KDDI、ローソンTOBで三菱商事とコンビニを共同経営--なぜ?課題は?dポイントはどうなる?

 三菱商事とKDDI、ローソンの3社は2月6日に資本業務提携を発表。KDDIがローソンに対する公開買付けを実施する予定で、これが完了すればローソンは三菱商事とKDDIが50%ずつ株式を保有することとなり、ローソンは上場廃止となる予定だ。

三菱商事とKDDI、ローソンは2024年2月6日に資本業務提携を発表し、KDDIがTOBによりローソンの株式を50%保有、三菱商事と共同経営することになる
三菱商事とKDDI、ローソンは2024年2月6日に資本業務提携を発表し、KDDIがTOBによりローソンの株式を50%保有、三菱商事と共同経営することになる

 実は、KDDIは2019年にもローソンに出資し、2.11%の株式を保有している。しかし、それはKDDIが自社のポイントプログラムを、ローソンらが出資するロイヤリティマーケティングが運営する共通ポイントプログラム「Ponta」と統合するための施策だった。

 だが今回の出資では、株式を半数保有する。ローソンの経営に本格的に関与する意味合いが強いものだといえる。

KDDIは2019年にもローソンに出資しているが、あくまで「Ponta」とのポイント統合が目的であり、その割合は2%程度だった
KDDIは2019年にもローソンに出資しているが、あくまで「Ponta」とのポイント統合が目的であり、その割合は2%程度だった

 コンビニエンスストアの経営に通信会社が大きく関わるというのはかなり意外な印象も受けるが、その理由はどこにあるのか。同日の記者会見での3社の代表からの説明によると、KDDIによる出資はコンビニエンスストアの未来を見据えた動きだという。

  1. デジタルと通信に強いKDDIと実現する3つの要素
  2. NTTドコモとの関係や事業の重複など懸念材料も

デジタルと通信に強いKDDIと実現する3つの要素

 ローソンは2000年に三菱商事と業務提携、2017年に同社の子会社となっており、これまでは総合商社である三菱商事のリソースを活用して成長を遂げてきた。だが、三菱商事の代表取締役社長である中西勝也氏によると、デジタル技術の進展や国内の人口減少などを迎える将来のコンビニエンスストアの形を模索する上で、総合商社によるサポートだけで成長につなげることはできるかどうか、悩んでいたと話す。

 そこで三菱商事側から新たな提携相手を探す動きが進められたのだが、パートナーを選ぶ上で中西氏が重視したのがデジタル技術であるという。リアルな拠点を持つコンビニエンスストアにデジタル技術を掛け合わせる上で、重要な存在となるのが通信技術であることから、通信とデジタルに強みを持ち、大きな顧客基盤を持っており、なおかつローソンとの関係も深いKDDIに白羽の矢が立ったようだ。

三菱商事の中西氏は、ローソンの成長を見据えると総合商社のサポートだけでは限界があるとし、デジタルと通信に強いKDDIに打診を図ったとのこと
三菱商事の中西氏は、ローソンの成長を見据えると総合商社のサポートだけでは限界があるとし、デジタルと通信に強いKDDIに打診を図ったとのこと

 KDDIの代表取締役社長である高橋誠氏によると、三菱商事側から打診があったのは2023年5月とのこと。高橋氏はローソンへの出資以降、共同でさまざまな事業を進める中で、ローソンの代表取締役社長である竹増貞信氏から「あんなことやこんなことをコンビニでやりたいという話を聞いていた」と、コンビニエンスストアの将来像に明確なビジョンが示されていたという。そのビジョンに共感しKDDIのリソースを用いることで実現できる方向性を見出せたことが、今回の提携につながったようだ。

KDDIの高橋氏は、ローソンと共同で事業を進める中でビジョンに共感したことが、出資へつながったという
KDDIの高橋氏は、ローソンと共同で事業を進める中でビジョンに共感したことが、出資へつながったという

