タイミー上場に小川代表「今後もタイミーで働き、現場体験からクリアな戦略を」--海外展開も意欲

 スキマバイトサービス「タイミー」を展開しているタイミーは、7月26日に東京証券取引所グロース市場へ新規上場した。同日に記者会見を実施し、タイミー 代表取締役の小川嶺氏が、タイミーのこれまでを振り返りつつ、今後の事業展開や展望について説明した。

タイミー 代表取締役の小川嶺氏
タイミー 代表取締役の小川嶺氏

 タイミーは働きたい時間と働いてほしい時間をマッチングすることにより、時間や場所に制約されない自由な働き方を提供するスキマバイトサービス。働き手は、働きたい案件に申し込むだけで、履歴書や面接無しですぐに働くことができ、勤務終了後すぐにお金を受け取れることを特徴としている。

 小川氏はもともと2017年8月にアパレル関連事業のRecolleを立ち上げるも、1年で事業転換。2018年8月からタイミーのサービスを開始。約770万人、25万拠点で働けるサービスへと拡大した。

 日本では労働人口の減少、そして労働における人手不足は顕著な状況となっているが、企業主導ではなく、働き手に寄り添うようなサービスが求められており、その真ん中にいるのがタイミーと説明する。こうしたサービスのニーズは、もともと小川氏が事業転換の際に、物流倉庫や居酒屋、コンビニ、イベントなど数多くのアルバイトを経験するなかで、すぐ働きたいのにすぐ働けない世の中ということに疑問を感じたことが基点となっており、自身として欲しいサービスを立ち上げたのがタイミーであり、ものづくりの精神で作り上げてきたもの、そして労働者の目線で作っているサービスと語る。

 昨今では、スポットワーク市場の拡大にともない、競合となるさまざまなスポットワークサービスの参入も相次いでいるが、タイミーとしては稼働率88%という、例えとして求人募集を10人出せば、8~9人が集まるという、業界トップクラスのマッチングの高さを強みとして挙げる。これは、働き手の数と企業(求人)の数をエリアごとバランスを保ちながら増やしていき、成長させていくことができているからと説明。加えて、サポート体制や機能の充実もあり、同じ場所あるいは同じ業界で働くリピートワーカー数も多く存在していることから、これが高い参入障壁にもなっているとし、単純なアプリのダウンロード数をアピールするだけでは意味が無いと指摘する。

 現状では30%の手数料とされているなか、これまでも競合がいるなかで、手数料を維持しつつも高い稼働率と事業成長ができていることから、手数料の価格競争について小川氏は「どんどんと下げていくということは考えてない。クオリティを高めて、自分たちにしか出せないバリューを考えて、提供していく」と語る。

 今後の成長戦略のなかには、利用企業や店舗の拡大はもとより、さらなるエリアの拡大も挙げる。小川氏としては「全国47都道府県のみならず、全ての市町村単位でタイミーが利用できるようにしたい」とし、地域や商店街などとより連携をしていく考えを示した。

 また、現状では「物流」「小売」「飲食」の3つが主軸となる業界となっているが、ホテルや介護、保育、製造業、ビルメンテナンスなどさまざまな業種に広げていくことで、成長の規模をより加速していく考えを持っているという。特に小川氏は、主要3業界の次に大きくとらえている業界に「観光」を挙げ、この1年間においても非常に高い成長率を示していると説明する。

 質疑応答のなかで、金融(フィンテック)領域について質問が及んだ際、登壇していたタイミー取締役 CFOの八木智昭氏は「タイミーの今のビジネスと、親和性は高い。中長期的な戦略のひとつとして、検討をしていく」と語る。デジタル給与払いについても基本的なリサーチは行っているとし、ユーザーのニーズやトレンドに注視していることを明かした。

タイミー 取締役 CFOの八木智昭氏
タイミー 取締役 CFOの八木智昭氏(左)

 小川氏は、現状のタイミーのアプリについて点数評価の質問があった際、サービスの進化やアプリとしての改善を進めていることに触れつつも「まだまだ60点ぐらい」と評価。そのなかで足りないもののひとつとして“バイト仲間”を挙げ、タイミーでは通常のアルバイトに比べて友達が作りづらいことを語る。実際、スポットワークにはしがらみをつくりたくない、友達を作りたくないということにニーズとメリットを感じているワーカーがあることは認識しつつ、自然な形でのつながりや帰属意識みたいなものがあるほうが、働く豊かさが生まれていくと感じているとのことで、将来的にはタイミーにおいてコミュニティ機能を作っていきたいという構想を話していた。

 ちなみに小川氏は、現在でも年に1回はタイミーのサービスを通じて実際に働いているとのことで、「少なくともこの5年間は(タイミーのサービスを利用して)働き続けたい。いろいろな業種があるなかで、自分も実際に現場を体験して、よりクリアな戦略を出せるようにしていきたい」とも語っていた。

 今後については「働くことの固定概念を変え、データを活用して変革していくことを実現していく」ということを掲げて事業展開を行うとし、「まだまだ27歳の経営者なので、泥臭くしっかりと、このHRマーケットを驚かすような成長を続けていきたい」とコメント。また将来的な構想としては、世界でも同じような人手不足の課題を抱えている国や地域があるとし、グローバル展開についても意欲を示していた。

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