ソフトバンクで代表取締役社長執行役員兼CEOを務める宮川潤一氏は12月4日、NTT法を廃止してNTTを特殊法人から完全な民間企業する議論について「(NTTが国から受け継いだ資産を)民間に渡すということなら、当然(電話加入権を)国民に返すべきという議論もあって然るべき」と述べた。
宮川氏は冒頭、自民党のプロジェクトチームで進むNTT法廃止の議論について「なぜNTT法を無くす必要があるのか、全く腹落ちしていない」と述べた。
ソフトバンクやKDDI、楽天モバイルの携帯3社らは、NTT東西の光ファイバーや局舎、洞道などを利用して事業を展開している。そんな「日本の通信インフラの大元」であるNTTを縛る法律が廃止され完全な民間企業となれば、NTTとNTTドコモ、NTT東西が一体化した「巨大なNTT」が誕生し、公正競争が阻まれ通信料金の値上げにつながるとの立場だ。
一方のNTTは、公正競争は電気通信事業法などでカバーできると主張している。この主張に対して携帯3社らは「電気通信事業法ではNTTを十分に縛れない」との立場だ。そもそもNTT法をめぐる議論の発端は、防衛費増額分を捻出するための国によるNTT株売却や、経済安全保障面での「NTTに課された研究成果の開示義務」の撤廃にあり、それらはNTT法の改正で事足りると主張している。
宮川氏は「NTT法の改正でなぜいけないのか。本当に(廃止に)こだわっている人たちは本当に誰なのか、全くわからない議論ばかりが続いている」と述べた。
宮川氏は、NTTが国から局舎や管路、洞道などの特別な資産を受け継いでいる点にも触れ、次のように述べた。
「NTTの特別な資産は、電話加入権だったり電電公債だったり(で費用が賄われていたり)する。電電公債の返済は当然ながら国民の電話代の基本料金や利用料金から回収して返済しているわけで、まさに国民の持ち物だ。それを一民間企業に払い下げるということであれば、例えば電話加入権を一体全体どうするつもりなのか。民間に渡すということであれば、当然国民に(電話加入権を)返すべきじゃないかという議論もあって然るべきだ」(宮川氏)
続けて「当時は(NTTが)特殊法人で、われわれ自身も作り手側に回らなくてはいけないということで、当時の有識者が知恵を出し合って『電話加入権を国民に戻さないことも仕方ない』ということで決まったと聞いているが、この民営化がNTTさんだけの思いで進むのであれば、やはり国民にその分くらいはせめてお返しするくらいの議論があるべきだ」と述べた。
また、現在のNTT法の議論について宮川氏は「国民不在」とも指摘。「郵政民営化のときは当時の小泉首相が解散までして、国民に聞くことをされた。(NTT法廃止の議論も)本当に電話加入権など大きな財産の話で、洞道を含めて大きな国の財産だ。それを国民不在の中で決着するというのは断固反対させていただきたい」とした。
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