ディスプレイを半分に折りたためるスマートフォンは着実にユーザーを増やしつつあり、少なくとも以前には考えられないほど一般的な存在となった。しかし「CES 2024」でサムスンが披露したのは、前方にも後方にも折りたためるコンセプトモデル「Flex In & Out Flip」だ。後方に折りたたむと、内側ディスプレイが外側に出るため、折りたたんだ状態でも6.7インチのディスプレイを使用できる。
後方に折りたたんだ時は、カメラのレンズが隠れないように、レンズのある側がレンズのない側より少し飛び出す形で重なる。レンズがある方(大きい方)のディスプレイには、クイック設定用のアイコンに加えて、音楽等のメディアの操作画面や時刻、バッテリー残量等が表示される。
Flex In & Out Flipはコンセプトモデルなので、自分で折り曲げてみることはできなかった。しかし、サムスンのディスプレイチームが打ち出した「両方向に折りたためる」という興味深いコンセプトは、巻き取ったり、折り曲げたり、たたんだりできる、最新のテクノロジーを搭載した未来のデバイスに新たな可能性を追加するものとなった。
「Galaxy」シリーズのフリップフォンの柔軟性をさらに高めることは、サムスンが未来のデバイスを実現するための最初の一歩となるだろう。しかしFlex In & Out Flipは今のところコンセプトの域を出ず、製品化の兆しはまだない。
しかしこのコンセプトモデルは、登場から4年近くがたったフリップフォンシリーズの汎用性と利便性をさらに高める方法をサムスンが考えている可能性を示唆している。サムスンは以前、左右に開くタイプの折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold」のデザインをもとに、後方に折り曲げられるコンセプトモデルを発表したことがあるが、上下に折りたたむタイプのスマートフォンで、この機能を備えた端末を発表したのは今回が初めてだ。
短い時間だったが、コンセプトモデルをチェックしてみて感じたのは、前方にも後方にも折りたためるスマートフォンの最大の利点は、端末を開こうと閉じようと、同じディスプレイを使い続けられることだ。「Galaxy Z Flip5」には、内側ディスプレイに加えて、そこそこ大きな外側ディスプレイも搭載されており、「Galaxy Z Flip4」などの旧モデルと比べて、アプリは格段に使いやすく、通知もチェックしやすい。しかし、この外側ディスプレイは内側ディスプレイとは別物なので、別途カスタマイズしたり、使用するアプリを選んだりしなければならない。
1つのディスプレイを内側にしても外側にしても使えるようになれば、さらにシームレスな体験ができるのではないかと興味をそそられるが、Flex In & Out Flipはコンセプトであって製品化はされていないため、現時点では答えを確かめる術はない。
サムスンは、このコンセプトモデルの耐久性を確認するために、下はマイナス20度、上は60度という極端な温度条件下で折りたたんだり、ディスプレイ上でバスケットボールをバウンドさせたりしたという。米CNETは2023年の夏、韓国の水原(スウォン)にあるサムスンの施設を訪れ、同社が折りたたみスマートフォンの耐久性をどのようにテストしているかを詳しく取材している。
今回のCESでは、サムスンは他にも複数のフレキシブルなディスプレイや折りたためるディスプレイのコンセプトモデルを披露した。ディスプレイが端末の上端に回り込んだフリップフォンのプロトタイプ「Flex Liple」は、その1つだ。このほか、巻物のように広げるとディスプレイが最大5倍の大きさになる「Rollable Flex」や、複合現実(MR)ヘッドセット用の新しい高解像度ディスプレイも展示されていた。
Galaxy Z Flip5と、同じく広々としたカバーディスプレイを持つMotorolaの「razr+」は、どちらも折りたためば手のひらに収まるほど小さくなるにもかかわらず、2つ目のディスプレイを搭載することで、スマートフォンの新たな可能性を切り拓いた。もし製品化されれば、Flex In & Out Flipはこの方向への新たな一歩となるはずだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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