前後編で親子ワーケーションと笠岡市でのバケーションについて紹介してきたが、今回のいくじもケーションを企画したのが、笠岡市役所に勤める片山詩央里さん。日頃は支払処理や契約といった役所業務を担当しているそうだが、笠岡市の魅力をさまざまな形で発信するシティプロモーションも担当している。
もともと岡山県はワーケーションに力を入れており、過去には笠岡市でも受け入れたことがあったがそうだが、そこで参加者から挙がった課題が「子どもの預け先がないので、家族でのワーケーションは難しい」ということ。そこで、ただ大人にワーケーションをしてもらうだけでなく、子どもたちにとっても笠岡が“第二の故郷”になるような経験をさせてあげられないかと考えたという。
いくじもケーションでは、わが家も含めて4家族が時期をずらして参加したが、どの家族からもおおむね好評で、企画者として笠岡市の魅力を伝えることに手応えを感じることができたと片山氏は話す。
一方で、子ども主体で自由に遊べる富岡保育園のような、受け入れに向いている園はレアケースなため、今後本格的に実施するには、選択肢を増やすために新たな園の開拓が必要になると話す。また、親子ワーケーションに適したツアーを企画・運営できる旅行会社もいままさに募集中だという。
最後に、ワーケーション中に笠岡市内や白石島で出会った、テクノロジー活用事例やユニークな事業承継について紹介したい。
笠岡市ではコロナ禍である2021年に、自治体として初めて、ふるさと納税品人気返礼品であるシャインマスカットの魅力をリアルとVRの両面で伝えるバーチャル交流イベントを開催した。この先進的な取り組みに協力したのが、Y&G.ディストリビューターの運営するワコーファームだ。
ワコーファームでは交流イベントに使われたシャインマスカットに加えて、湿度やCO2濃度をセンサーでコントロールした植物工場を10年以上前から運営している。現在はレタスやサラダ菜、バジルなどを育てており、地元のスーパーや飲食店、産直市場などに卸しているという。また、このレタスで作った珍しいジェラートなども販売するなど、幅広い事業を手がけている。
このほか、白石島海水浴場に面した旅館「華大樹」は、もともと老舗旅館だった「中西屋旅館」を、異業種である青果品仲卸の田口青果(岡山市)が1年ほど前に承継した旅館だ。スタッフの高齢化にともない旅館を手放すことを決めた前オーナーの意思を、20代後半のルーク支配人が引き継いで経営。砂浜での婚活パーティーや昭和レトロ展など、さまざまな企画を積極的に展開し、島外から新たな宿泊者を呼び込んでいるという。
なお、笠岡市では移住促進策にも注力している。県内初の「VR空き家内覧」を2021年に開始し、VRクラウド_スペースリーを使って、空き家の外観や近隣の景観、部屋の中を遠隔で確認できるようにしたほか、Zoomなどを使ったオンライン移住相談も受け付けている。
こうした取り組みの結果、2022年には「第1回日経 自治体DXアワード」の「行政業務/サービス変革部門 」で部門賞を受賞。また直近では、自治体広報DXアワードを受賞しているという。地方自治体のDX事例としても注目を集める、笠岡市の今後が楽しみだ。
(取材協力:岡山県笠岡市)
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」