「驚くべきドローン、まさにゲームチェンジャーだ」──。米国Skydio製のドローン「Skyido X10」について興奮気味に語るのは、KDDIで取締役執行役員常務 CDO 先端技術統括本部長 兼 先端技術企画本部長を務める松田浩路氏だ。
KDDIは5月13日、Skyido X10を開発する米Skydioとの資本業務提携を発表。同社に「三桁億円」(松田氏)を出資したという。今後はプライマリーパートナーとしてSkydio X10を国内販売するほか、Skydio製品の独占販売権を韓国、台湾、シンガポール、モンゴル、タイ、フィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシア、バングラデシュ、カンボジアにおいて獲得し、ドローン事業の海外展開も目指す。
新型ドローンであるSkydio X10は何が凄いのか。KDDIの松田氏はまず「エッジAI」への対応を挙げた。NVIDIA Jetson Orin GPUを搭載し、AIなどの処理能力が10倍に向上。これによって、リアルタイムで周囲をスキャンし3Dモデルを生成したり、暗闇での自律飛行も可能になった。
撮影用カメラはスマートフォンと同様に望遠、広角、超広角の3つのレンズを搭載。5km先の車両を識別し、250m先のナンバープレートを読み取れるという。さらに、サーマルカメラを搭載し、温度によるインフラの異常や、災害時に体温を検知して遭難者を探し出すこともできる。
Skydio製ドローンとして初めて4Gおよび5Gに対応。携帯基地局の電波が届く範囲ならどこでも遠隔操作できるようになった。さらに、KDDIが2024年内の提供を目指す「Starlinkとスマートフォンの直接通信」で用いる周波数に対応し、将来的にはStarlink経由での運用も可能になる。
Skydio X10は、米国では2023年12月に発売。すでにラスベガス都市圏警察が導入し、災害対応や犯罪者探しに役立てている。さらに、ニューヨーク市警察では警察署の屋上などにドローンを配備し、通報が入った際にはドローンで現場を迅速把握するドローンポートを運用しているが、ここにもSkydio X10の採用が始まるという。このほか、大手電力会社などがインフラ把握に同機を役立てている。
さらに松田氏は、日本全国にドローンポートを整備する構想を明かした。独自の試算によれば、1000カ所を整備することで「日本どこでも10分以内にドローンで映像や写真を撮影できるようになる」という。ポートの設置場所はTOBで子会社化したローソンの屋根などの活用を想定。「2〜3年以内には構築に取り掛かりたい」とも述べた。
ドローンをめぐっては、高度成長期に構築されたインフラの老朽化、および少子高齢化による労働力不足が深刻となる中で、インフラ点検における有用性が注目されている。さらに、政府はデジタル庁を中心に「人による目視点検」を義務付ける河川管理などの法令において、目視点検をドローンで代替できないか検討を進めている。
KDDI松田氏は「日本は課題先進国」と述べたうえで、日本におけるドローン活用ノウハウを蓄積し、ドローン事業の海外展開に役立てるとした。
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