シャープ、70億円の営業赤字は「想定内」--SDPの事業計画は見直しへ

 シャープは、2023年度第1四半期(2023年4~6月)の連結業績を発表した。売上高は前年同期比3.7%減の5412億円、営業利益は前年同期の61億円の黒字からマイナス70億円の赤字に転落。経常利益は前年同期の174億円から、マイナス5億円の赤字となり、当期純利益は前年同期比79.5%減の55億円の黒字となった。

2023年度第1四半期連結業績概要
2023年度第1四半期連結業績概要

 シャープ 代表取締役副社長執行役員の沖津雅浩氏は、「売上高はエレクトロニックデバイスが増収となったものの、そのほかの4セグメントが減収となり、前年実績を下回った。また、営業利益や経常利益、最終利益は前年同期を下回ったが、2022年度第4四半期に比べて大幅に改善している。70億円の営業赤字は、想定の範囲内である。ディスプレイデバイスが赤字になっているが、他の4セグメントは黒字化している」と総括した。

 また、シャープ 常務執行役員 管理統轄本部長の小坂祥夫氏は、「需要が減速しているディスプレイデバイスの売価ダウンの影響が大きい。ブランド事業でも多くの製品が前年実績を下回っている。その一方で、節流と呼ぶ、コスト削減効果として、56億円の改善があった」などとした。

シャープ 代表取締役副社長執行役員の沖津雅浩氏
シャープ 代表取締役副社長執行役員の沖津雅浩氏
とシャープ 常務執行役員 管理統轄本部長の小坂祥夫氏
とシャープ 常務執行役員 管理統轄本部長の小坂祥夫氏

 なお、持分変動利益として42億円、債務取崩益で48億円を、特別損益として計上しているが、SDP(堺ディスプレイプロダクト)が中国・広州に持つ第10.5世代の液晶パネル工場の持分比率が40%から36%に減少したことで、合計90億円の特別益が出たという。

 2022年度のセグメント別業績では、ブランド事業の売上高が前年同期比6.8%減の2990億円、営業利益は31.5%増の117億円となった。

セグメント別売上高
セグメント別売上高
セグメント別営業利益
セグメント別営業利益

 そのうち、スマートライフ&エナジーは売上高が前年同期比5.8%減の1066億円、営業利益は7.1%減の69億円。白物家電、エネルギーソリューションともに減収になっている。

 「市況低迷の影響を受けた冷蔵庫や調理家電、空気清浄機が減収。だが、洗濯機は付加価値化が進み、国内での売上げが大幅に伸長。エアコンはアジアで伸長した。また、洗濯機や掃除機などで高付加価値化が進展し、白物家電事業は増益になっている」(シャープの沖津副社長)と語った。

 洗濯機は、ドラム式洗濯乾燥機へのシフトが進んだことに加え、前年同期には上海のロックダウンによって、ほぼ1カ月に渡り販売が停止していたことからの回復があり、約1.5倍という高い金額成長を達成しているという。また、エアコンはアジアを中心に前年同期比2桁以上の販売を達成。テレビではXLEDを中心に高付加価値製品へとシフトを進めており、全世界で前年比2倍近い販売目標に取り組んでいるという。

 「国内およびアジア、米国市場は厳しいが、アジアでは付加価値が高い洗濯機や大型冷蔵庫にシフトし、テレビも大型化を推進している。台数が伸びなくても、金額を伸ばしていく」と述べた。

スマートライフ&エナジー
スマートライフ&エナジー

 スマートオフィスは、売上高が前年同期比2.8%減の1266億円、営業利益は168.8%増の31億円。「インフォメーションディスプレイは価格競争が激化して減収となったが、MFP事業やオフィスソリューション事業は欧米を中心に引き続き堅調に推移。オフィスソリューション事業は高付加価値化が進んだ。また、PC事業は教育関連の伸長により、国内B2Bが10%超の増収となったほか、構造改革が進み収益が大きく改善した」という。

