サムスンがスマートウォッチ市場に参入してから10年以上がたつ。同社は米国時間1月17日、製品発表イベント「Unpacked」の中で、スマートウォッチに続くウェアラブル製品「Galaxy Ring」を開発中であることを明らかにした。
スマートウォッチほどではないにせよ、スマートリングにもすでに先行製品が存在する。例えばキム・カーダシアンなどのセレブが愛用する「Ouraリング」、女性の健康に的を絞ったMovanoの「Evie Ring」などだ。しかし、サムスンがスマートリング市場に参入するというニュースは、健康データを収集する小さな指輪型デバイスが、必ずしもセレブやアスリート向けのニッチな製品ではないことを示している。
サムスンはGalaxy Ringを含む、さまざまなスマートデバイスをネットワーク化し、「Samsung Health」アプリに健康データを集約することで、ユーザーの生活習慣を総合的に把握するという壮大な計画を推進している。
サムスン電子のバイスプレジデントで、モバイルエクスペリエンス事業デジタルヘルスチームを率いるHon Pak氏は、「このリング(Galaxy Ring)を、マルチデバイス連携に向けた多くのステップの1つと捉えてほしい」と語った。
Galaxy Ringは一見するとただの指輪だが、よく見ると内側に小さなセンサーや電子機器がちりばめられていることが分かる。私が見たのはプロトタイプだが、見た目は実際に販売されるモデルとほぼ同じだという。撮影は許されなかったが、私はシルバー、ダークグレー、ゴールドの3色をすべて試してきた。一般的な女性用の指輪と比べると大ぶりだが、指にはめると驚くほど軽い。Ouraリングと同様に、デザイン自体はすっきりとミニマルで、伝統的な新郎用の結婚指輪を思わせる。
Galaxy Ringの詳細はまだほとんど分かっていない。発売日も価格も発表されておらず、搭載されるセンサーの種類や、「Galaxy Watch」が収集する健康データとの違いも不明だ。しかし、サムスンが睡眠、栄養、運動、ストレスという4つの健康データを柱とする健康戦略を推進する上で、Galaxy Ringが一定の役割を果たすことは間違いない。
Galaxy Ringなら、この種のデータをスマートウォッチよりもさりげなく、ユーザーの手をわずらわせずに収集できるとサムスンは考えている。率直なところ、誰もが腕時計、特にスマートウォッチを着けたいと考えているわけではない。
「もっとシンプルな形を求める人もいる。そのニーズに応えるのがGalaxy Ringだ」とPak氏は言う。Galaxy Ringはスマートウォッチほどユーザーのアクションを必要とせず、着けてしまえば後はほったらかしで健康指標を測定できるという。「(リングには)スタイリッシュな見た目、快適な着け心地、バッテリーの持ちも求められる。そのすべてを備えた製品を実現すべく、鋭意開発を進めているところだ」
Galaxy Ringの詳細については続報を待つ必要があるが、Unpackedの基調講演ではSamsung Healthアプリ用に開発が進められている新しい健康機能も披露された。その内容は、サムスンの計画を推測するヒントになるかもしれない。
まず、「My Vitality Score」と呼ばれる新指標が追加される。簡単に言えば、睡眠、運動、安静時心拍数、心拍変動等をもとに、身体と心の状態を評価する指標だ。Pak氏によると、このスコアには朝の覚醒度テストが含まれ、Galaxy WatchシリーズとGalaxy Ringで利用できるようになるという。もっとも、この新指標はOuraやFitbit、Garminといったウェアラブル製品ブランドがすでに提供しているレディネススコアのデータや数値とあまり変わらないように思われる。
実際、覚醒度テストをウェアラブル製品に搭載するのはサムスンが最初ではない。リストバンドの「Pison READY」やシチズンのスマートウォッチ「CZ Smart」にはすでに似たような機能が搭載されている。しかし指輪型のデバイスに限れば、この種のテストができる製品は珍しいため、Ouraリングとの差別化に役立つかもしれない。
Samsung Healthアプリに追加されるもう1つの目玉機能が「Booster Card」で、これは健康データの分析結果に基づいてアドバイスを提供してくれる機能だ。
しかし、サムスンがこうした機能を追加しようとしていることは、テクノロジー企業が健康データを脈絡なしに伝えるのではなく、ユーザーが自分の健康状態を総合的に捉えるための仕組み作りに積極的に取り組んでいることを示している。サムスンだけではない。Google傘下のFitbitも2024年に投入する新機能「Fitbit Labs」では、AIを活用してユーザーが自分の健康をより良く理解できるようにしたいと考えている。
サムスンは他にもさまざまな方法で、Samsung Healthアプリを利用した健康管理を強化しようとしている。結局のところ、ディスプレイのないGalaxy Ringのようなデバイスでは、アプリの出来が使い勝手を左右する。健康データの解釈を支援するチャットボットやバーチャルアシスタントを開発する予定はあるかとたずねると、Pak氏は検討中だと答えた。
「われわれは、人々が状況を見て理解するのを支援し、解決策に導くためのデジタルシステムのコンセプトが必要になると考えている」とPak氏は言う。「どのようなフォームファクターにするかはまだ決めていない。それは人によって違うかもしれない。音声だけでいいという人もいれば、テレビに映像を映したい人もいる」
ハイテク機能を備えたマットレスや冷蔵庫がスマートウォッチやスマートリングと通信する――Pak氏が描く、そんな未来の到来はまだまだ先だろう。しかしサムスンは、Galaxy Ringがそのような世界を実現するための一歩となることを願っている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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