パナソニック 空質空調社は8月25日、電気給湯機「エコキュート」における事業戦略と新製品について発表した。気候変動を受け、カーボンニュートラルへの動きが高まるなか、大気の熱を利用してお湯を沸かすエコキュートは、地球環境への負荷を抑えた給湯器として、ZEH住宅や省エネリフォームなどの住宅トレンドを背景に、今後も市場拡大が続くとした。
エコキュートを手掛ける、水ソリューションズBU(ビジネスユニット)は、4月に新設した組織。エコキュートのほか、ホームシャワーやヒートポンプ式温水給湯暖房機(Air to Water=A2W)などの商品も取り扱う。
パナソニック 空質空調社 日本・広域事業担当水ソリューションズビジネスユニットBU長の福永敏克氏は「暖房と給湯と用途の違いはあるが、A2Wもヒートポンプ技術を用いており、エコキュートと要素技術は共通。欧州市場でA2Wは各国の支援事業をきっかけに需要が伸びており、日本のエコキュート事業もお互いのリソースを活用しながら伸ばしていきたいと考えている」と現状を話した。
エコキュート市場は、東日本大震災の前となる2010年度が需要のピークだったが、2021年度にその需要台数を更新し、2022年度は過去最高の70万台まで拡大している。福永氏は「カーボンニュートラルの追い風を受け、2025年度には80万台もしくはそれ以上に伸長すると見ている」と拡大傾向にあるとする。
今後は、エコキュート比率が51%となる戸建新築に加え、ボリュームゾーンとなる戸建既築への導入と集合住宅への提案にも注力していく方針。福永氏は「戸建新築はZEH住宅の推進、戸建既築は省エネリフォームの提案を強化し、販売を拡大していく。エコキュートは設置場所に余裕がある戸建が主戦場のため、集合新築の比率は現状7%に過ぎないが、提案していきたいと考えている」と領域別の取り組みについて説明した。
同日発表したエコキュートは、最低気温がマイナス10度を下回る寒冷地向けの製品。6月に発売した一般地向け製品と同様に、専用アプリを使って日射量予報から太陽光発電の出力を予測し、自動で沸き上げる「スマートソーラーチャージ」を搭載する。
寒冷地向けのため、外気温がマイナス25度でも約80度の高温沸き上げができ、貯湯ユニットに凍結予防ヒーターを内蔵。シャワー流量を「高圧タイプ」と比較して約1.4倍にした「ウルトラ高圧」でシャワー使用時の快適性を向上している。普及モデルのスタンダードクラスでも、2025年度を目標年度とする省エネ基準寒冷地年間給湯保温効率(JIS)2.9を達成し、補助金の対象となる省エネ性能も備える。
パナソニック 空質空調社 マーケティング担当マーケティング本部日本マーケティングセンター電化マーケティング統括部統括部長の松尾圭氏は「エコキュートに対するニーズは高いが普及率は低いと感じている。その阻害要因は『ランニングコストが本当に安くなるのか』『イニシャルコストが高いのでは』といった購入への不安。エコキュートの本質価値を伝えきれていないことが要因のため、流通の方向けにショールーム『e-STATION KUSATSU』をオープンした。体感を通じたエコキュートの商品価値を発信する場を通して訴求していきたい」と普及拡大の施策について話した。
パナソニック 空質空調社では、サイズが大きい貯湯タンクは国内生産が必須とし、滋賀県草津市にある草津工場の生産能力を増強中とのこと。2021年度に15万台だった生産能力を2025年度までには30万台まで引き上げる計画だ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス