NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は10月12〜13日、「docomo business forum’2023」において、自律飛行型ドローンのメーカーである米Skydioの新製品「Skydio X10」を展示した。
従来のAIを用いた障害物検知と回避による自律飛行が、さらに暗所や夜間でも可能になったと注目を集める同製品が、日本でお披露目されたのは今回が初めてだ。
Skydio X10は、9月20日(米国時間)に発表された。NTT ComのSkydioの担当チームは現地へ飛び、米国の技術者など関係者や顧客らとともに発表会に参加したという。
当日の様子を聞くと、照明が落とされた真っ暗な屋内会場でのSkydio X10のデモフライトや、屋外で実機を飛ばせる体験会もあり、「みんなが待ち望んでいた機能が実現した」という、参加者一同の共通認識をリアルタイムに体感できたようだ。
もともとSkydioは、AIを使った自律飛行技術に強みを持つ。従来機の「Skydio 2+」「SkydioX2」も、合計6つのナビゲーションカメラを搭載し、Visual SLAM技術によって自己位置推定と周辺環境把握を行うことで、障害物の検知・回避を自律的に行いながら飛行できる。
GPSに依存していないため、日本では橋の点検といった屋外での活用に加えて、施設警備など屋内での用途開発も盛んに進められている。
ただ、周辺環境の把握に可視光カメラを用いるため、Skydio 2+はトンネル内部などの暗所や夜間は、飛行できなかった。Skydio X2は夜間飛行できたものの、Visual SLAMを用いないGPS飛行のため、障害物回避はできなかった。
新機体となるSkydio X10は、ナビゲーションカメラの性能向上と、新たなセンサー「Night Sense」を搭載することで、この苦手を「克服」。日米をはじめ各国顧客からのニーズの高かった「暗所・夜間での障害物検知・回避機能を有する自律飛行」を実現した。
ナビゲーションカメラは、広角200度以上、3200万画素のカメラを6つ搭載したことで、従来よりも鮮明かつ広く周辺環境を認識できるようなった。ナビゲーションカメラの搭載位置は、機体上面後方部に3つ、機体下面前方部に3つだ。
上下3つずつという個数配分は、従来機と同じだが、カメラ同士の離角が従来よりも近づいた。
Night Senseは、今回は展示されていなかったが、夜間飛行を支援するためのオプション製品(別売)として提供予定だという。標準装備でないので注意が必要だ。
もう1点、特に大きなアップデートとしては、前方のカメラは「VT300-Z」「VT300-L」の2製品から選べるようになる。両製品とも、可視光カメラ「Narrow camera」と、サーマルカメラ「Radiometric thermal camera」が共通して搭載されており、さらにVT300-Zには望遠カメラ「Telephoto camera」、VT300-Lには広角ズームカメラ「1”Wide camera」とフラッシュライトも装備。今後は、サーマルカメラを必要としない業務用途向けに、「V100-L」も発表を控えているという。
「米国の発表会では、望遠カメラを使って約106m先の車のナンバープレートの数字を鮮明に捉える、サーマルカメラを使った夜間捜索で約228m先にいる人間を検知する、広角カメラでコンクリート構造物との離角1mのところから0.1mmのひび割れを検知するなど、カメラ性能の向上を示す具体的な事例が紹介された。当日、会場に来ていた、Skydio X10のファーストレスポンダーへの活用を検討している警備・警察関連の方々や、発電所の点検やダムの管理などを行う事業者さんたちも、ハード・ソフトともに期待通りだと、かなり盛り上がっていた」(NTT Com担当者)
サイズ感は、Skydio 2+と並べると、Skydio X10のほうがだいぶ大きく見えるが、折りたたむと非常にコンパクトで、ビジネスリュックにもスッと収まる程度の大きさだ。
重量も2.1kgで、片手でも軽々と持ち上げられる。
細かなアップデートも、紹介しておこう。
まず、4本あるアームの下部に足がついた。これによって、機体が腹這いの形で着陸するのを避けられる。さらに4つの足には、送信機から送られたデータを受信するためのアンテナも格納されている。アーム先端には飛行中に点灯するライトもある。
プロペラは、Skydio X2と同じ3枚羽で、「2枚羽のSkydio 2+などと比較すると、非常に静音効果が高い」(NTT Com担当者)
バッテリーはスライド着脱式で、マグネットを用いて機体とピッタリとくっつく機構が、Skydio X2と同じく踏襲された。ペイロードなしでの最大飛行時間は約40分だという。
このほかにも、4G/LTE/5Gのモバイル通信に対応する予定。モバイル通信の使用方法や伝送距離などの情報は未公表だというが、従来のWi-Fiより広範囲での運用が見込まれる。
また、前述のNight Senseのほかにも、「照明」「スピーカー&マイク」「RTK GPSセンサー」「パラシュート」の合計5つのオプション製品がリリースを予定されている。ただし、機体とペイロードも含めた最大積載重量を2.5kg以下程度に抑えるため、一度に搭載できるオプション製品の個数は限られそうだ。
気になる販売開始だが、米国内では2023年中、日本国内では2024年上期内を予定しているという。ちなみに、日本国内ではこれまでも法人向けに限定してきたが、今後は米国でも法人向けに注力するとのことで、日米ともにコンシューマー向けの販売は予定していない。
最後に、「一番の進化は、Onboard Modelingだと思う」(NTT Com担当者)というコメントはぜひ紹介しておきたい。要は、2022年にオプション製品としてリリースした「Skydio 3D Scan」のアップデートが著しく、これはSkydioの強みである高精度な自律飛行がなければ、成し得ない機能であるという指摘だ。
Skydio 3D Scanは、対象となる構造物を設定すれば、機体が自律的に飛行して、3Dデータ化に必要となる膨大な量の画像を自動撮影してくれるという機能だ。従来は、撮影後すぐに画像確認はできるものの、3Dモデル化は画像データ取得後に別途作業が必要だった。しかし、今回のアップデートによって、Skydio X10で撮影すれば機体側でエッジ処理を行うことで、撮影後すぐに3Dメッシュモデルや2Dオルソ画像を生成して確認することが可能になるという。
Skydio X10は、「NVIDIA Jetson Orin」「Qualcomm Snapdragon 865」を搭載し、対従来機比10倍以上の処理性能である、1秒間に85兆回の処理を実現している。製品価格は非公表とのことだが、日本国内でSkydioの業務活用がいかに拡大するのか、2024年の動向も注目だ。
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