Googleの人工知能(AI)技術を統合した実験的な検索エンジン「Search Generative Experience(SGE)」は、「ChatGPT」のようにオンライン検索を再構築するものだ。筆者もここ数週間利用してみたが、これはまさしく未来だ。
5月の年次開発者会議「Google I/O」で発表された、生成AIを導入するこの新しい検索エンジンは、1990年代後半からGoogleのコアな検索体験を定義してきた古い方法を捨て去っている。青色のリンクのリストを並べてクリックさせる代わりに、Googleは生成AIエンジンを用いて、ChatGPTのように複数の情報源から自動的に情報をまとめ上げる。これはユーザーがキーワードを入力し、複数のサイトを開いて情報を集め、自分の頭の中で答えを組み立てる従来のGoogle検索体験を一変させるものだ。新しいAI主導の検索エンジンは、情報をまとめる作業をユーザーに代わって行う。
またこれは、Googleを情報収集ビジネスから情報編集ビジネスへ移行させるものだ。むろんAIの回答を編集する人間がGoogleにいるわけではない。そうではなく、特定の方法で情報を捉え、特定の方法で要約を生成するAIエンジンをGoogleは開発したわけだ。これは、Googleがコンテンツパブリッシャーと新たな関係性を築くことを意味し、それによって、人々がオンラインで検索する情報をどのような形で目にするかを、よりコントロールすることが可能となる。
GoogleのAI検索では、ChatGPTと同じように追加の質問ができる。だがChatGPTと異なり、ありがたいことに情報源へのリンクがすぐ横に一覧表示されるため、その一覧から情報を検証することが可能だ。AIはミスをして「ハルシネーション」(幻覚:AIが事実と異なる情報を勝手に作り出してしまう現象)を引き起こし、間違った回答や誤解を招く回答を生成することがあるため、これは便利な機能といえる。生成AIを用いた検索エンジンがミスを犯す理由は、人間が脳内で行っているように、前後のより広い文脈を考慮して情報を解釈していないからだ。AIは、次に来る最も適切な単語を予測しているにすぎない。
そのため、回答を二重にチェックして情報に誤りがないか確認する手間をとるかどうかは、完全にユーザー次第ということになる。回答が正しそうに思えたら、それ以上リンクをクリックしない可能性もあるだろう。
GoogleがSGEを広く一般公開せず、正式なリリース日も明らかにしていない理由は、おそらくここにある。試験運用は12月までの予定で、米国では登録制で早期アクセスを利用できる。
ここからは、GoogleのAI検索を試した筆者の体験をお話ししよう。
カプコンが誇る格闘ゲームシリーズの最新作「STREET FIGHTER 6」(ストリートファイター6)が6月2日に発売され、レビューで絶賛されている。このゲームに関心を持っている筆者は、一部のタイプのコントローラーで大会のルールが変更されたことを知っていたが、その内容をもう一度確かめたいと思った。そこで、検索フィールドに「Capcom Cup stickless」(カプコン 大会 レバーレス)と入力した。筆者が自然な文章を打ち込まなかった理由は、これまで20年間Google検索を利用してきたやり方とは違うからだ。その代わりに、キーワードを入力するだけで関連性の高い情報が得られることを期待した。それでも、GoogleのAIはこの大会の「レバーレス」コントローラーに関するルール変更の概要を、いくつかの情報源とともに表示してくれた。
筆者が答えを得られたため、(情報源であるゲーム専門サイトの)GameSpotは、得られたはずのクリックを1つ失ったことになる。
だが、筆者はさらに質問をした。筆者は従来型のレバーがない格闘ゲーム用コントローラー「Hit Box」を所有している。Hit Boxでは、キーボードで「W」「A」「S」「D」キーを使うのと同じように、ボタンを使って操作できる。筆者は200ドル(約2万8000円)で購入したこのコントローラーの使用が大会で許可されるのか、されないとすれば対策はあるのかを知りたかった。そこで、質問してみたわけだ。
Googleの生成AIは、2023年の大会でHit Boxは許可されると回答したが、その理由は記されていなかった。情報源(ここではDashFight)にアクセスしなければ、ファームウェアのアップデートによってHit Boxがルールに準拠するようになったことが分からなかった。Googleが提示してくれた答えは正しかったが、十分満足のいくものではなかった。もちろん、このAIは初期段階にあり、Googleがアップデートを提供するたびに回答の質は向上していくだろう。
また「ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム」に関してもGoogleに質問を投げかけてみた。多くの人と同様に、筆者も分かりにくいパズル部屋「ピンボール」の祠でつまってしまった。Googleの生成系AIは祠の攻略法をステップバイステップで解説してくれたが、画像やGIFの類はなかった。それがあればもっと理解しやすかったのだが。文章を生成するAIに限界を感じるところだ。こうした例では、多くのサイトが画像を記事に載せているため、サイドバーに情報源が表示されるのは役に立った。
画像を取得されるサイトにとっては残念なことだろうが、おそらく将来的には、GoogleのAIがそういった画像を検索結果に直接取り込む可能性がある。しかし、それはGoogleのAI検索を使用することで生じる懸念を示している。明らかに他のサイトのコンテンツを真似しているのであり、クリックしてそのページを閲覧するように勧めているとしても強制するわけではない。多くのサイトは、流入するトラフィックのボリュームに基づいて広告を販売している。トラフィックが減り始めたら、広告主は別の場所に資金を投じようと考えるかもしれない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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