新型スマホの投入は毎年じゃなくていい、もっと心躍るものが見たい

Andrew Lanxon (CNET News) 翻訳校正: 編集部2023年08月09日 07時30分

 Apple、サムスン、Motorolaをはじめ、多くのスマートフォンメーカーは毎年、新しいフラッグシップ機を発表する。しかし、これはやめるべき悪習だ。環境に負荷をかけるだけでなく、最近のスマートフォン業界が停滞し、退屈に感じられる大きな理由になっていると私は考えている。新機種の発表サイクルを2年、場合によっては3年程度に伸ばせば、スマートフォンは再び刺激的な存在となり、地球にも大きな恩恵をもたらせるだろう。その理由を説明する。

さまざまなスマートフォンを手に持つ様子
提供:Andrew Lanxon/CNET

 最近は、ほぼすべてのブランドが毎年新しいフラッグシップ機を発表する。Appleは9月に新型「iPhone」を、サムスンは1月か2月に「Galaxy S」シリーズの新機種を、Googleは10月に新しい「Pixel」をお披露目するというのが、いつものスケジュールだ。この業界は、まるで時計仕掛けのように進んでいく。そのため、5年前の機種から買い替える場合も、とにかく最新のテクノロジーを搭載した最高の1台が欲しい場合も、市場はいつも華やかな新製品であふれている。

 これは、もちろん収益のためだ。常に最新のモデルがほしくてたまらないという気分にさせ、人々が働いて稼いだ金がスマートフォンメーカーと携帯通信事業者に流れていく。

 このめまぐるしいリリースサイクルの最大の問題は、環境にかかる負荷だ。エレクトロニクス業界は環境汚染の大きな原因となっている。あらゆる電子機器のパーツに使われているレアアース鉱物の採掘から、工場や生産ライン、完成した製品の輸送まで、スマートフォンが環境に与えるダメージは極めて大きい。現在では、ほとんどの企業がスマートフォンにリサイクル素材を使用していると主張しているが、環境への影響を減らしたいなら、新製品を出す頻度を下げる方がはるかに効果的だ。

さまざまなスマートフォンを並べた様子
提供:Andrew Lanxon/CNET

 大切に使えば、スマートフォンは優に数年は持つ。Appleやサムスン、OnePlusといったメーカーは、自社のスマートフォンに最長5年間のサポートを提供している。つまり、2023年に買ったモデルは2028年までは安心して使えるわけだ。スマートフォンの発売頻度を減らせば、人々は同じ端末を長く使うようになる。これは埋立て処分される端末を減らし、毎年新品のスマートフォンを製造して出荷するために必要な資源を減らすことにつながる。

 しかし、筆者が感じているもう1つの切迫した問題は、近年のスマートフォンが退屈で驚きのない存在になってしまったことだ。どの年も、より大きな画面、より解像度の高いカメラ、より強力なプロセッサーの搭載がニュースになり、アップグレードを積み上げるために真のイノベーションがおろそかになっているように見える。サムスンの「Galaxy S23 Ultra」は確かに優秀なスマートフォンだが、前機種の「Galaxy S22 Ultra」との違いはほとんどない。「iPhone 14 Pro」と「iPhone 13 Pro」は、それほど大きく違うだろうか。筆者は折りたたみスマートフォンがこの業界に何かしらの刺激を与えてくれるのではないかと期待していたが、まだそうはなっていない。しかしMotorolaの折りたたみスマートフォン「Razr」シリーズは、世界のほとんどの地域では2022年モデルが発売されず、2023年に久しぶりに市場に帰ってきた。今回の最新モデルは、サムスンの「Galaxy Z Flip5」よりも一足早く、便利な大型カバーディスプレイを搭載し、話題をさらった。

Galaxy Z Fold5
Galaxy Z Fold5はGalaxy Z Fold4からそれほど大きくアップデートされていない
提供:Patrick Holland/CNET

 新製品のリリースサイクルが2、3年に伸びれば、新しい機能は長く使われるようになり、満を持して登場する新機種への期待感も高まる。アップグレードの価値は増し、多くの人が新機種を手に入れたいと考えるようになるだろう。筆者は先日、サムスンの新製品発表イベント「Unpacked」で「Galaxy Z Fold5」の発表を見た。「Galaxy Z Fold4」と比べれば小さなアップグレードだが、2019年に発売された初代モデルと比べれば、驚くほどの進化だ。OnePlusの場合、状況はさらに悪い。同社は2022年に「OnePlus 10 Pro」を発売し、そのわずか数カ月後に「OnePlus 10T」を発売した。リリース頻度がここまで高いと、新機種を買う理由は見いだせない。

 スマートフォンメーカーは、ゲーム機やカメラ業界と同じモデルを採用することもできる。ソニーは「PlayStation 4(PS4)」から「PlayStation 5(PS5)」の発売まで7年をかけた。キヤノンは2016年に発売した「EOS 5D Mark IV」に代わる機種として、2020年に「EOS R5」を発売した。PS5もEOS R5も、前モデルから大幅にアップグレードしており、ユーザーの使い方を大きく変え、アップグレードに必要な出費を納得させるものになっている。筆者はEOS Rを発売直後に数千ドル(数十万円)で買った。もし翌年に新モデルが出ると分かっていれば、そんなことはしなかっただろう。

Xbox
ゲーム機のライフサイクルは短くても数年だ

 テレビや自動車、ノートPCを毎年買い換える人もほとんどいない。多くの人は新しいテクノロジー(電気自動車、8K HDRテレビなど)がもたらす利益が明白になり、買い替えの機が熟すまで待つ。この種の製品は、アップグレードまで少なくとも5年間は使い続けられる傾向があるが、スマートフォンでも同じことができるはずだ。オランダに拠点を置くFairphoneは、この考え方で製品を開発している数少ないスマートフォンメーカーの1つだ。同社が2021年に発売した「Fairphone 4」は、現在も同社の最新機種であり、ちょっとした不具合ならドライバーを使って修理できる。問題は、販売されている地域が限られていることだが、米国では最近ようやく販売が開始された。

 フラッグシップ機のリリース間隔を2~3年に伸ばすことで、業界が環境に与える悪影響は減り、手をかけながら同じ端末を長く使うことで、新製品の発売は今よりもはるかに心躍るものになるだろう。あの頃の興奮が懐かしい。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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