199.99ドル(約2万8000円)という価格で登場したサムスンの「Galaxy A14 5G」は、格安スマホの新たなスタンダードを確立している。お手頃価格のスマートフォンの中では、NFCによる非接触決済と5Gに対応している数少ないモデルの1つである。それ以上に特徴的なのは、サムスンが2世代分のソフトウェアアップデートと4年間のセキュリティアップデートを保証している点だ。同じ価格帯のライバル機は、ソフトウェアアップデートが1世代、セキュリティアップデートが3年という場合が多い。つまり、低価格帯のスマートフォンでありながら、その気になれば数年間は安全に使えるということだ。通常はもっと上の価格帯のモデルでしか見られない特典であり、それを考えるとGalaxy A14 5Gは有力な購入候補になる。
筆者は1カ月にわたって試用したが、こうした機能が搭載されているおかげで、Galaxy A14 5Gは簡単な朝食を買ったり、通勤中に音楽を聴きながらネットを閲覧したり、日帰り旅行で安心してカメラを使ったりできることが分かった。しかも、バッテリー容量は5000mAhなので、翌日になっても使えるくらい十分に充電量が残っていた。
もちろん、問題がないわけではない。Galaxy A14 5Gは随所が切り詰められているため、デザインは単調だし、プロセッサーの処理速度が遅い関係でアプリの読み込みを待たされることもある。それでも読み込みはされるし、ほとんどの日常的なタスクに対応するスマートフォンを求めているのであれば、スピードにこだわらない限り、Galaxy A14 5Gは堅実な候補になるかもしれない。
Galaxy A14 5Gは米国の場合、ブラックのみのカラー展開で、本体は光沢のあるプラスチック製。手に持つとやや厚みがあるように感じられ、背面は端に丸みがなく、がっしりとした見た目になっている。背面の左上隅には、50メガピクセルのメインカメラ、2メガピクセルの深度カメラ、2メガピクセルのマクロカメラの3基がある。
前面にはしずくのような形のノッチがあって、そこに13メガピクセルの前面カメラが収められている。6.6インチのディスプレイは解像度が1080pで、90Hzのリフレッシュレートに対応する。同じく199.99ドル(約2万8000円)の「moto g stylus」(2023年版)は常時90Hzで動作するが、Galaxy A14 5Gでは、60Hzの「Standard」モードと、文章やアニメーションをスクロールする時、アプリ間をスワイプする時など、自動的に最大90Hzに調整される「Adaptive」モードがある。確かに動きは滑らかになり、特に記事を読むときやゲームをプレイするときなど、その効果は明らかだった。
本体のスピーカーは1つしかなく、筆者は横向きで動画を視聴するとき、うっかりそのスピーカーをふさいでしまうことが何回もあった。Motorolaの低価格スマートフォンの現行ラインアップでは、「moto g」シリーズのすべてのモデルでステレオスピーカーを採用しているため、その点が目立ってしまう(ただし、Galaxy A14 5Gでもヘッドホンジャックを使えばステレオ音声を再生できる)。内部ストレージは64GBなので、最初はこれで十分だろうが、microSDカードスロットを使えばストレージは1TBまで拡張できる。
Geekbenchのベンチマークテストでは、moto g stylus(2023)より高いスコアを記録したが、実際に使ってみるとそこまでの差は感じられない。Galaxy A14 5Gに採用されているMediaTekの「Dimensity 700」プロセッサーは動作が遅く、別のアプリを開く時、テキストボックスをタップしてキーボードを開く時、アプリを切り替える時にはワンテンポ余分な時間がかかることも多かった。ソフトウェアの更新でいずれ改善される可能性はあり、今のパフォーマンスでも気軽に使う分には全く問題ない。だが、仕事用に多くのドキュメントを処理したり、グラフィックスの要求水準が高いアプリを扱ったりできるスマートフォンではない。
一方、Galaxy A14 5GにNFCが搭載されているのは実に有意義で、非接触決済に関しては「Googleウォレット」と完全な互換性がある。NFCによる非接触決済は交通機関からコンビニまで普及しているが、300ドル(約4万3000円)以下のスマートフォンでそれに対応している機種は希少だ。これがトレンドになり、価格帯にかかわらずどのスマートフォンでもNFCが標準の機能になることを期待している。
Galaxy A14 5Gのカメラは、50メガピクセルのメインカメラを採用しているものの、撮れた写真の出来栄えはまちまちだった。ブルックリンで開催されたアニメフードフェスティバルに足を運ぶなどの何回かの日帰り旅行や、サンディエゴで開かれた「コミコン」に週末を使って参加した時に、Galaxy A14 5Gで写真を撮ってみた。
屋外で撮影した写真は、動きがほとんどない場合は十分に綺麗だった。アニメフードフェスティバルでは、デザートのチーズケーキやうさぎ型ミルクプリンはいい写真が撮れた。それを除くと、人ごみがあったり、太鼓のパフォーマンスで動きがあったりしたために、ほとんどの写真でブレがあった。
屋外で撮影した自撮り写真も悪くないが、サムスンの上位機種と同じように、筆者にはそれぞれの色味が強調されすぎているように感じられた。
色味が強調されすぎる傾向は、米CNETのオフィスで撮影した壁面の植物の写真にも見られる。moto g stylusと、249.99ドル(約3万6000円)の「moto g 5G」で撮った写真の方が、Galaxy A14 5Gで撮った写真より緑の陰影が忠実に再現されていた。
また、同じ価格帯の他のスマートフォンでもそうだが、屋内で動きがある時の画質は難がある。コミコンの会場は十分な照明があったが、それでも「ファイナルファンタジーXVI」の「イフリート」はぼやけてしまった。
Amazon制作のドラマ「グッド・オーメンズ」にちなんだパーティーに移動すると、照明が薄暗く、フォーカスを合わせるのは難しかった。
ニューヨークに戻って撮った自撮り写真は画像がノイズだらけだ。撮影した場所は、地下にあるレストランLa Cavernaだが、レストラン自体の写真は動いている人がいなかったため、きれいに撮れた。
全体的に、Galaxy A14 5Gの写真の質は、価格帯以上のものではない。200ドルのスマートフォンを探していて、カメラ性能を重視しているのであれば、Motorolaのgシリーズ最新モデルの方がいいだろう。moto gシリーズでも暗い場所では似たような問題があるが、筆者がテストした限りでは、Motorolaの方が若干ながら優秀だった。
サムスンのGalaxy A14 5Gは、200ドル以下の価格帯で筆者がテストした中では最も実用的なスマホの1つだ。処理速度の遅いプロセッサーや、ばらつきのある写真の質など、目立った問題点はあるものの、基本的なタスクはこなせる。NFC搭載は特に大きな利点で、非接触決済があらゆる価格帯のスマートフォンで普及するきっかけになればいいと思う。セキュリティアップデートの保証期間が長めなので、数年間は安全に使えるというメリットもある。友人や家族との連絡手段を確保しておきたいという目的で手頃なスマートフォンを探しているだけなら、この点は特に有用だろう。
以上の点を踏まえると、限られた予算でスマートフォンを探している人や、無料で手に入れる機会があれば、まずGalaxy A14 5Gはお勧めしやすい。ただし、処理速度に限界があることには注意したい。また、通常は300ドルする上位機種が、割引や特典などで価格が下がることがあれば、そのチャンスを見逃す手はない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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