AIがもたらす可能性のある影響に対処する包括的な規制の策定には、何年もかかるだろう。しかし、今すぐに適用できる、そして適用すべき簡単なルールもいくつかある。これらは、Musk氏が支持する公開書簡に署名した約2万8000人が求めていることだ。
まず、規制によって、AI開発者側の透明性を強化する必要がある。例えば、企業が求人の応募や賃貸の申し込みの審査にAIアルゴリズムを使用する場合、AIがいつ使用されているかについて、情報を開示することが義務付けるといった具合だ。カリフォルニア州はすでに前者の問題に取り組んでおり、AIを活用したアルゴリズムが企業の代わりに意思決定を行った場合、その事実を人々に通知することを企業に義務付ける法案が提出されている。
また、ChatGPTの開発元であるOpenAIのような企業が、チャットボットの訓練に使用するデータを研究者に提供することも必要になる。AIの時代には、著作権侵害の申し立ても頻発すると思われる(GPTなどのチャットボットが回答のベースにした記事や、画像生成AIが入力に使用する写真について、どのように対価を支払えばいいだろうか)。AIシステムの訓練に使用されるデータについて、より多くの情報が開示されるようになれば、そうした論争も分かりやすくなるだろう。
おそらく、最も重要なのは、AIに自分がAIであることを宣言させることではないだろうか。
AIに関する大きな懸念の1つは、説得力を持って話す能力の高さだ。これは、悪人に利用されると危険な能力である。2016年の米大統領選の前にロシアは偽のソーシャルメディアアカウントを利用して、移民や人種間の緊張の高まりなど、論争の的となる問題について米国民の分断をあおろうとした。高度なAIを活用すれば、民衆をたきつけるそうした企ては、より効果的になり、より発見しにくくなるだろう。
「Instagram」は、インフルエンサーに対し、報酬を受け取っている投稿には広告であることがはっきり分かるハッシュタグを付けることを義務付けている。それと同様に、「Facebook」やTwitterでの長文の投稿も、AIであることを宣言すべきだ。ディープフェイク動画も、AIによって作成されたことを認識できるようタグ付けされるべきだ。
ニューヨークの民主党下院議員Yvette Clarke氏は、5月に提出した法案の中で、そうした対策を提案した。しかし、これは、共和党全国委員会がAI画像を使って作成した反Biden大統領の広告を公開したことへの対抗措置だった。2024年の大統領選挙が近づくにつれて、AIに関する根拠のない主張は増えそうだ。
AIは、気候変動や巨大テクノロジー企業のような文化戦争のテーマにはまだなっていない。しかし、そうなるのは時間の問題だ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」