプロジェクトイメージ
※クリックすると拡大画像が見られます

 釣氏は、ビンズン新都市における東急の街づくりの特徴として、日本の街づくりを総合的なパッケージとして輸出していることを挙げる。具体的には、マンションなどを1つずつ建築してエリアを開拓していく従来型の街づくりではなく、住宅に加えてサービスなどの周辺環境も付随させる、街そのものとしての開発になるという。

住宅以外の周辺サービスも付随した「街」そのものを輸出 住宅以外の周辺サービスも付随した「街」そのものを輸出
※クリックすると拡大画像が見られます

 「人口が増えて街が大きくなればなるほど、抱える課題も増える。交通渋滞や都市機能の欠如、脆弱なインフラ…膨らみ続ける課題に対し、日本で街作りのノウハウを培った東急グループならではの対策として差別化できる」(釣氏)

「街づくり」パッケージの輸出イメージ 「街づくり」パッケージの輸出イメージ
※クリックすると拡大画像が見られます

 ただし、それらさまざまな課題は日本の街においても、1社単独で解決しているわけではない。東急ガーデンシティにおいても、「すき家」「AEON」といった飲食小売店をはじめとする多分野の日系企業が参画。さまざまな課題を解決できる魅力ある日本の街を再現・発信すべく、日々連携して取り組んでいるという。

ビンズン省にはさまざまな分野で日系企業が参画 ビンズン省にはさまざまな分野で日系企業が参画
※クリックすると拡大画像が見られます

 連携の一例として、2023年から2024年にかけて、無印良品やパナソニックと共同で「JAPAN HOME」も実施した。憧れて住める日本品質の住環境を提案するイベントになったという。

日本で好評のイベントも輸出 日本で好評のイベントも輸出
※クリックすると拡大画像が見られます

 「東急グループ100年強のノウハウを生かし、日本の街づくりを輸出している。さまざまなパートナーとともに日本の魅力を発信し、地域に根付き、愛される街づくりを推進していく」(釣氏)

取材協力:パナソニック エレクトリックワークス

Amazonで現在開催中のセールを見る

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画広告

企画広告一覧

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]