サムスンが発表した最新スマートフォン「Galaxy Z Fold6」。このブック型折りたたみスマートフォンの最大のポイントは、折りたためない一般的なスマートフォンの使い勝手にぐっと近づいたことだ。7月10日の新製品発表会「Unpacked」で発表されたGalaxy Z Fold6は、前世代よりもカバーディスプレイが大きくなり、全体に軽量化された。どちらもささいな変化に思えるかもしれないが、折りたたみスマートフォンの取り回しの悪さを改善し、自然な使用感を実現する上で大きな役割を果たすはずだ。
しかし、こうした進化はプロセッサーのアップグレードやソフトウェアの改良、強力な超広角カメラの搭載と併せて、価格に反映された。Galaxy Z Fold6は最小構成でも1900ドル(日本では税込24万9800円)となり、2023年発売の「Galaxy Z Fold5」よりも100ドル高くなった。Galaxy Z Fold6は、新しい縦折り型スマートフォン「Galaxy Z Flip6」と併せて、7月10日から予約受付を開始し、7月24日から一般発売される(日本では7月17日からSIMフリーモデルの予約注文が可能で、31日に発売予定)。
Galaxy Z Fold6とGalaxy Z Flip6を通じて、サムスンが達成しようとしている目標は2つある。1つは、折りたためることで犠牲になる機能を減らし、折りたたみスマートフォンをできる限り一般的なスマートフォンの使い勝手に近づけること、もう1つは、生成AIを活用すればスマートフォンをより直感的に使えるようになると証明することだ。どちらの目標も重要だ。なぜなら折りたたみスマートフォンはスマートフォン全体の出荷台数のごく一部を占めるにすぎず、しかもサムスンは最近、世界最大の折りたたみスマートフォンメーカーの座を中国の華為技術(ファーウェイ)に奪われたからだ。2022年後半に「ChatGPT」が登場し、人々の心を捉えて以来、テクノロジー業界では生成AIブームが巻き起こり、サムスンをはじめ大手ハイテク企業はAIの活用を迫られている。
この2つの目標が達成されているかどうかは、Galaxy Z Fold6とGalaxy Z Flip6を長期間使ってみなければ分からない。しかし現時点の印象では、サムスンが加えたデザイン変更はGalaxy Z Foldシリーズが有望な方向に進んでいることを示している。しかし個人的には、従来型のスマートフォンとの違いをもっとはっきりと感じられるような独創的な変化がソフトウェア面で起きることを期待したい。
Galaxy Z Fold6を手にしたとき、最初に気づいたのはその軽さだ。重さはわずか239gしかない(前世代のGalaxy Z Fold5は253g)。これはサムスンのフラッグシップ端末「Galaxy S24 Ultra」よりもわずかに重いだけだ。シャープで角張ったデザインもGalaxy S24 Ultraとよく似ている。両者はサムスン製スマートフォンの中でも特に高額な機種であることを考えると、この類似性はうなずける。
デザイン面での最大の変化は、カバーディスプレイが前世代の6.2インチよりも大きい、6.3インチになったことだ。たいした違いではないと思うかもしれないが、スマートフォンのような小さいサイズのディスプレイでは少しの差が大きな違いを生む。
前世代からの物理的な変更点としては、他にもヒンジの強化、内側ディスプレイの改良による折り目の軽減が挙げられる。残念ながら中央に走る横線は依然として目につく。しかし、軽量化されたボディ、シャープなデザイン、やや大きくなったカバーディスプレイのおかげで、洗練度は歴代のGalaxy Z Foldの中でもピカイチだ。外見が良くなっただけで、本質的な変化ではないと思うかもしれないが、折りたたみ端末にとっては重大な進化だ。初期のGalaxy Z Foldが2台のスマートフォンを積み重ねただけのように見えていたことを思い出してほしい。Galaxy Z Fold6のすっきりとしたフォルムは取り回しの良さに大きく貢献し、これまで折りたたみスマートフォンを選択肢に入れていなかった人々の心もつかむ可能性がある。
2024年初頭、サムスンはGalaxy S24シリーズと同時に、独自のAI機能「Galaxy AI」を発表した。以来、サムスンはAI関連の取り組みを積極的にアピールしており、この流れはGalaxy Z Fold6にも引き継がれている。
AIを利用したさまざまな機能の中でも、サムスンが引き続き力を入れているのが写真編集、生産性向上、そして翻訳だ。中でも目を引く新機能が「ポートレートスタジオ」だ。この機能を使えば、水彩画、3Dマンガ、コミックなど、さまざまなスタイルのポートレートを作成できる。筆者もさっそく自撮り写真で新しいスタイルのポートレート作成に挑戦してみたが、筆者の特徴をうまく捉えた1枚は作れなかった。とはいえ数分間試しただけなので、時間がたりなかったせいかもしれない。
画像に描き込んだスケッチを、AI処理によって写真に自然になじませてくれる機能も追加された。サムスンが用意したデモ機を使い、屋外で撮影した写真の背景に風船を画き足してみたところ、写真に白い風船が追加された。AIを利用した画像生成については、Appleも6月に「Apple Intelligence」機能の一部として、いくつかのツールを発表している。
ディスプレイが2つあるというGalaxy Z Foldの特徴を活かした翻訳機能も登場した。通訳アプリに新たに追加された「会話モード」では、カバーディスプレイと内側ディスプレイの両方を同時に使うことで、双方が相手の話した言葉をそれぞれの母語で見ることができるようになった。同じような機能はGoogleの「Pixel Fold」にも搭載されているため、聞き覚えがあるかもしれない。この機能は、2人のサムスン社員によるデモではうまく機能しているように見えたが、実際の場面でもスムーズに機能するかは気になるところだ。
Galaxy Z Fold6は7.6インチの大画面を搭載しているため、読み書きを支援し、生産性を高めるためのツールも登場した。例えば「PDF翻訳」では、PDFの文章だけでなく図表のテキストも翻訳するという。キーボードにも文章生成を支援する機能が追加され、2024年初頭に導入されたAIライティングツールを利用して単語を提案し、メールやテキスト、SNS向けの文章を簡単に書けるようになった。
将来的には、Galaxy Z FoldならではのAI機能がもっと出てくることを期待したい。以前にも書いたように、折りたたみスマートフォンの最大の利点は、半分に折りたためることではなく、2つのディスプレイを異なる用途に使えることだ。この利点とGalaxy AIを組み合わせれば、これまでにないスマートフォンの使い方を生み出せる可能性がある。しかし今のところ、翻訳以外の分野ではデュアルディスプレイの可能性は探求されていないようだ。現在は大きな内側ディスプレイを活用して、録音の書き起こし、写真の編集、マルチウィンドウモードでのGoogleアシスタント「Gemini」の活用といったタスクをこなすことに重点が置かれている。
Galaxy Z Fold6では、プロセッサーとカメラを中心に、前世代からの順当なアップグレードが行われた。主な改善点は次のとおりだ。
Galaxy Z Fold6は、スマートフォンの利便性とタブレット並みの大画面の両立に大きく近づいた。デメリットは、より良い体験を実現するために価格が上昇したことだ。ハードウェア面はかなり進化したため、次はソフトウェア面の進化がさらに進むことを期待したい。
Galaxy Z Fold6この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」