披露されたセットリストだけを見れば、両日ともに31曲で、各ユニット4曲ずつと全体曲が3曲。ユニット主体の活動をしてきたシャニマスにとして、最新の「PANOR@MA WING」と、ユニット始まりの曲を盛り込んだ、5周年を迎える集大成的なものであり、ステージ上のパフォーマンスも、これまで培ってきたものを存分に発揮していたと感じられるもの。さらには男性ダンサーや和楽器隊、ミュージカル風のステージやノクチルの制服姿などスペシャルな演出も盛り込まれ、見ごたえも聴きごたえもあるライブとなっていた……と言いたいところではあるが、そう単純に言い切れないものであったことは、観覧していたプロデューサーさんであれば明白だろう。
DAY1ではボイスストーリーを中心に、どこかしらに意味深な演出を盛り込み、一方でDAY2では未来を感じさせる演出を盛り込み、空気感や受けとる感覚を全く異なるものとしていた。特にDAY1については、なんらかの終わりをにおわせるものとあってか、心を揺さぶられたのが正直なところ。そして、それがあったからDAY2も揺さぶられるものがあった。確かなことを挙げるとするならば、提示された前提が異なると、楽曲から受ける印象も聴こえ方も異なるということ。そのことを強く実感したところはある。
ライブのコンセプトや演出の意図、ボイスストーリーの背景などが明示されていないため、どんな見解も推測になってしまうのだが、タイトルが「If I_wings.」と、「If」(もしも)があることや、主にDAY2で触れられていたようないろいろな道、いろいろな可能性、いろいろな未来があると、そのことを提示したと思えるもの。そして、奇跡の積み重ねで今があること、そんな今があるからこそ、ここまで考える、考えさせられるような挑戦的ともいえるライブ体験が味わえる取り組みができ、忘れられないものになったのではないか、と思ったところだ。
加えて、ライブ開催時の天候が、春を感じさせる暖かい陽気が続いたなかで、DAY1では雨天で急激な冷え込みがあったこと、そしてDAY2は回復して日中は晴天だったことは、もちろん偶然だと理解しているものの、それすらも演出のように思える出来事だったのは付記しておきたい。
また余談ではあるが、筆者お気に入りのアイドルが桑山千雪で、ユニットがアルストロメリアということを“踏まえなければ”、DAY2でのイルミネーションスターズ3人揃った「スマイルシンフォニア」で、筆者としては初めて3人そろってのフルバージョンを見ることができたことや、ここまでの演出が演出だけに、希望の光を感じて感激したことや、この公演と通して峯田さんから醸し出される、めぐるがいるという感覚がすさまじいというぐらいに感じられたところがある。そして、踏まえてみても触れておきたいところはある。まずは「VERY BERRY LOVE」と「Give me some more...」だ。
この2曲は「PANOR@MA WING 05」収録曲。アルストロメリアは“ポップでハッピーな3人組アイドルユニット”で、これまでは白やピンク、パステルカラーのような淡い色を基調とした衣装で、キュートな楽曲が多かったが、同CDジャケットイラストでは「マジーク・アルーア」という黒を基調とした衣装であり、楽曲もあわせて新たな一面をのぞかせるものとなった。
「VERY BERRY LOVE」は、恋と魔法をテーマにしたジャズワルツと呼べるような楽曲で、衣装が黒基調というのも魔法使いのイメージをかきたてるもの。キュートといってもさまざまな方向性があるなかで、ミステリアスな雰囲気を漂わせつつも“魅惑の幸福空間”や“理想郷”とも言えるような空気を感じられるものに。
