「iPhone 15 Pro」と「iPhone 15 Pro Max」は、新しいチタニウムデザインを備え、多くのデバイスで採用されている充電と高速データ転送の規格であるUSB Type-C(USB-C)ポート、より強力なプロセッサー、そして、ショートカットにアクセスできる新しいボタンを搭載している。
Pro Maxの5倍光学ズームなど、カメラのアップグレードも確かにあるが、米国時間9月12日にAppleが開催したイベントで主役となったのは、前述の変更点だったようだ。これは意義深い。Appleの「iPhone Pro」モデルの主要なターゲットがもはやカメラ愛好家だけではないことを示唆しているからだ。
新しい4800万画素のカメラが「Dynamic Island」とともに「iPhone 14 Pro」の目玉機能の1つだった2022年と大きな違いだ。2021年の「iPhone 13 Pro」も、最も注目すべき差別化要素は、マクロ撮影やナイトモードポートレート、手ぶれ補正機能の強化などだった。
iPhone 15 Proに関するAppleの決定は、iPhoneの未来についての手がかりになるかもしれない重要な点だ。「iPhone16」以降のモデルで搭載されるであろう機能を予想するヒントになる可能性もある。過去にiPhoneの最上位モデルで最初に登場した一部の機能(「Face ID」、そして今ではDynamic Islandも)は、後に標準モデルでも採用されている。
iPhone 15 Proは、より高性能のカメラやより大容量の内部ストレージを求めるユーザー向けの単なる高価なモデルではなく、iPhoneシリーズの未来に関するAppleの声明となっている。
価格の高さを考えれば当然のことだが、iPhoneのProモデルには、標準モデルでは利用できない追加機能が搭載されている。例えば、より滑らかなリフレッシュレート、画面がオフのときでも時刻などの情報を表示できるディスプレイ、望遠レンズ、より高級な素材を採用したデザインなどだ。しかし、一部の要素は一定の期間を経て低価格のモデルにも搭載されてきた。
2016年の「iPhone 7 Plus」を例に挙げて説明しよう。当時、スマートフォンの背面に2つのカメラを搭載するというアイデアは、まだ斬新だった。しかし、現在では、「iPhone SE」を除くすべてのiPhoneがデュアルカメラ構成となっている。また、LCDディスプレイよりもコントラストが優れているOLEDスクリーンも、かつてはハイエンドのiPhoneだけで提供されていた。しかし、「iPhone 12」シリーズ以降、Proモデル以外のiPhoneでもOLEDが搭載されるようになった。
Appleはプレミアムスマートフォンの特徴的な要素をその他のデバイスにも標準で搭載してきた。近年で最も顕著な例は「iPhone X」だ。2017年に発売されたiPhone Xは、最低価格が1000ドル(日本では10万円)を超えた最初のiPhoneであり、気軽に購入できる製品ではなかった。しかし、その価格ゆえに多くの変更が施されており、iPhoneの転換点となった。iPhone Xでは、全面ディスプレイが導入され、ホームボタンが廃止された。また、パスコードを入力せずにスマートフォンのロックを解除する新たな手段として、Face IDが登場した。
それ以来、iPhone SEを除くすべての新型iPhoneがこれらの機能を継承してきた。このことは、AppleのプレミアムスマートフォンがiPhoneの未来を占う手がかりとなっていることを示している。その伝統はiPhone 14 Proでも受け継がれた。14 ProはDynamic Islandを搭載した最初の機種だったが、今回、iPhone 15の全モデルでこの機能が搭載されている。実際のところ、iPhone 15の標準モデルは、Dynamic Islandや4800万画素のカメラ、iPhone 14 Proと同じ「A16 Bionic」チップを搭載しているため、14 Proの小型版といった印象を受ける。
iPhoneの今後を正確に知ることは不可能だ。しかし、AppleがiPhone 14 Proと15 Proで提示した方向性がヒントになるかもしれない。
2022年のiPhone 14 ProでDynamic Islandが導入されたことと、15 Proでアクションボタンなどの新機能が搭載されたことから分かるのは、iPhone Proがもはや単なるハイエンドカメラ搭載スマートフォンではないということだ。カスタムショートカットで自分のデバイスをパーソナライズする新しい方法を切望し、ほかのデバイスとは明らかに異なる外観と使用感を求める、いわゆる「パワーユーザー」向けのデバイスにもなっている。例えば、アクションボタンを使用すると、カメラに素早くアクセスしたり、音声メモを録音したり、懐中電灯をオンにしたりすることが可能だ。
iPhone Proはずっとそうしたユーザーをターゲットにしていたので、「Pro」という名前が付けられ、より高い価格が設定されてきた、と言うこともできる。しかし、たとえそうだとしても、Proモデルのカメラの改良がほかのアップグレードよりも目立つことが多かったのは事実だ。iPhone 15 Proは、カメラ以外のものもiPhone Proの目玉機能になる段階に移行しつつあるということをほのめかしている。
これは、うれしい。近年の新型スマートフォンは退屈に感じられるようになっていたからだ。カメラとプロセッサーのテクノロジーは向上したものの、カメラとセンサーが詰め込まれたガラスと金属の板であることに変わりはない。iPhone 15 Proは、そうした状況を変えるものではないかもしれないが、iPhoneの今後の方向性を示す手がかりとなっている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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