ソフトバンクは12月13日、魚の価値の向上を目指し、魚の鮮度やうまみの測定手法の確立に向けた品質規格標準化プロジェクトを開始すると発表した。
同プロジェクトの実現に向けて、愛媛でマダイやヒラメの養殖を手掛ける赤坂水産、愛媛県産業技術研究所、飼料の高いシェアを持つフィード・ワン、「銀のさら」などを手掛け、味の知見を持つライドオンエクスプレスらとコンソーシアムを設立した。なお、同プロジェクトは、愛媛県のデジタル実装加速化プロジェクト「トライアングルエヒメ」の2023年度の採択案件となっている。
ソフトバンクは、2020年よりIoTやAIを用いた養殖システムの確立に取り組んでおり、最近では、ディープラーニングを用いて水中にいる魚の尾数を自動でカウントするシステム「FOIDS」などを活用し、赤坂水産らとともに飼料の効率化や漁獲量の予測などに「生産」に関する向けた取り組みを発表してきた。
ソフトバンクがなぜ養殖事業に取り組むのか。ソフトバンク IT&アーキテクト本部 本部長の北澤勝也氏はSDGsの一環で、「一次産業の課題を解決することで、持続可能な社会を実現したい」と説明する。その背景には、日本における深刻な食糧自給率の減少がある。漁業・養殖業の生産量においても、世界では右肩上がりの養殖業でさえ日本は微減している状況だ。
ソフトバンクは、2020年よりIoTやAIを用いた養殖システムの確立に取り組んでおり、最近では、ディープラーニングを用いて水中にいる魚の尾数を自動でカウントするシステム「FOIDS」などを活用し、赤坂水産らとともに飼料の効率化や漁獲量の予測など「生産」を改善する取り組みを発表してきた。
今回のプロジェクトは、「流通」の課題に向けたもの。品質を保証する基準を働き方改革法案などにより、長距離での鮮魚の運搬がより困難になる物流・運送業界の「2024年問題」に向けた一つの解決策としたい考えだ。
魚の価格は、魚種と重量で決められており、果物の糖度や牛肉の等級のような統一された品質規格がない。そのため養殖魚は、さまざまな工夫をして味を差別化をしても生産者は付加価値が得られず、消費者側もまた“おいしい魚”がわかりにくい問題がある。
まずはマダイをテーマにおいしい冷凍魚をつくり、品質を落とさず輸送することを目刺し、“おいしい魚”の定義と“冷凍に向いた魚”の定義を明確化し、魚の品質規格標準化に向けた研究開発を開始する。
具体的には、魚の鮮度とうまみをハンディセンサ(分光センサ)を使い、簡単に計測できる手法を確立する。マダイの鮮度や栄養分析、健康指標を迅速に測定する方法を開発することで、データ駆動型の冷凍魚の決定プロセスと最適冷凍魚のマシンラーニングモデルの実現を目指すとしている。
赤坂水産 取締役の赤坂竜太郎氏は、「日本は水産に関して素晴らしい国なのに、生産者であるわれわれは不甲斐ない思い」と危機感をにじませる。
日本の水産物の生産量がなぜ伸びないのか。(1)養殖であっても天然資源(天然の稚魚)に依存していること、(2)安定的な飼育可能な海域が限定的であることを理由に挙げた。サーモンや帆立は水温15度以上で命の危機があり、マグロや青物は水温15度以下での育成が困難という。
変化の激しい日本の海でも増産が可能な魚として、マダイがあるが、日本人にのみ特別な魚であることなどから、日本人が日本人好みの味に増産してきた背景があり、このままでは日本(と韓国)以外で売れない――という事情がある。
今回の取り組みによって、食べてくれる人の趣向や物流を鑑みた味や特徴にする、海外には冷凍・熟成技術を用いることで、水産物の生産量を上げられるのではないかと説明した。
将来的には、全ての魚種について規格作りと測定方法の確立を行い、日本の魚の品質規格標準化を推進。高品質な魚の国内外への流通拡大により、日本の水産業の活性化を目指す。
コンソーシアムメンバーの役割は下記のとおり。
・赤坂水産冷凍に適した魚の育成方法や締め方、加工、冷凍タイミングの検証
・愛媛県産業技術研究所とフィード・ワンCNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
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