そんななかで、芝崎さんが千雪として歌うときの穏やかとも、小悪魔ともとれそうな表情と的確なウインクも目を引くところではあるが、それ以上に印象的だったのは、黒木さんと前川さんの双子感だろう。大崎甘奈と甜花が双子というなかで、この楽曲の冒頭で、2人が鏡あわせのような振り付けして双子を表現しているところもあるが、とりわけ間奏後に芝崎さんが歌う後ろで、2人が後ろ向きに立っているのだが、そこでの“双子姉妹感”がすごいと思えるもの。DAY1では髪を下ろし、DAY2では髪を束ねているのだが、どちらもすごく双子と感じられる。そこから前を向いて手をつないだまま前に出て向き合うのだが、そこで芝崎さんが2人に優しいまなざしで目を配るところも、千雪の姿を感じさせるものとなっていた。
「Give me some more...」はジャジーな曲調で、セクシーな雰囲気を曲からも歌詞からも感じさせるもの。そうしたなかで腰ゆっくり回すような振り付けもあり、これまでのアルストロメリアにはない妖艶な魅力を放つものに。こと、千雪が着ているマジーク・アルーア衣装は、プロデュースアイドル「SSR【ハッピー・アイ・スクリーム】桑山千雪」のライブ衣装となっており、長めのスカートでスリットが入っているイラストなのだが、芝崎さんが着ていた衣装でもスリットが入っているとわかるものになっていたことに加え、太もものあたりをなぞるような振り付けもあり、歌詞にもあるような“大胆”で強気の千雪を感じさせるものになっていた。
DAY2の「Love Addiction」は、ライブでの新たな挑戦と言えるもので、楽曲にのせて、お茶会をしているようなミュージカル風のものに。「L@YERED WING 05」のジャケットイラストがイメージされるような、真っ白なテーブルにケーキスタンド、ティーカップがステージに用意。また、前川さんがベンチからステンドグラス風のパラソルを手にベンチから歩くシーンもあるが、サポートアイドル「SSR【そらカラフル、幾千の】桑山千雪」で、3人が持ってるパラソルを想起させるもの。ティカップで乾杯をしたり、楽しく会話しているような光景もさることながら、お茶を注ぐ芝崎さん、ティーカップを手にうっとりとした表情を浮かべる黒木さん、お菓子を手に美味しそうな表情を浮かべる前川さんといったあたりは、それぞれ千雪、甘奈、甜花のらしさを感じさせるものだった。
もちろん、ユニット始まりの曲である「アルストロメリア」も、マジーク・アルーアで歌うことの新鮮さと、いつも以上と思えるぐらいの、幸福感のあるステージに。甜花のことを見守る千雪と甘奈の姿をほうふつとさせる前川さんが歌うソロパートも健在。会場中に笑顔の花を咲かせていた。
そんな光景がよりまぶしかったり、尊いとも思えるのは、やはりDAY1を見ていたからであろう。それぐらいDAY1で見たアルストロメリアのステージは、感情的になるものだった。
「Anniversary」は、想いを伝える壮大なバラード曲。これまでも幾多の場面で歌われ、染み入るような歌声が穏やかで切ない気持ちにさせてくれた。そして、ここで前述のようにボイスストーリーがあり、その内容はライブの舞台裏と思われる場所で、客席の光を見ながら、かつて語った“幸せだと思うこと”を思い出しながら言葉を重ねるなかで、次第に甘奈が涙声に変わっていき、“アルストロメリア、私たちの未来……”“やっぱり、おしまいにしたくない”という言葉を口にする。そしてコミュの「YOUR/MY Love letter」を想起させるような言葉を掛け合い、ステージに立つ。
振り返ると、DAY1におけるボイスストーリーは、7ユニットのなかではここが最初。泣かせにいくというぐらいなことをして、冒頭における努とはづきの意味深なやりとりや、アイドルとしての挨拶から生み出された空気感を、より強める大きな役割を果たした……と、時間が経過した今であれば書けるのだが、このときはボイスストーリーを聞いて「え……?」としか思えず、さらに「Anniversary」は、あくまで筆者が見た感じでは、いつも以上に穏やかで明るいと感じさせる表情で歌っていたため、切ない気持ちをより強くするもの。そして、普段聴いていてもウルっときそうな曲であるところ、歌が進むにつれ涙腺をより刺激いくものだった。
