日本の「食」における課題を、民間企業と国・自治体が力を合わせて解決する――そうした試みに力を入れているのが愛媛県だ。愛媛県は、2021年12月より「Ehime Food Innovation(EFI)コンソーシアム」を設立し、「フードテック」や「デジタルマーケティング」を活用して県内の食品関連産業のイノベーションの創出を推進している。
さらに新規事業創出プロジェクトとして2022年9月、県内企業と大手企業の技術をかけ合わせて食の課題を解決する「GUARDIAN PROJECT」がスタートした。
GUARDIAN PROJECTの第1弾が、EFIコンソーシアムと赤坂水産、ソフトバンクが手を組んだスマート養殖プロジェクトだ。EFIコンソーシアムを立ち上げた経緯や、スマート養殖プロジェクトを採択した経緯、取り組みの現状などについて聞いた。
EFIコンソーシアムを立ち上げた経緯について愛媛県 経済労働部産業支援局経営支援課 地域産業係長の田窪直文氏は次のように語る。
「都道府県や市町村では優れた産業や農林水産物、歴史、文化などを売りにしたPRを行っているが、普通のPRでは差別化が難しい。そこでフードテックを活用した食のイノベーション創出ができないかと、2021年12月にEFIコンソーシアムを立ち上げた。公的機関と商工団体、食品業界、教育機関、約110団体が参画しており、フードテックやデジタルマーケティング、それに付随する人材育成・採用ワーキングなどを一体的に実施していく」(田窪氏)
その背景には世界的な人口増加による食料問題と、国内における人口減少とそれに起因するGDPの低下などが挙げられる。
「世界の人口が増えていくと食料需要が高まり、途上国が先進国になることで食のバランスが崩れるため、世界的に新しいマーケットが生まれるのではないか。一方で国内は人口が減り、GDPも低下していくため、日本が食料を買えない時代が来るかもしれない。愛媛は農林水産が盛んな県なので、より国内への供給や海外輸出ができるように取り組んでいきたい」(田窪氏)
バイオサイエンスやAI・IoTなどの技術の進展も背景の一つだ。
「愛媛にもシルクロース(愛媛大学発ベンチャーの愛南リベラシオが開発した、カイコのサナギに含まれる機能性物質)を活用した昆虫の養殖飼料などがあり、愛媛にもチャンスがある。また、フードテックは世界的に投資が進んでいる一方で、日本ではあまり進んでいない。地方の自治体が先陣を切って進めていくことで、日本のフードテックを盛り上げていきたい」(田窪氏)
こうした中で2022年9月にスタートしたのが、愛媛県下の企業と大手企業などが手を組んで食の課題を解決する「GUARDIAN PROJECT」だ。
「愛媛県内の中小企業の技術や国内の先端を走っている大手企業の技術をかけ合わせて食料危機に対しての課題を解決するため、養殖支援プロジェクト、畜産支援プロジェクト、代替食開発プロジェクト、農業プロジェクトの4つを計画している」(田窪氏)
その第1弾としてスタートしたスマート養殖プロジェクトは、EFIコンソーシアムとソフトバンクが手を組んだもので、愛媛県下の赤坂水産が加わって無魚粉飼料とスマート自動給餌機を活用したスマート養殖の実証実験を進めている。
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