求められるAIへの規制--放置すれば手遅れになる可能性も - (page 2)

Daniel Van Boom (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2023年05月25日 07時30分

悪しき先例

 AIが無秩序に拡散すれば、災いを招いてしまう恐れがある。しかし、米国の議員たちが高い能力を示してきたことが1つあるとすれば、それは政治的利益のために災いを招くことだ。これは、恐怖をあおることによって行われることが多い。Carlson氏がしたように、民主主義を終わらせる陰謀としてAIを位置付けることは、議員たちが行いうる多くのことの1つだ。人々を激怒させるような論点が考え出されたら、怒りを鎮めるのは難しいかもしれない。

 強烈な党派心の例は、身近にいくらでもある。筆者が本記事を執筆している今も、米国議会は債務上限引き上げをめぐって、我慢比べをしている。共和党の指導者たちは、グリーンエネルギー奨励策の一部廃止、Biden大統領が表明した学生ローン免除計画の破棄、社会保障支出の削減にホワイトハウスが同意しない限り、政府による借り入れを認めないとしている。

 これは、政治のせいで、本来単純なプロセスであるべきものが台無しになってしまった例だ。債務上限の引き上げは通常、行政上の慣習的な政策だが、ここ何十年かは政治的な駆け引きの道具となっている。だが、それには現実的なリスクも伴う。どちらの側も譲歩せず、上限が引き上げられなかった場合、多くの人がメディケア(高齢者と障害者向けの米国の公的医療保険制度)を利用できなくなったり、軍に給料が支払われなくなったりするだけでなく、米国が債務不履行に陥れば、世界市場も混乱に陥るだろう。

 先ほども述べたが、これは本来ならAIを規制するよりもはるかに簡単なことだ。だが、これは、極めて明確な目標であっても、政治によって台無しになってしまうことがあるということを示している。

 気候変動と、それに適切に対処することに執拗に抵抗する世界各国の政府の態度は、おそらく、文化戦争が行動を遅らせている最たる例だろう。気候変動はこの世の終わりを招くと主張する陣営と、気候変動問題は誇張されている、または実際には存在しないと主張する陣営があれば、妥協は容易ではない。AIについても同じように見解が分かれた場合、規制の策定は不可能になるか、長い時間がかかるだろう。それでは、遅すぎる。

 何らかの対策を講じるべきだと超党派で意見が一致している問題においても、民主党と共和党は反対の方向に走りがちだ。巨大テクノロジー企業は規制すべきである、ということについては事実上全員が同意している。民主党が問題視しているのは、巨額の利益を上げるテクノロジー企業がデータを十分に保護していないことや、小規模な競合他社を苦しめていることだ。共和党は検閲を非難し、シリコンバレーのエリートたちが言論の自由を侵していると主張している。巨大テクノロジー企業を取り締まる大規模な法案が可決されたことは一度もない。

 両党が、対策の必要性については合意しているにもかかわらず、異なる解決策を提案した場合、AIの規制も同じように行き詰まってしまう可能性がある。

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