三菱商事とローソン、KDDIと提携--「未来のコンビニ」でGAFA「L」狙う、「auPAY」優遇は?

 三菱商事、KDDI、ローソンの3社は2月6日、「リアル×デジタル×グリーン」を融合させた新たな生活者価値創出に向けた資本業務提携契約を締結したと発表した。

(左から)三菱商事 代表取締役 社長 中西勝也氏、ローソン 代表取締役 社長 竹増貞信氏、KDDI 代表取締役社長 CEO 高橋誠氏
(左から)三菱商事 代表取締役 社長 中西勝也氏、ローソン 代表取締役 社長 竹増貞信氏、KDDI 代表取締役社長 CEO 高橋誠氏

 また、三菱商事とKDDIは、公開買付け等によるローソンの非公開化に関する取引に合意。KDDIが4月頃、ローソンに対する公開買付けを実施するという。

 公開買付けが成立した場合、ローソンの株主を三菱商事とKDDIのみとするための一連の手続(スクイーズアウト手続)を実施する。手続の完了および提携の開始は9月頃となる予定で、三菱商事とKDDIがローソンの議決権を50%ずつ保有することになるとともに、ローソンは上場廃止となる。三菱商事とKDDIが共同経営パートナーとして、ローソンの企業価値向上に向けて3社で取り組むとしている。

公開買付けのイメージ 公開買付けのイメージ
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  1. 「未来のコンビニ」に必要な要素とは--ローソンは「通信・デジタル」で成長へ
  2. KDDIを選んだ4つのポイント
  3. 「未来のコンビニ」何ができる?
  4. 目指すのは「GAFA“L”」--決済方法はどうなる?

「未来のコンビニ」に必要な要素とは--ローソンは「通信・デジタル」で成長へ

 ローソンは、ローソンのほか「ローソンストア100」「ナチュラルローソン」といったブランドのコンビニエンスストアを、全国約1万4600店舗展開。そのほか、スーパーマーケット事業となる「成城石井」、チケット販売や映画館運営、旅行業などを取り扱う「ローソンエンタテインメント」、店舗ATMを中心とした金融関連事業「ローソン銀行」などを営む。

 またローソンは、三菱商事との業務提携を2000年に開始し、2017年に傘下入り。三菱商事 代表取締役 社長の中西勝也氏は「国内コンビニ事業や海外コンビニ事業、金融エンタメなどの事業を強化しつつ、AIなどのシステム導入、自治体と連携した地域創生などを一体となって推進してきた。コロナ禍による影響もあったが、店舗改装や品揃え強化など、生活者ニーズの変化に対する施策の成果が出ている。2023年度は過去最高の当期純利益を果たした」とここまでを振り返る。

三菱商事 中西氏
三菱商事 中西氏

 一方で、「未来のコンビニ」を考えた場合、「三菱というグループが上流から提供する食品のデリバリーなど、さまざまなものをアドオンしてきたが、これ以上追加でサポートできるところは(ないか)、と悩んでいた」(中西氏)と明かす。

 他方、KDDIは2019年12月、ローソンと資本業務提携契約を締結。発行済み株式総数の2.1%に当たる211万株を市場買付で取得し、2020年には顧客ニーズに応じて特典配信などの実証実験を共同で実施するなど、関係を構築してきたという。

 中西氏は、「デジタル技術の進展や生活者ニーズの多様化、将来的な人口減少、異業種を含めた競争激化など、小売需要を取り巻くさらなる環境変化が見込まれる。三菱商事とは異なる機能を持ち、かつビジョン戦略を共有できるパートナーとともに、ローソンのさらなる成長を支援し、生活者に新しい価値を提供する必要がある」と、提携の背景を語る。

それぞれの強みを生かして新たな価値創造を目指す それぞれの強みを生かして新たな価値創造を目指す
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KDDIを選んだ4つのポイント

