「Meta Quest 2」は、仮想現実(VR)ゲーム用一体型ヘッドセットの主流デバイスとして成功を収めた。その後、より多くのことを野心的に目指したMetaが、疑問の余地があるメタバース戦略を中心に据えて開発したのが1500ドル(日本では22万6800円)のヘッドセット「Meta Quest Pro」だ。Meta Quest Pro(すでに発売時の価格から500ドル《日本では6万7300円》値下げして販売されている)は、プロフェッショナル向けのデバイスという位置づけだが、ターゲットを誤っているように感じた。同デバイスは、まだ実現していない、そして実現するかも分からないメタバースでの未来の仕事を用途に開発されている。
Meta Quest Proの登場から約6カ月の間に、「PlayStation VR2(PS VR2)」が新たな競合ヘッドセットとして台頭した。PS VR2はQuest Proと大きく異なるものの、同様に優れた映像技術と視線追跡機能を備えている。「PlayStation 5(PS5)」に接続して使用するPS VR2は、仕事用のデバイスになるという野望など全く抱いていない。その用途は、PS5が設置された部屋でとにかくゲームをプレイすることだけだ。その一方で、Appleもあと何カ月もしないうちに独自の複合現実(MR)ヘッドセットを発表すると予想されている。
不利な要素はほかにもある。経済は悪化の一途をたどっており、Metaはこの数カ月で大規模な人員削減を実施している。単体で多種多様な用途に対応できる驚異的なデバイスでも開発されない限り、人々は1000ドル(約13万3000円)もかけてVRヘッドセットを購入したいとは思わないだろう。MetaはQuestプラットフォームで多種多様な用途に対応しようと試みているものの、その用途として最適なのはやはりゲームだ。
ただし、未来につながる道筋はある。VRヘッドセットは素晴らしいワークアウトデバイスになり得る。VRで人々と交流することは、忘れ得ぬ体験になったり、ユーザーを新たな世界へと導いたり、有意義なものになったりする可能性もある。すでに提供されているものとして3Dアートツールやシミュレーションツールがあるが、これらはVRの用途を信じられないほどプロフェッショナルなレベルにまで押し上げている。複数のコンピューターの画面を視界に表示させ、VRヘッドセットを魔法のデスクトップとして使用することも可能だが、これを有用と感じるかどうかは人によって大きく異なるかもしれない。
視線追跡と表情追跡が可能なMeta Quest Proは、驚くほど高解像度のディスプレイを搭載しており、未来の小さなメガネ型デバイスへとつながる進化の過程にあるように見える。さらに、ソフトウェア、そしてコンピューターやスマートフォンとの接続機能によって、それは今後はるかに洗練されたものなるだろう。MetaがQuest Proで行ったことは、理論的には間違っていないものの、登場するのがあまりにも早すぎた。
とにかく、Meta Quest Proの購入はお勧めできない。「Meta Quest 3」が2023年中に発表される見通しであり、こちらに搭載されるプロセッサーはQuest Proのものよりも高性能で、かつQuest Proと同じ機能を多く備えている可能性が非常に高い。価格もQuest Proより安くなる(だろう)。また、高価かつ最先端で、仕事向けの製品になる可能性もあるVRデバイスに興味があるのなら、Appleも2023年に独自のMRヘッドセットを発表するとみられている。HTCが手掛けるより小型の「VIVE XR Elite」は携帯性に優れており、メガネをかけたまま使用することはできないが、一部の人にとっては、より実用的なサイズの携帯用ヘッドセットになるかもしれない。Meta Quest 2よりも高度なVRゲームを楽しみたい人には、確かなグラフィックスと機能を備えたPS VR2が最適だろう。ただし、PS VR2はケーブルでPS5に接続する必要がある。
とはいえ、最近になってMeta Quest Proを使い始めた筆者だが、本当に傑出した点もいくつかあると感じている。
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