パナソニックのAI人材を育て、増やす取り組み--アカデミアと連携、現場でAI活用も

 パナソニック ホールディングスは、「パナソニック グループのAI技術戦略」として、これまでのAI活用拡大へ向けたパナソニックの取り組みや、注力するAI技術分野、今後の展望といった企業戦略に関する説明会を開催した。

 説明会には、パナソニック テクノロジー本部 デジタル・AI技術センター所長の九津見洋氏、立命館大学 情報理工学部 教授兼パナソニック テクノロジー本部 デジタル・AI技術センター 客員総括主幹技師の谷口忠大氏が登壇。本記事では、説明会にて紹介された、パナソニックグループとしてのAIの捉え方や、取り組み、活用事例について紹介していく。

パナソニックグループが活用するAIの特徴とは

 AIといえば、昨今はChatGPTなどに代表されるように、チャットによる自然な会話が利用できたり、画像生成に利用するイメージが強いが、パナソニックが研究、活用するAIは、企業・メーカーに向け、事業をサポートする、B2Bの領域にも精通している。一例として、工場といった現場で、ロボットが安全に移動できる経路を算出する仕組みなどにもAIが活用されている。

 九津見氏は、「パナソニックでは、AIの研究開発をやみくもにやるというよりは、実際の事業で役に立たないといけない。AIを含めた技術は、事業で活躍するための道具である」と話しており、多様な顧客の暮らしにつながるために、2014年からユーザーの情報を「Panasonic Digital Platform」へと集約。暮らしのデータを集めることで、横断的な価値の創出に努めている。

パナソニック テクノロジー本部 デジタル・AI技術センター所長 九津見洋氏
パナソニック テクノロジー本部 デジタル・AI技術センター所長 九津見洋氏

 より多くの顧客にAIを活用してもらうための2つのポイントとして、パナソニックは「Scalable AI」「Responsible AI」を掲げている。

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 Scalable AIは、あらゆる顧客に素早くAIを活用したサービスを導入してもらうことをテーマとし、少ないデータで導入できるAIを実装したり、わずかなデータでも導入可能なAIサービスを展開。実際、パナソニックでは、試験的に1日現場にAIを導入し、現場の可視化、導入効果の確認ができる「1日導入キット」のようなサービスも提供している。多くの企業とつながりがあるパナソニックだからこそ作れる基盤データにより、事業現場に適した実装ができるのが魅力。九津見氏は「基盤モデルは、すべての現場にそのままフィットするわけではないため、転移学習のように現場それぞれのデータを収集し、スピーディーに適したAIを作ることに価値を出していきたい」とコメントしている。

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 また、AIのモデルを多様なフィジカル空間に簡単に実装できるのもポイントとのこと。製造現場のロボットにAIを実装する際には、動きや周りの環境をデータとして与え、プログラミングする、もしくは膨大な学習を行う必要があったが、世界モデルを活用することで、ロボットが置かれている物理環境を自動的に獲得し、少ない試行回数で環境適応能力の高いロボティックスが実現できる。

 一方、Responsible AIは、顧客の信頼に応えるという意味の指標。技術的な視点だけでなく、人間中心のAI活動を実現するためのAI倫理のガバナンスの仕組みやプロセス、品質保証の取り組みを強化している。

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 具体的には、2019年にグループ横断のAI倫理委員会を設置し、2022年にAIチェックシステムを運用開始。パナソニックという、グループ内に多くの会社、事業を持つ特性を活かし、導入からフィードバックまでの流れを多方面から得られるのも特徴といえる。

「AI人材」の育成にも積極的に取り組む

 AIの研究開発だけでなく、AIを活用するうえで、事業でAIを使いこなせる人を増やすことに注力しているのも、パナソニックの特徴。社員内で保有技術レベルを登録する仕組みから、AIをある程度理解したうえで、自分ひとりである程度活用できるレベルに達した人材を「AI人材」とし、当初は1000人越えを目標としていたところ、2023年時点では1500人を超えるAI人材がいる。ここからは、AI人材を増やすことに加え、自然言語系の技術者など、練度の高い人材を育成することを目標としているとのことだ。

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 パナソニック内でのAI人材の育成、AIの推進には、説明会に登壇した谷口氏が深く関わっている。谷口氏は、立命館大学で情報理工学部の教授を勤めながら、「クロスアポイントメント(研究者等が、大学や公的研究機関、民間企業等の間で、それぞれと雇用契約関係を結び、各機関の責任の下で業務を行うことが可能となる仕組み)」にてパナソニックにも籍を置き、パナソニック全社でのAI推進や、AI研究チームの育成を担う。組織内にAIを「わかっている」人材、研究し「わかっていく」人材を作ることで、総力を底上げしていくことに尽力している。パナソニックにとっても、アカデミアとの連携が取りやすくなるなど、いわゆる「Win-Win」の関係とのことだ。

立命館大学 情報理工学部 教授兼パナソニック テクノロジー本部 デジタル・AI技術センター 客員総括主幹技師 谷口忠大氏
立命館大学 情報理工学部 教授兼パナソニック テクノロジー本部 デジタル・AI技術センター 客員総括主幹技師 谷口忠大氏

 パナソニック、立命館大学共同での成果の一例としては、両者にNAIST(奈良先端科学技術大学院大学)を加えた連合チームで、ワールドロボットサミットで優勝を飾っている。

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 また、先端AI研究開発をけん引する「REAL-AI」というチームをパナソニック全社横断で組織しており、トップカンファレンスへの論文採択や、先端技術の迅速な事業展開を目指す。九津見氏も「パナソニックグループ内の横のつながりは強い」と強調しており、システム開発などを手掛ける「パナソニック コネクト」といった傘下の会社との連携も幅広く行っているようだ。

 そのほか、谷口氏はパナソニックでの博士学生の有給インターンシップ制度の構築や、事業会社と連携して対話型ロボットの共同研究を行うなど、パナソニックを通じてAIの発展をさまざまな角度から試みている。

パナソニックが目指す今後のAI活用

 谷口氏は、今後の展望について「Reaching the Top,Bridging the Gap」と題し、世界トップレベルの研究を続けるのと同時に、研究レベルと現場レベルのギャップを橋渡しし、最新のAI技術を使えるべき状況とともに作っていきたいとしている。

 いかなる分野においても言えることだが、最新、最先端の技術研究は、リアルタイムでは、我々のような一般ユーザーの目に触れないことが多い。特に今回多く紹介した、AIの現場活用のような分野は、実際に現地にいない限りは知らないまま過ごすことが多いが、イノベーションは着実に起きているといえるだろう。

 周知の通り、パナソニックはB2B、B2Cのどちらにおいても、多くの協業パートナーや顧客がいる企業。モノづくりにおける現場でのAI活用に加え、実際に暮らしをサポートするAI技術の開発など、双方の発展に期待していきたい。

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