シャープ 社長兼CEOの呉柏勲(Robert Wu)氏は、7月4日、社内イントラネットを通じて、従業員向けのCEOメッセージを発信した。同メッセージは、呉社長兼CEOが定期的に発信しているもので、今回は、「全社一丸となって“開源”を加速しましょう」と題し、株主総会での経営陣に対する厳しい意見を受けて決意した新たな覚悟や、今後の成長戦略、新組織体制などについて触れた。
CEOメッセージでは、まず、6月27日に開催した第129期定時株主総会に触れ、2022年度業績や2023年度方針のほか、新経営体制やストックオプション制度などの4つの議案に関して説明し、約1時間の審議を経て、すべての議案が可決したこと、株主総会終了後に開催した経営説明会では、各事業グループやイノベーショングループの責任者から、トランスフォーメーションの方向性について説明したことを報告した。
その上で、「質疑応答では、株主から、業績悪化の主要因である堺ディスプレイプロダクト(SDP)や株価低迷に対する非常に厳しい意見や、経営に関する心配の声などを多数もらい、それぞれに対して、私の考え方をひとつひとつ回答した」とし、「私自身、頂いた意見を真摯に受け止め、今後の経営にいかしていく考えである。また、出席した株主の多くが、世界初や日本初の商品を次々と生み出してきた、かつての強いシャープの復活を、心から願い、応援していることを、改めて強く実感した。このような期待にしっかりと応えるためにも、いまなすべきことは、開源節流を徹底し、黒字転換を実現することである」と決意を示し、「全社一丸となってがんばろう」と呼びかけた。
また、「2022年度大幅赤字となったSDPについては、回復基調にあるパネル価格の動向を注視し、収益重視の生産、販売活動をより一層徹底するとともに、投資を最小化しつつ、カテゴリーシフトを図るなど、赤字幅の縮小に取り組む。同時に、顧客ニーズや市況の先行きなどを慎重に見定め、今後の方針を具体化していく考えである」と述べた。
続いて、「再成長に向けて」として、7月からの新体制などについて説明した。「2022年度は、想定を大きく上回る環境変化に直面し、全社をあげて、コストダウンや効率化による利益改善を目指す『節流』に取り組んできたが、今後、業績を継続的に向上させていくためには、こうした取り組みをベースとしつつ、事業拡大による利益創出へと軸足を移していく『開源』が重要である。足元では、まず新製品投入時期の前倒しや、海外事業のさらなる拡大、高付加価値商材の販売強化など、全社一丸となって4象限経営を実践し、売上げの拡大に取り組む」とした。
また、「中長期的には、新規事業の早期具体化や、ゲームチェンジャーとなる新たな技術、製品の開発強化を推進し、事業のトランスフォーメーションを実現していきたい。これに向け、今回、新たな経営体制を構築した」と述べ、新組織について説明した。
業務執行体制では、呉社長兼CEOと副社長の沖津雅浩氏に加えて、7月1日付で副社長に昇格したCFOの陳信旭氏の3人が中心となり、事業拡大を牽引。沖津副社長はブランド事業を中心にサポートし、陳副社長はイノベーショングループを指揮するという。
また、新たな社外取締役として、胡立民氏と陳士駿氏が参画。新規事業の立上げや企業経営に関する豊富な経験、幅広い知識を生かし、「開源」の取り組みを中心に、さまざまな観点からアドバイスを受けるという。
さらに、組織体制の見直しを行ったことにも言及した。2023年度から、各BUに新規事業専門組織を設置するとともに、さまざまな革新デバイスを融合して、One SHARPによって新事業の創造を目指すDevice Business Committeeを新設。6月21日付で、ディスプレイ技術や半導体技術を応用し、新たなデバイスの開発や技術革新を実現し、商品事業の成長に寄与するPanel-Semicon研究所を新設したことに触れたほか、7月1日付で、イノベーショングループ傘下に、Innovation Incubation Committeeを設置し、同組織が中心となって、新たな事業への挑戦を加速することを示した。
また、情報発信にも力を入れ、ブランド力向上につなげていく考えも強調した。メッセージの最後に呉社長兼CEOは、「2023年度のキーワードは、『開源』である。社員全員がこれを胸に刻み、さらなる業績改善に向けて、全力で取り組んでいこう。そして、SHARPブランドを、世界で広く認知され、期待されるテクノロジーブランドへと大きく成長させていこう」と締めくくった。
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