「スマートリング」の代名詞となってきたOuraの前に今、強大なライバル――サムスンが立ちはだかろうとしている。
2024年初頭、韓国の巨大ハイテク企業で、スマートフォン出荷台数世界1位のサムスンがスマートリング「Galaxy Ring」を予告した。このサムスン初の指輪型ヘルストラッカーは、Ouraの人気ウェルネスデバイス「Ouraリング」と真っ向から競合する製品だ。家電分野で圧倒的な存在感を放つサムスンが参入してくるとなれば、OuraはGalaxy Ringの登場を恐れているに違いないと思うだろう。
しかしOuraの最高経営責任者(CEO)Tom Hale氏は、サムスンが自社の縄張りに乗り込もうとしていることを不安視してはいない。Hale氏は、世界有数のテクノロジー企業で、ウェアラブル製品出荷台数世界4位のサムスンが参入することで、この10年間、スマートウォッチとワイヤレスイヤホンに押され、ウェアラブル市場の片隅に追いやられてきたスマートリングの認知度が向上すると考えている。また、Galaxy Ringは「iPhone」には非対応と考えられているため、ユーザーベースが大きく浸食される心配もないという。
「率直に言って、スマートリングのコミュニティーに新たなメンバーが加わることを歓迎している。(サムスンの参入は)スマートリングの良さを市場に知らしめる助けとなるはずだ」と、Hale氏は米CNETとのインタビューで語った。
サムスンは2024年1月にGalaxy Ringの登場を予告し、翌2月の「Mobile World Congress」で実物を披露したものの、その後は多くを語っていない。しかし7月10日には何らかの動きがあるはずだ。この日にはサムスンが毎年、新しいウェアラブル製品を披露してきた製品発表イベントが開催される。
サムスンは1月の予告時にGalaxy Ringをヘルストラッカーと位置づけ、その後、「Samsung Health」アプリの新機能として「Energy Score」と「Wellness Tips」を発表した。Energy Scoreは、睡眠時間や睡眠の規則性、心拍数などの指標を分析し、結果を活動量や心拍変動と照らし合わせることで、身体の現在の状態を表すスコアを算出する機能だ。Wellness Tipsは、ユーザーのウェルネス目標をもとにアドバイスを提供する。Galaxy Ringが具体的にどのような方法で健康を追跡するのかはまだ分からないが、この2つの機能が大きな役割を果たすことは間違いないだろう。
もっとも、似たようなツールはすでにOuraも提供している。例えばOuraリングの代表的な機能である「コンディションスコア」は、身体の反応、最近の活動、睡眠に関するデータをもとに、休息がとれているか、ワークアウトの準備が整っているかを判断する総合指標だ。
しかし、強力な販売網を持つサムスンが似たような機能をひっさげて参入しようとしてきているにもかかわらず、Hale氏は競争の激化を意に介していない。Hale氏によれば、Ouraのユーザーのうち、サムスン製デバイスのユーザーが占める割合は小さく、5%程度だという。全「Android」デバイスユーザーの割合はもっと大きいだろうが、それでもOuraリングのユーザーの過半数はiPhoneユーザーだ。
「『iOS』ユーザーにとって、(Galaxy Ringが)良い選択肢になるかというと、否だ」とHale氏は言う。「そしてiOSユーザーはOuraの顧客の大半を占める」
なぜOuraのスマートリングがiPhoneユーザーの間で人気が高いのか、その理由は定かではない。しかし、International Data Corporation(IDC)の調べでは、Appleはウェアラブル製品の出荷台数世界1位であることを考えると、iPhoneユーザーは健康データの追跡に関心が高いと考えていいだろう。
サムスンがGalaxy Ringの発売準備を進める一方、Ouraも新機能のリリースや事業の拡大にいそがしい。2024年5月、Ouraは「心血管年齢」と呼ばれる心臓の健康状態を測定する機能を導入した。その名が示す通り、この機能は心血管系の状態に基づく推定年齢と実年齢が一致しているかどうかを教えてくれる。この機能の導入前に、Ouraは「Oura Labs」と呼ばれる新たなプラットフォームをOuraアプリに追加することを発表した。Oura Labsでは、最新の機能を試すことができる。例えば「症状レーダー」は、特定の生体データの変動を追跡することで、身体の異変を早期に発見できるようにする機能だ。OuraはAmazonでの販売を開始するなど、販売網も強化している。
Hale氏がスマートリングの認知度向上に積極的に取り組んでいるのには理由がある。Galaxy Ringは確かにスマートリング界隈で話題を呼んだが、指輪型のフィットネストラッカーはウェアラブル市場のほんの一部を占めているにすぎない。IDCのウェアラブル市場予測(2024~2028年)によると、この市場の主役は依然としてイヤーウェアとスマートウォッチであり、スマートリングやスマートグラスなどの新興カテゴリーは今後もわずかなシェアにとどまると予測されている。
「サムスンが展開する看板やバス広告によって、スマートリングのアイデアが周知されることを楽しみにしている。こうした広告はサムスンユーザーか、Googleの『Pixel』ユーザーか、AppleのiOSユーザーかを問わず、あらゆる人の目に触れる」とHale氏は言う。「これは、この製品カテゴリー全体にとっていいことだ」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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