 では、その将来のコンビニエンスストアとはどのようなもので、そこにKDDIのリソースがどのように生かされようとしているのだろうか。竹増氏の説明を聞くに、ポイントは大きく3つあるようだ。

ローソンの竹増氏は「Global Real×Tech Convinience Lawson Group」を掲げ、リアルとテクノロジーの組み合わせで世界展開を目指す姿勢を示している
ローソンの竹増氏は「Global Real×Tech Convinience Lawson Group」を掲げ、リアルとテクノロジーの組み合わせで世界展開を目指す姿勢を示している

 1つは「リモート接客」である。全国に約1万4600あるローソンの店舗にリモート接客専用の窓口を用意し、ここを通じてKDDIの「au」ブランドなどのスマートフォンやサービスのサポートだけでなく、金融の相談や服薬指導など、さまざまな受け付けができる窓口を提供することを考えているようだ。

 実際にKDDIは、能登半島地震で大きな影響を受けた地域に「au」のキャラバンカーを派遣し、現地でリモート接客によるサポートを提供している実績があることから、そうした技術や知見を生かしてサービス提供が進められるのではないかと考えられる。

 これはあくまで筆者のイメージに過ぎないが、現在コンビニエンスストアにあるマルチコピー機のように、店舗内に複数のサービスに対応したリモート接客スペースが設置され、訪れた顧客が利用したいサービスを選んで接客を受ける……というスタイルが考えられそうだ。

 もちろんリモートによる接客は、知識がある人ならスマートフォンやPCを使い、自宅で受けることも可能だ。だがデジタル機器の利用に馴染みが薄い強い傾向のある高齢者などにとって、それは現状ハードルが高いとも感じている。とりわけ人口減少が著しい地方では店舗が少なく、店舗でのサービスやサポートを受けること自体が課題となっている。

 それだけに身近なコンビニエンスストアで、リモートながら直接人と話して対応してもらえる拠点があるメリットは大きいだろう。実際竹増氏も、リモート接客の存在意義は「(リモート接客の)端末だけでなく、買い物もできるし人もいるし、必要なサービスも受けられる」と話しており、1つの店舗で買い物からさまざまなサービスも受けられる点は、幅広い層にデジタル技術の恩恵を広めていく上では非常に有効といえる。

 2つ目は「クイックコマース」だ。商品を注文してから短時間で配達するクイックコマースは近年人気を高めており、「Uber Eats」などフードデリバリーサービスだけでなく、最近ではセブンイレブンが「7NOW」を提供するなど、コンビニエンスストア自身も取り組みを積極化している分野だ。

 それだけにローソンでも、全国の店舗を活用した流通網を整備してクイックコマースへの参入を進めたいと竹増氏は話している。そして利用しやすいクイックコマースを提供する上では、ユーザー側のインターフェースとなるアプリや、そこからの発注や在庫、配達員などを管理するシステム、それを支える通信網が必要なことから、そうした部分でKDDIのリソース活用が進められるのではないかと考えられる。

 そして3つ目が「グローバル展開」である。竹増氏はリモート接客やクイックコマースなどによるコンビニエンスストアの新しい姿を実現した上で、それを海外にも展開していきたい考えを示しており、竹増氏自身も社内では「アジアのGAFAになると公言している」と話すなど、海外事業の強化には強い意欲を示している。

 ローソンは既に中国や東南アジアなど海外での店舗展開を進めており、海外での基盤をある程度構築しているものの、通信やデジタルを前提としたサービス展開を進めるためには、やはり海外でもデジタルに強いパートナーが必要になってくるだろう。

 その点、KDDIはミャンマーやモンゴルでの通信事業だけでなく、欧米やアジアでデータセンター事業「TELEHOUSE」を展開したり、コネクテッドカーを主体としたIoT通信事業を世界展開したりするなど、デジタルや通信の分野で海外にもいくつかの基盤を持っている。