 ローソン 代表取締役 社長 竹増貞信氏は、KDDIから提案を受け、新しい未来のコンビニを作ることを考えた際、4つのポイントを検討したという。「1つ目は、三菱商事とは20年、KDDIとは5年、協業して、街に役立つコンビニを考えてきたこと。コロナ禍を乗り越えたことも踏まえ、相当太い絆が生まれたことが1番のポイント」という。

 続けて、社会や世の中のために貢献する、そのためにチャレンジするという社風をお互いが尊敬できることを2点目、お互いが業界で強い企業であることを3点目、ローソンの将来像をお互いが共有し、強みを出し合って追求できることを4点目に挙げた。

ローソン 竹増氏
ローソン 竹増氏

 「2023年度、(ローソンは)5年計画の3年目を迎えるが、定量計画では2年前倒しで達成する勢い。三菱商事・KDDIと協業し、100年に一度と言われるコロナ禍のピンチの中にチャンスを見つけ、結果にしてきた積み重ねだと思っている」(竹増氏)と、積み重ねた信頼関係を強調した。

 また、竹増氏は、「現在は“そこにある、リアル店舗”のローソンと認識してもらっているが、残りの2年で“テック”でも貢献し、それをグローバルに展開したい。例えばeコマース業では、大きなセンターが一括管理して配送を手配しており、大手でも2時間位が最速の配達スピードとなっている。(ローソンの)1万4000店舗のお店をリアル店舗かつECの配送センターとすれば、15分でお手元に届けられる。『グローバルリアル×テックコンビニエンス ローソングループ』を目指したい」と話す。

「未来のコンビニ」何ができる?

 KDDI 代表取締役社長 CEOを務める高(漢字ははしごだか)橋誠氏は、KDDIの得意とする通信・DX領域などで支援し、未来のコンビニの実現を後押しするという。「2023年の5月に三菱商事から提案を受け、(ローソンへの提案の)検討を開始した。『auショップ』などのKDDIの約2200の店舗とローソン、合計約1万7000の顧客接点で、デジタルをフル活用した新たな価値あるサービスを提供したい。オンラインでの服薬指導やさまざまなスマホのサポート窓口など、リモートの力を使えば顧客の身近なお店をより価値あるものにできる。ドローンを活用した遠隔地への配送、両社の購買データへ最新のAIを活用したバリューチェーンの最適化や、『Starlink』を活用した非常時の防災局化など、さまざまな将来構想がある」とした。

リアルへのデジタル活用イメージ リアルへのデジタル活用イメージ
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デジタル活用イメージ デジタル活用イメージ
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グリーンへの貢献イメージ グリーンへの貢献イメージ
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KDDI 高橋氏
KDDI 高橋氏

目指すのは「GAFA“L”」--決済方法はどうなる?

 また、竹増氏は、「1番大事にする点はお客様で、三菱商事、KDDIと一緒に追求していく。そこに資さないことが起きることは想定していないし、両社からいかなるサポートも惜しまずいただけるものと思っている」と、三菱商事とKDDIのハレーションなどは起こりえないという。高橋氏も「得意分野が異なる」と、お互いの長所となるところを生かしていくと続けた。

 竹増氏の「グローバルリアル×テックコンビニエンスの先には、『GAFAM』(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoftの頭文字からなる、テックジャイアントの総称)ならぬ『GAFA“L”』がある」という目標に向け、3社一丸で取り組むと意気込む。

 なお、現在ローソンでの決済時には、KDDIの競合となるNTTドコモが展開する「d払い」や「dポイント」、ソフトバンクグループが展開する「PayPay」を中心としたサービスなども利用できる。この点についても竹増氏は、「基本的には顧客に選ばれるサービスをしっかりと提供する、ということに尽きる。われわれからそういったこと(排除など)をすべきではなく、今後も提供していくが、(KDDIが展開する)『auPAY』への強力なサポートは期待している」と、auPAYを使いたくなる施策をともに検討していきたいと語った。

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