PS VR2はより色彩豊かで明るいHDR対応OLEDディスプレイを備えているが、Quest Proは、筆者が今まで使用したほぼすべてのVRヘッドセットの中で最も画質が鮮明でくっきりとしたディスプレイを備えている。小型化されたレンズシステム(パンケーキ光学系と呼ばれる)と明るいLCDディスプレイの組み合わせにより、Meta Quest 2と顕著に異なる画質に仕上がっている。文字の明瞭(めいりょう)さ、ゲームの鮮やかさ、とにかくあらゆるもの鮮明さにはあらためて感動する。完ぺきではないが、価格が問題にならないのであれば、日常的な使用に最適なディスプレイだろう。PS VR2のフレネルレンズやほかのいくつかのVRヘッドセットと異なり、Quest Proのレンズには、年輪のような線も入っていない。常々言っていることだが、メガネの上に装着できるのはうれしい。ただし、Quest Proの装着感は、PS VR2に比べると、緩さやゆとりがない。
驚くべきことに、音質も秀逸だ。毎回イヤホンを耳に入れなければならないPS VR2を使っていたので、個別のヘッドホンを全く必要とせず、ヘッドバンドから音が出るMetaのヘッドセットは最高だ。Quest Proの音質は、筆者の耳には、PS VR2のイヤホンよりも優れているように聞こえる。ただし、オープンエアー構造なので、部屋のほかの音もすべて聞こえてしまう。VRの音と日常の世界が混ざり合うことは、未来のARグラスとMRヘッドセットが解決しなければならない課題であるように感じる。Metaは現時点でその課題に可能な限りうまく対処している数少ない企業の1つだ。
Quest Proを装着するときは、いつも、魔法のレンズをつけるような気分になる。メガネをかけた状態での装着感、そして、ゴルフゲーム「Walkabout Mini Golf」をプレイしながら部屋の中を気軽に歩き回っても、何かにぶつかることを心配しなくてもいいことが印象に残っている。部屋をより正確に認識できるようになったこともうれしい。ヘッドセットの左右両端のすき間から部屋が見えることも、その理由の1つだ。また、小型化されたコントローラーに違和感のないワイヤレスの一体型デザインのおかげで、VRの世界に没入できる。
その一方で、Quest Proは扱いにくい形状をしている。本体とヘッドバンドは大きく、ヘッドセットとコントローラーを充電するのに、専用の充電ドックが必要だ。毎回慎重に車庫入れしなければならない繊細なスポーツカーのように感じる。Quest Proと違って、Quest 2は前部が大きいとはいえ、全体的に小さいので、キャリングケースに収納しやすく、光沢のあるバイザーデザインも採用していない。また、筆者はQuest Proを使うたびに充電する必要があるので、棚にしまうだけでいいPS VR2と比べると、収納にも手間がかかりそうだ。
Quest ProのアプリとOSに関しては、Questとほぼ変わらない。そもそも上位機種が必要だったのか、と疑問に思うかもしれないくらいだ。後方互換性は良いことだが、インターフェースを再考し、MRをもっと押し出して、真に新しいアプリ群を作る機会はあった。カラーパススルーカメラやMRの機能(と視線追跡および表情追跡)を各種の効果のために利用する、Meta Quest Pro向けに最適化されたアプリは存在するが、そうした追加機能のほとんどは、必須とは言えないおまけ程度のギミックのように感じられる。
視線追跡と表情追跡は、今のところMetaにとって必要不可欠というわけではない。このことは、そうしたセンサー機能が、不安になるような度合いでの観察データの収集や、ターゲット広告の絞り込みにつながると考える人にとっては、大きな安心材料かもしれない。だが、それは同時に、このような技術の使い方が不要に感じられるという意味でもある。そう感じないのは、視線追跡と表情追跡の機能を使うアプリを開発しようとしている意欲的なQuest開発者くらいだろう。筆者も、視線追跡と表情追跡で自分のアバターを動かそうとしてみたが、うまくいくこともいかないこともあり、アバターが不気味に見えてしまうこともあった。Metaはすでに、音声を手がかりに人工知能(AI)を使ってアバターを動かすことができ、これは十分に機能する。
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