そして、これまでと大きく違って聴こえたのは、「ダブル・イフェクト」だ。従来であれば、天使がイメージできるような動きや、飛べなくなることを示す場面でカクッと人形ぽくなるところような振り付けのかわいらしさが特徴的なもの。ポップな曲調と3人で織りなす歌声の心地よさを感じられる楽曲……と、紹介できるようなもの。その一方、ここでのボイスストーリーは、アイドルとしての最後の曲を歌うことを示唆する内容。そして千雪が“最後だから、ね、笑おうよ”と口にする。
DAY1におけるユニット曲の後ろから2番目、積み上げてきたものにダメ押しするぐらい、ポップな雰囲気とは裏腹と言えるぐらいの聴こえ方が異なること、そして楽曲の重み、歌詞の重みを強く感じるもの……と、こちらも今だから書けるのだが、このときはとにかく笑顔が切ないということ、笑顔だからこそ心が刺されるような、それで自然と涙が出てくるような感覚だった。
DAY1のときは「VERY BERRY LOVE」や「Give me some more...」の披露もあったのだが、それを忘れるぐらいに、極端な言い方かもしれないが「こんなに切ない気持ちしかないアルストロメリアのステージは初めて」ぐらいの心境だったのが、正直な本音としてあった。そんななかでもDAY2公演を見て、改めて曲を聞いたり歌詞を見たりコミュを見返したり……と、向き合っていろいろと考えを巡らせたのも、こうした演出だったからと今だったら思えるもので、それぐらい心揺さぶられ、そして忘れられないものだった。
加えて、振り返るなかでボイスストーリーで千雪が“少しずつ、変わっていくだけ”“また、何かが始まる”と、アルストロメリアは終わらないことを2人に話しているところも、心に残るところだった。それは千雪自身の願望かもしれないが、いろんな道にあるひとつがDAY1の世界としたら、たとえアイドルではなくてもいろいろな道があり、いわゆる“バッドエンド”ではない未来もある……とまで考えるのは妄想がすぎるのだが、DAY1の世界の先ではそうあってほしいと感じた次第だ。
そして余談を重ねて恐縮だが、DAY1アンコール時の挨拶で芝崎さんによる「5」にちなんだ個性を感じさせるトークで空気をやわらげたことに関心が行きがちだが、そのなかで“思い出は質”と、出会った年数に関係なくこれから思い出を積み重ねて高めてくと話しているところに、グッときたことは付記しておきたい。
本ライブについては、「ASOBISTAGE」でのアーカイブ配信を期間限定で実施。配信期間はDAY1とDAY2共通で、3月27日23時59分まで(視聴チケットの販売期間は3月27日12時まで)を予定。詳細は5thライブ公式サイトまで。
今後の展開についても発表された。大きな発表となったのは、前述したようにTVアニメーションプロジェクトの始動。2024年春にTV放送予定とともに、それに先駆けた劇場先行上映も、2023年10月27日から開始。詳細はアニメ「アイドルマスター シャイニーカラーズ」公式サイトに記載されている。
そして、これまでゲーム内コミュに登場していた、斑鳩ルカの283プロダクションに加入を発表した。
シーズのイベントコミュが読み放題となる「シーズ イベントコミュ読み放題キャンペーン」を開催。ルカが登場するシナリオも対象になっているという。
このほか新ロゴをはじめ、ゲーム内キャンペーンや機能実装、アソビストアでの一部イベント公式グッズの追加販売、環境省とのコラボ続報、5thライブの映像商品化、「283PRODUCTION SOLO PERFORMANCE LIVE『我儘なまま』」の開催を発表している。
THE IDOLM@STER TM&(C)Bandai Namco Entertainment Inc.
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