アップル「Vision Pro」ハンズオン--他のヘッドセットを圧倒する操作性と映像美 - (page 2)

Scott Stein (CNET News) 翻訳校正: 編集部2023年06月08日 07時30分

シネマモードの衝撃

 一番衝撃を受けたのは映画関連のデモだった。筆者が観たのは映画「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」の3D映像だ。Vision Proにはさまざまな視聴モードがあり、そのひとつにシネマモードがある。Vision Proは「Magic Leap 2」のARと同じように、ユーザーがコンテンツを観ている時は周囲を暗くすることができる。シネマモードで見る「アバター」の映像は、鳥肌が立つほどの鮮やかさだった。まるで映画館の体験だ。他社のVRヘッドセットで同じような感覚を得たことはない。

映画「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」
Vision Proで観る映画「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」は素晴らしかった
提供:20th Century Studios

 「Apple TV+」の拡張機能として登場する180度の高解像度録画機能「Immersive Video」のデモも見ることができた。以前に見たコンセプト映像と似ていたが、解像度と映像品質は圧巻だった。Vision Proの今後の展開をほのめかすものとして、歌手のAlicia Keysのミュージックビデオ、Apple TVのスポーツの試合、ドキュメンタリー映像などのデモ映像も用意されていた。個人的には、180度の高解像度映像は大画面で見る映画コンテンツほどの迫力はなかったが、スポーツの試合の映像は、いずれNFLの試合をバーチャル環境で臨場感いっぱいに楽しめる日が来ることを予感させるものだった。この分野の進化は目覚ましい。

 問題は、映画館を再現できるヘッドセットに3499ドル(約48万8000円)を払う価値があるかだ。個人的にはノーだが、映像コンテンツがVision Proの大きな強みであることは間違いない。Vision Proのディスプレイは驚くほど解像度が高く、驚くほど明るかった。

本物さながらのアバター(ペルソナ)

 Vision Proは、ユーザーの顔をスキャンして3Dのアバター「ペルソナ」を生成する。このペルソナは、「FaceTime」のチャットで使用できるほか、Vision Proの丸みを帯びたOLEDディスプレイの外側に表示され、ユーザーがコンテンツに完全に没入しているかどうかを周囲の人が知る材料になる。自分のペルソナが外側のディスプレイにどう表示されているかは確認できなかったが、ペルソナ姿の人とFaceTimeで話をした限りでは、違和感はなかった。この点でもVision Proは驚くほど良かった。

 Appleのペルソナは、スマートフォンでスキャンしたデータから作られるMetaのアバターよりも見栄えがいいが、輪郭はややぼんやりしており、夢の世界にいるようだ。筆者がチャットしたペルソナ姿の女性は、全画面表示されるのではなく、ウィンドウ内に表示された。

 ユーザーの顔をスキャンして作られるペルソナは、どの程度の感情を表現できるのだろう。Vision Proには、Quest Proと同じように顎の動きをスキャンする機能がある。チャット相手のペルソナは気さくで、笑顔を浮かべていた。では、筆者が個人的に知っている相手、例えば母親だったらどうなのだろう。少なくともデモで見たペルソナに関して言えば、スキャンであることを忘れてしまうほど自然だった。

 Appleのホワイトボードアプリ「フリーボード」のデモも少し体験できた。ウィンドウ内に表示されたペルソナ姿の人物と話をしながら、別のウィンドウで共同作業をする。フリーボードから飛び出す3Dのオブジェクトは、かなりリアルだった。

恐竜との遭遇

 最後のデモは「Encounter Dinosaurs」というアプリの体験だった。数年前に参加した初期のVRアプリのデモでも、同じような体験をしたことがある。部屋の奥の壁に3Dのウィンドウが開き、そこから恐竜が現れるという、没入感と刺激にあふれたデモだ。カルノタウロスに似た巨大生物が、窓から悠然と筆者の空間に入り込んできた。

 一連のデモは着席した状態で行われたが、このデモだけは立ち上がって、少し歩き回ることができた。その程度では大した体験はできないと思うかもしれないが、前述したように映像の質が高い上に、部屋に映し出されるパススルー映像の見え方が素晴らしいので、恐竜が私の手にかみつこうとした時は、かなりリアルに感じられた。部屋の中をひらひらと舞い、時折、私の指にとまろうとする蝶も現実さながらだった。

 楽しいデモだった。しかし、それ以上に感動したのはヘッドセットを外した時だ。自分の目で見た現実世界は、Vision Proが映し出したパススルー映像と比べて、それほどシャープには感じられなかった。両者の差は想像していたよりも小さく、それがAppleの生み出すMRをうまく機能させている。

 バッテリーパックにも言及しておきたい。Vision Proを動かすためには、他のヘッドセットでは一般的な内蔵バッテリーではなく、有線接続の外部バッテリーが必要だ。つまり、Vision Proを動き回りながら使うためには必ずバッテリーパックを身に着けなければならない。今回のデモがほぼ座った状態で行われたのはそのせいだろう。

 Vision Proが実際に発売される2024年はまだ先だ。価格を考えれば、ほとんどの人は手が届かない。このヘッドセットを日常でどれだけ活用できるのかも、現時点では未知数だ。しかしディスプレイとインターフェースの出来は、筆者が想像していたレベルをはるかに超えていた。Appleが現在のモデルを足がかりに、Vision ProのMR機能をさらに広げていくことができれば、新たな可能性の扉が開かれるだろう。それが何かはまだ誰にも分からない。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]