 一方のKDDIにとっても、ローソンのコンビニエンスストアのデジタル化による海外展開は、今後海外事業を拡大していく上で重要になると捉えているようだ。ローソンも元々は米国で事業展開していたビジネスモデルを日本に持ち込み、“おもてなし”の付加価値を付けて事業を拡大している。高橋氏はこうしたローソンの取り組みが、衛星通信の「Starlink」に付加価値を付けて販売するといったKDDIの取り組みと「ものすごく似ている」と話す。

 高橋氏は、今後通信事業を拡大する上では、スマートフォンなどコンシューマー向けのビジネスだけでなく、さまざまな企業を通信で支え成長につなげるビジネスが重要になってくると説明。海外の通信会社を買収して傘下にしながら拡大するという従来の手法ではなく、既存のビジネスに通信とデジタルで付加価値を付け、それを海外展開していくことに重きを置く考えを示しており、ローソンの海外進出を積極的に支えていく姿勢を強く見せていた。

NTTドコモとの関係や事業の重複など懸念材料も

 一連の説明から、今回の提携におけるローソンとKDDIが取り組む方向性とその役割はある程度見通すことはできたが、一方で現場の状況を考えると、今後さまざまな懸念が出てくるようにも感じてしまう。三菱商事とKDDIの出資比率が同じであることから、事業の調整を巡って主導権争いなどが生じ、ローソンの経営が停滞する懸念があるというのもその1つだろう。

 だが、より消費者目線で注目されるのは、ローソンとKDDIの競合通信会社との関係や、ローソンとKDDI自身との事業競合である。まず前者についてだが、ローソンはKDDIだけでなく、NTTドコモも2.09%の株式を保有しており、「dポイント」などで連携も実施していることから、dポイントを経由してドコモに顧客の購買情データ流れることはKDDIのビジネスにとって不利益となる。

ローソンはNTTドコモからも出資を受けており、KDDIから出資を受ける前は「dポイント」で連携するなど、NTTドコモと近しい関係を構築していた
ローソンはNTTドコモからも出資を受けており、KDDIから出資を受ける前は「dポイント」で連携するなど、NTTドコモと近しい関係を構築していた

 今回のKDDIの公開買付けは、最終的に少数株主から強制的に株式を買い取る「スクイーズアウト」手続きが実施されるため、ドコモとローソンとの資本関係も解消されると見られる。だが高橋氏は「ドコモと喧嘩するつもりはない」と話すほか、竹増氏も「顧客が選ぶサービスをしっかり提供することにつきると思っている」と説明。ローソンで利用可能な携帯他社の決済やポイントに関して変化はなく、引き続きオープンな体制を取るとしている。

 オープン体制の維持をより強調していたのが、筆者がローソンとKDDIとの事業競合について質問した時だ。とりわけ金融事業に関して、ローソンは金融事業の中核として「ローソン銀行」を持つ一方、KDDIは「auじぶん銀行」など、傘下の「auフィナンシャルホールディングス」を通じて金融事業に非常に力を入れているだけに、今回の出資によって事業の重複が生じることとなる。

 それらの関係をどう整理するのか尋ねたところ、高橋氏は「それは考えが古い」と回答。ローソンの発展を考える上では、KDDIのことだけを考えると「発想が小さくなってしまう気がする」と高橋氏は話し、企業やグループのしがらみを超えた取り組みが必要だと説明。KDDIはあくまでローソンにリソースを提供して発展させる立場であり、ローソン側の事業整理などを進める考えはない様子を示していた。

 ただ、KDDIの姿勢はともあれ、一連の施策によって競合、とりわけドコモがどのような対応を取るかはまた別の話である。また事業の効率化や協力関係の強化などを進める上で、とりわけ金融事業に関してはグループ間で何らかの体制変更が求められる可能性が出てくるだろう。そうした意味でも今後、ローソンを巡る競合通信事業者、そしてKDDIグループ自身がどのような動きを見せ、その結果消費者にどのような影響が生じるのかは大いに関心を呼ぶところではないだろうか。

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