「スマートフォンの作りに対する考え方を変えなければならない。現在の市場で見られる超薄型の設計を実現できなくなる可能性もある」、とBallester氏は話す。また、同氏によると、バッテリーの筐体がより多くのスペースを占有することになるため、スマートフォンメーカーは容量の少ないバッテリーの採用も余儀なくされるという。
言い換えると、ユーザーによるバッテリー交換が可能になると、スマートフォン本体が分厚くなり、バッテリー持続時間が短くなる可能性があるということだ。Ballester氏によると、それにもかかわらず、Fairphone 4は1回の充電で丸1日使用できるだけのバッテリー容量を提供するという。ただ、市場のフラッグシップスマートフォンと異なり、バッテリーが1日半~2日持続することはない、と同氏は付け加えている。
交換可能なバッテリーを採用することの明白な利点は、既存のバッテリーで問題が発生して丸1日持続しなくなった場合に、新しいバッテリーと交換できることだ。ただし、最初にスマートフォンを購入してから数年間、全く同じバッテリーが提供され続けることが条件となる。
予備のバッテリーも時間の経過とともに劣化するため、保管して在庫にしておくこともできない。多くの場合、期待できる販売量が少なすぎるため、サプライヤーに交換用バッテリーの製造を継続するよう説得するのは難しいかもしれない、とBallester氏は指摘する。ただし、交換可能なバッテリーがスマートフォンメーカーにとって当たり前になれば、バッテリーの入手ははるかに容易になるだろうと考えている。
スマートフォンのライフサイクルのもう一端に目を向けると、交換可能なバッテリーを採用することは、リサイクルのプロセスにおいて非常に有益になる。バッテリーの最も貴重な材料はコバルトであり、コバルトは再利用できるが、バッテリーがスマートフォンに組み込まれているため、リサイクルされないことが多い。つまり、スマートフォンは本体全体として金属がリサイクルされ、コバルトはその過程で失われてしまう。
しかし、バッテリーが交換式になれば、スマートフォンから簡単に取り出して個別にリサイクルできる。現時点では、そうしたことは十分に行われていない、とBallester氏は指摘する。
「コバルトのリサイクル業者は、リサイクルで十分な収益を得られるだけのコバルトを確保するのに苦労しているので、回収されるバッテリーの量を増やす必要がある」(同氏)
同氏は、交換式バッテリーを搭載したスマートフォンが増えることで、コバルトのリサイクル量も増加することを期待している。同様に、バッテリー技術が進化し続ければ、交換式バッテリーと固定バッテリーの容量の差について議論する必要もなくなるだろう、と同氏は考えている。
交換式バッテリーを備えたデバイスについて、今回初めて考えるようになったかもしれないスマートフォンメーカーにとって、その過程でいくつかの妥協が必要になる可能性があることは明白だ。だが業界全体の取り組みにより、Fairphoneのような企業がすでに正面から取り組んでいるそれらの難題を乗り越える大きな機会が生まれている。
そのおかげで、次世代のスマートフォンはより長く使用されるようになり、その過程で地球への負担も軽減されるかもしれない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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