アップルのMRヘッドセットは登場するか--WWDCで予想される発表内容

Scott Stein (CNET News) 翻訳校正: 湯本牧子 高森郁哉 (ガリレオ)2023年05月31日 13時43分

 Appleの次の大きな製品は、価格が3000ドル(約42万円)で、顔に装着し、バッテリーパックに接続する必要があるとみられる。予想されるこの仮想現実(VR)ヘッドセットがどのようなものになるにせよ、その機能や想定されるユーザーは現時点で不明だ。Appleが米国時間6月5日から開催する年次開発者会議「Worldwide Developers Conference」(WWDC)で発表する可能性が高く、「Reality Pro」という名称になると予想されているこのヘッドセットは、同社にとってここ10年ほどで最大の新製品になるだろう。また、Appleがこれまでに作ってきたどの製品ともまったく異なるものになりそうだ。

Appleのロゴと瞳のイメージ
提供:James Martin/CNET

 VRヘッドセットは以前から一般消費者の間で使われているテクノロジーであり、自分の家族や知り合いがすでに持っているかもしれない。ゲームやフィットネス、クリエイティブな共同作業だけでなく、没入型シアターにも使われている。それでも、VRや拡張現実(AR)はこれまでのところ異質のテクノロジーであり、多くの人が毎日使っているスマートフォンやタブレット、ノートPCと深く連携しているわけではない。

 Appleはこの状況を変えるかもしれない。そしてもちろん、「メタバース」という言葉が一度でも発せられることはないはずだ。メタバースは、ARとVRの未来を思い描くMeta Platformsのバズワードになった。Appleはそれに相当する独自の名称(造語の可能性もある)でアピールするだろう。

あらゆるものに接続?

 Metaの「Quest 2」をスマートフォンとペアリングすると、テキストメッセージや通知を受け取ることができる。「Mac」に接続すれば、「Immersed」というアプリを使って、机の周りに追加のディスプレイを投影できる。しかし、VRやARは、私が使うデバイスと深く連携していると感じることはあまりない。「iPhone」と連携するスマートウォッチや、「iPad」やMacと連携する「AirPods」のように、シームレスではない。

 Appleは、このヘッドセットをすべてのデバイスとの架け橋にする必要があるし、少なくとも良いスタートを切るべきだ。複数の報道によると、このヘッドセットは4K画質の内蔵ディスプレイでiPadアプリを実行するといい、共通のアプリエコシステムが示唆されている。また、「Apple Watch」が主要な周辺機器になり、フィットネスのトラッキングや、振動するモーションコントロールアクセサリーの役割を担う可能性もある。

 VRは自己完結型の体験だが、Appleのヘッドセットが大きく傾倒するはずの複合現実(MR)は、パススルーカメラを使ってバーチャルなオブジェクトを現実世界の映像に溶け込ませる。Appleの場合、同社製デバイスが空間的にリンクされたアクセサリーとして機能し、キーボードやタッチスクリーンを入力用に使ったり、物理的なディスプレイに連なるバーチャルな拡張ディスプレイを表示させたりすることが可能になるかもしれない。

 予想されるApple製ヘッドセットは、Quest 2や「Quest Pro」のように、単独で動作する自己完結型デバイスになるとみられる。しかし、その相互接続性や、Appleのシームレスなハンドオフ(引き継ぎ)で結びつけられたエコシステムにおける位置づけは、大きなチャンスであり、大きな疑問でもある。

 ただしAppleは、「iOS」のエコシステムで長年にわたりARをサポートしてきたので、AR分野で大きな先行者利益を得ている。 iPhoneと「iPad Pro」はすでに深度測定可能なLiDARセンサーを搭載し、室内をマッピングできるが、この仕組みはAppleのヘッドセットにも利用できるはずだ。Appleは、新しいインターフェースを通じて、他のデバイス向けの既存ARツールをより使いやすく、より見やすくすることを重視する可能性もある。

 AppleのAR部門責任者であるMike Rockwell氏は、この新しいヘッドセットの開発を率いているとみられる人物で、2020年の時点でARに関して次のように語っていた。「ARは、現存するデバイスや、将来存在するかもしれないデバイスにまたがり、人々の生活に役立つ大きな可能性を秘めている。われわれにとって、それを実現する最善の方法は、当社製デバイスのエコシステムを活用し、人々が時間と労力を投じるのにふさわしい健全かつ有益な場所にすることだ」

Quest Proを装着した人
提供:Meta

操作方法

 筆者はAppleのヘッドセットディスプレイ(片目4Kの解像度とマイクロ有機ELディスプレイが実現する可能性があり、非常に期待できる)にはあまり興味がなく、それよりも手を使う操作を同社がどう解決するかに注目している。

 VRとARのインターフェースは、まさに開発途中の段階だ。VRはこれまで、入力の多くをゲームコントローラーで行う傾向があったし、オプションのハンドトラッキングも(着実に進歩しているとはいえ)まだ完璧ではない。

 Appleは、Reality Proにコントローラーを同梱しないと予想されている。代わりにアイトラッキングとハンドトラッキングの両方を使い、より正確でおそらくは効率的なスタイルのインターフェースを生み出す可能性がある。これにより、意図した動きがより速くなると実感できるかもしれない。アイトラッキングに対応する一部のヘッドセットは、すでにこの方法で動作するようになっており、例えば「PlayStation VR2」はメニューの操作にアイトラッキングを使うゲームもサポートしている。

 ここで大きな問題となるのがアクセシビリティーだ。Appleはアクセシビリティーに十分配慮したデザインにすることが多い。一方でVR/ARヘッドセットは、目の動きや物理的な手の動きを利用したものが多く、誰にとっても使いやすいとは限らない。音声制御がオプションで提供される可能性もあるし、Apple Watchと連携してジェスチャーの精度を高めたタッチ操作が提供されるかもしれない。Appleはすでにアクセシビリティーを考慮してApple Watchにジェスチャーで操作する機能を追加しているので、連携は可能だ。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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