 なお、PC事業は欧州市場から撤退したことを明らかにした。

スマートオフィス
スマートオフィス

 ユニバーサルネットワークは、売上高が前年同期比14.9%減の657億円、営業利益は378.7%増の17億円。「テレビ事業は売価アップや高付加価値モデルの販売が進展したが、国内や中国で市況が悪化し、販売が減少。通信事業は、フラッグシップスマートフォンの売上げが伸長し、売価の見直しも進んだが、国内需要の減速が継続している」という。

ユニバーサルネットワーク
ユニバーサルネットワーク

「SDPに大きな投資をすることは見込んでいない」

 一方、デバイス事業の売上高は前年同期比1.5%減の2545億円、営業利益は前年同期の6億円から、マイナス152億円の赤字に転落。そのうち、ディスプレイデバイスは、売上高が前年同期比9.6%減の1713億円、営業利益が前年同期の6億円の黒字からマイナス173億円の赤字となった。「車載向けパネルは大きく伸長しているが、市況の低迷により、スマホ向けやPC向けパネルが減少した。大型ディスプレイは赤字となったが、2022年度第4四半期に減損処理を行った効果があったこと、引き続きコスト削減の取り組みを進めていること、市況が回復傾向にあることから、赤字幅は縮小している」と述べた。

 なお、SDPに関しては、「新たな中小型パネルの生産や32型パネルの生産、工場の空きスペースの活用による新規カテゴリーへの取り組みを検討しているが、SDPに大きな投資をすることは見込んでいない」としたほか、「2024年度までに大型パネルを40%にまで引き下げるという計画は、子会社化を決定したときのものである。状況が大きく変化しており、需要の減速により、亀山工場の状況も思わしくない。いまは、2024年度の40%のターゲットを見直す方向で検討をしている」とした。

 エレクトロニックデバイスは、売上高が前年同期比20.8%増の832億円、営業利益は前年同期のブレイクイーブン(若干の黒字)から20億円の黒字となった。顧客の2022年モデル向けに、デバイスの販売が堅調だったことがプラスとなった。

ディスプレイデバイス
ディスプレイデバイス
エレクトロニックデバイス
エレクトロニックデバイス

 2023年度(2023年4月~2024年3月)通期の業績見通しは据え置き、売上高は前年比0.5%増の2兆5600億円、営業利益は400億円に黒字転換。経常利益は390億円に、当期純利益も100億円と、いずれも黒字化を計画している。

 「業績が想定線で進捗していることから、通期の業績予想は5月公表値を据え置いた。今後も厳しい事業環境が継続する見通しだが、全社をあげて『開源節流』を徹底し、通期での最終利益の黒字化に取り組む」とした。

2023年度連結業績予想
2023年度連結業績予想

 ディスプレイデバイスは上期に営業赤字になる見込みだが、下期はPCの需要が回復することから挽回できる見通しに加えて、第4四半期に販売が増加するMFPやPCの貢献が見込まれること、新製品の販売の前倒しを図ること、下期には家電の売価見直しの成果が貢献することなどを示した。

 「中長期的な事業の拡大に向けて、新規事業の早期具体化や事業変革の加速、ブランド事業を主軸とした事業構造の構築を進める」と述べた。

 7月に、シャープの親会社である鴻海科技集団(Foxconnグループ)会長の劉揚偉氏が来日し、経営幹部や社員と意見交換を行ったことについては、「テクノロジーを活用して事業を伸ばすことに期待していると言われた。シャープが培ってきたテクノロジーを中心に成長戦略をどう作るかといったことを、定期的に報告することになる。新規事業をどう伸ばしていくかということを含めて、計画を見直しているところだ」と語った。

 また、11月11日には、創業111周年を記念した「Sharp Technology Day」を開催する予定を明らかにしているが、「できるだけ多くの商材を具現化して発表したい」と述べた。

シャープ
2024年3月期 第1四半期 決算資料

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