サムスンの折りたたみスマートフォンが、これまでよりも少し賢くなった。同社は先頃、サムスンの人工知能(AI)を活用した新しいソフトウェア機能群である「Galaxy AI」を、「Galaxy Z Flip5」と「Galaxy Z Fold5」、さらには「Galaxy S23」シリーズでも提供し始めた。
全体的に見ると、こうした機能の追加から、スマートフォンのソフトウェアをどう進化させていくべきかについてのサムスンのビジョンが垣間見える。だが、「かこって検索」や「生成AI編集」などの機能が折りたたみスマートフォンでも利用できるようになったとはいえ、Galaxy AIはまだ、主に折りたたみ式でない標準的なスマートフォン向けに設計されているように感じる。筆者はGalaxy Z Flip5でこれらの機能を試してみたが、ほとんどの機能は3.4インチのカバーディスプレイよりも、フルサイズの6.7インチの内側スクリーン向けに最適化されていた。
Z Flip5やZ Fold5を含め、Galaxy AIを利用できるデバイスが増えたことを見ても分かるように、サムスンはこれらの機能が日常的なスマートフォン体験にとって重要であると考えている。同社は、Galaxy AIを自社の最新デバイスだけに限定せず、できるだけ多くの「Galaxy」ユーザーに利用してもらいたいと考えているのだ。
Galaxy AIはまだ、何年も先に最終的に実現するかもしれない機能の始まりにすぎないように感じられる。特に折りたたみスマートフォンでの動作に関して言えば、そうだ。筆者は、サムスンがGalaxy AIを折りたたみスクリーン向けにさらに最適化することだけでなく、Z FlipおよびZ Foldシリーズ専用の新機能を考案することにも期待している。
筆者はすでに、「Galaxy S24 Ultra」を試用したときに、結構な時間をかけてGalaxy AIを大画面で試している。したがって、それらの機能がGalaxy Z Flip5の最も顕著な特徴である3.4インチのカバースクリーンでどのように動作するのか、ということに当然興味があった。ほぼ同じように動作する機能もあれば、制限のある機能もあった。さらに、全く利用できないと思われる機能もあった。
意外なことに、生成AI編集は、ほぼ同様に動作する機能の1つだった。カバー画面からサムスンの「ギャラリー」アプリを利用できるようにしている場合は、編集インターフェースから(3つの星のように見える)生成AI編集アイコンをタップして、画像の被写体を拡大したり、移動したり、削除したりすることが可能だ。
技術的には、生成AI編集はZ Flip5の外側の画面でもメイン画面とほぼ同じように機能する。問題は、ユーザーがこのような小型のディスプレイで生成AI編集を使用したいと思うかどうかだ。削除するオブジェクトを選択するのは簡単だったが、オブジェクトの位置によっては、消しゴムボタンをタップするのが難しいこともあった。生成AI編集をカバー画面で使用するときは、移動または削除したいオブジェクトをタップするか、あるいは、その周囲に線を引くよう指示するプロンプトがあるのだが、それも切り詰められていた。
「Samsung Notes」アプリで文書を要約、翻訳、および書式設定できる「ノートアシスト」機能も、カバー画面で利用できる。だが、筆者の体験では、内側画面で使用する場合に比べて、機能性は限定されていた。例えば、カバー画面にメモの内容すべては収まらないため、要約でメモの一部しかハイライト表示されなかった。
「閲覧アシスト」は、筆者がZ Flip5のカバー画面で試した中で、最もシームレスなGalaxy AIの機能かもしれない。この機能は、米CNETの記事をほぼ瞬時に要約し、翻訳した。カバー画面とメインディスプレイのどちらで記事を読んでいても、要約は同じだった。カバー画面でページを下にスクロールすると、記事が素早く翻訳されることにも感心した。
ただし、かこって検索と「チャットアシスト」はカバー画面では全く利用できないようだった。
Galaxy AIが、Z Flip5のメイン画面で使用するときと比べて、カバー画面であまり役に立たないのは、当然のことだ。Galaxy AIは明らかに、小型ディスプレイではなく、一般的なスマートフォンを念頭に設計されている。
上述のGalaxy AI機能群の目的も、カバーディスプレイで想定されている用途と大きく異なる。生成AI編集やノートアシスト、かこって検索はすべて、写真編集や仕事、ソーシャルメディアの閲覧といった、没入型のタスクを主に想定している。そうしたタスクでは、少し時間をかけてスマートフォンを使うことになる可能性が高いため、メインの内側ディスプレイを使うことを選ぶだろう。
一方、カバー画面は、一目で情報を把握するということを目的としている。デフォルトで、Z Flip5の外側画面で利用できないアプリがあるのは、そのためだ。以前のレビュー記事にも書いたが、カバー画面はスマートフォンとスマートウォッチの中間的存在であるように感じる。
Galaxy Z Flip5とGalaxy AIはどちらも、何かより大きなものを暗示しているように思えるサムスン製品の一例だ。2023年の記事で書いたように、Z Flip5のカバー画面は、可能性に満ちているように感じられる。
同様に、Galaxy AIも、スマートフォンのソフトウェアが期待できそうな方向性に向かう道の、まだほんの始まりのように思える。現在のバージョンは、日常的な使用ではなく、旅行中の言語翻訳など、特定の状況を想定して最適化されているが、おそらく、それも今後変わっていくだろう。
Galaxy AIとサムスンの折りたたみデバイスには、共に肩を並べて進化していく機会が待ち受けている。結局のところ、折りたたみスマートフォンが有用と感じられるかどうかは、そのために作られるソフトウェアにかかっているのだから。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス