シャープ、CESで最新技術続々--調理時間短縮できるオーブンから宇宙用ソーラーシートまで

 開幕前日にブースを設営しているところ。
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 開幕前日にブースを設営しているところ。

 シャープは、米ラスベガスで開催しているCES 2024に出展した。同社がCESの本会場に出展するのは、2020年以来、4年ぶりとなる。

CES 2024のシャープブースの様子。4年ぶりの出展だ
CES 2024のシャープブースの様子。4年ぶりの出展だ

 シャープは、2023年11月に、東京ビッグサイトで開催した同社初の大規模技術展示イベント「SHARP Tech-Day」を開催したが、CES 2024では、ここで公開された技術を中心に紹介。グローバル市場に対しても、新技術を広く訴求する内容になった。

 シャープブースは、ラスベガスコンベンションセンターのセントラルホールに置かれ、家庭内でのさまざまな悩みを軽減し、暮らしをより豊かに、快適にする技術を紹介する「Smart Living」、多様な働き方を賢く支援し、より迅速で効率的な産業への方策を提案する「Smart Industry」、多様な働き方を賢く支援し、より迅速で効率的な産業への方策を提案する「Sustainability」の3つの展示エリアで構成している。

 Smart Livingでは、シャープが開発したエッジAI技術の「CE-LLM(Communication Edge-LLM)」を紹介。CE-LLMを搭載した大型ディスプレイに表示される「AIアバター」によるバーチャル説明員が、来場者との会話を通じて、展示内容を紹介した。

AIアバターではバーチャル説明員が、来場者との会話を通じて展示内容を紹介
AIアバターではバーチャル説明員が、来場者との会話を通じて展示内容を紹介

 また、調理時間を大幅に短縮できるビルトイン型高速オーブンを展示。シャープ独自の加熱技術と熱源の最適制御を特徴とするとともに、業界初のゴールドカーボンヒーターを採用。米国ではパーティメニューのひとつとして人気の「丸鶏」を、従来の3分の1に調理時間を短縮し、炭火焼のようなおいしさを実現できることをアピールした。

調理時間を大幅に短縮できるビルトイン型高速オーブンを展示
調理時間を大幅に短縮できるビルトイン型高速オーブンを展示

 低騒音化とハイパワーを両立したヘアドライヤーは、ユニークな形状が特徴で、2つのモーターで大風量を実現しながら、独自の風路設計によって、低騒音化を実現。ハンズフリーでの利用も可能にしている。

 低騒音化とハイパワーを両立したヘアドライヤー。
 低騒音化とハイパワーを両立したヘアドライヤー。

 パワフルスティッククリーナーは、強力な吸引力を維持しながら、独自のノイズリダクション設計によって、大幅な低騒音化を実現したスティック型掃除機であり、静かな環境が求められるホテルのロビーなどでの利用も想定しているという。

 強力な吸引力を維持しながら、大幅な低騒音化を実現したパワフルスティッククリーナー。
 強力な吸引力を維持しながら、大幅な低騒音化を実現したパワフルスティッククリーナー。

 また、非接触バイタルセンサでは、半導体成膜技術による独自分光フィルターを活用。非接触で高精度に脈波をセンシングできるほか、ウェアラブル機器向けバイタルセンサは、イヤホンや指輪、眼鏡などのウェアラブル機器への搭載を想定した世界最小クラスの脈波センサとなっている。

ウェアラブル向けバイタルセンサ
ウェアラブル向けバイタルセンサ

 さらに、2023年秋から米国で展開を開始した「AQUOS XLED」を展示した。グローバルモデルと位置づけられるもので、今回の展示は、テレビ事業で再参入を果たした米国での「シャープ」ブランドの認知度向上を図る狙いもある。AQUOS XLEDは、mini LEDバックライトと量子ドットリッチカラー技術を採用したディスプレイが特徴であるほか、画面上部と下部にスピーカーを配置した音響システムによって、明暗の表現力に優れたダイナミックな映像と没入感あふれる音場を融合。あたかもその場にいるような臨場感を味わえる新世代のテレビを実現したと自信をみせた。

 2023年秋から米国で展開を開始した「AQUOS XLED」。
 2023年秋から米国で展開を開始した「AQUOS XLED」。

 Smart Industryの展示エリアでは、XRグラスを用いた生活や仕事のアップデート体験に注目が集まっていた。XRとAIの活用によって、ミーティング中の会話やアイデアを可視化するほか、天候や個人の予定を分析して、おすすめのコーディネートを表示する「AIスタイリスト」のデモストレーションを行うなど、パーソナライズした情報を活用することで、利用者をサポートするソリューションを提案した。

 VRやMRのXRグラスの試作品を展示。
 VRやMRのXRグラスの試作品を展示。

 また、「目」の役割を果たすポリマーレンズカメラを展示し、人の目と同じ仕組みで、高速にフォーカス調整を行える様子を紹介。これを利用した超小型カメラでは、視線を追跡し、見たい、行きたい、操作したいといった人間の意思を、非接触で実現できるという。

 AI Olfactory Sensorは、同社のディスプレイ基板技術を転用することで、生物の嗅覚を模したにおいセンサを実現したのが特徴だ。においのイメージ化によりAIでの処理や判断が可能なため、より複雑なにおいを判定する。SHARP Tech-Dayでは、ワインの銘柄当てのデモストレーションが行われたが、CES 2024でも、そのイメージを演出した展示となっていた。

AI Olfactory Sensorを展示
AI Olfactory Sensorを展示

 そのほか、独自開発の大気中電子放出素子を用いたIMS(イオン移動度分析法)ガス分析装置や、独自の光触媒材料を採用したガス分解モジュール、ドライバーの視線や顔の向き、まばたきを検知し、ドライバーを見守るドライバーモニタリングカメラの展示も行った。Sustainabilityのエリアでは、宇宙用ソーラーシートを展示。巻き取りが可能な構造となっているため、コンパクトに収納して移動し、現地で大面積に展開して発電できるなど、移動体用太陽電池として、これまでにない使用が可能となることを示した。この技術は、1月20日に月への着陸が予定されいるJAXAの小型月探査機「SLIM」にも搭載されている。

 JAXAの小型月探査機「SLIM」にも搭載された宇宙用ソーラーシート。
 JAXAの小型月探査機「SLIM」にも搭載された宇宙用ソーラーシート。

 また、外光の反射を利用した屋外向け低消費電力反射型LCDサイネージや、E Inkの最新電子ペーパープラットフォームであるSpectra 6を搭載した低消費電力 カラー電子ペーパーディスプレイ「ePoster」、屋内光を高効率で電気に変換可能な色素増感太陽電池と液晶ディスプレイ技術を融合した屋内光発電デバイス「LC-LH」も展示していた。LC-LHの実用例として、電子棚札での利用のほか、SHARP Tech-Dayでも展示したLC-LH搭載テレビ用リモコンも紹介した。

屋内光を高効率で電気に変換可能な色素増感太陽電池と液晶ディスプレイ技術を融合した屋内光発電デバイス「LC-LH」
屋内光を高効率で電気に変換可能な色素増感太陽電池と液晶ディスプレイ技術を融合した屋内光発電デバイス「LC-LH」

 4年前までのCESにおけるシャープブースの展示内容は、北米市場向けの新製品をはじめ、市場投入を前提とした製品がブースのほとんどを占め、技術展示は限定的だったが、今回の出展では、SHARP Tech-Dayで見せたように、試作段階の製品や開発途中の技術を積極的に公開していたのが特徴だ。シャープでは、CESを、テクノロジーを公開する場に捉えなおしたといえそうだ。

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