Umamoを使ったサプリメントを発売し、現在は調味料も開発中だ。これらのビジネスを軌道に乗せたら、持続可能な社会にとって本当に必要な「養殖魚の飼料」への展開を目指しているという。
その背景にあるのが、水産資源の危機的状況だ。
「魚は寿司で食べる以外にも、うま味になったり、DHAサプリになったり、養殖の餌になったりと、いろいろなところで使われているが、実はかなり危機的状況にある。世界の海産資源は、個体数を保てなくなっている種が35%近くもいると考えられており、とても危機的状況にある。それが如実に現れているのが日本近海で、(1984年の)ピーク時は1282万トンだった水揚げ量が、今は421万トン(2021年の漁業・養殖業の生産量)まで落ちている」(高田氏)
しかし、現在の養殖魚は海産資源を守るためのソリューションになっていないと高田氏は語る。
「マグロやタイなどは、アジやサバなどの小魚を大量に与えて育てている。なぜ魚に魚を与えているのかというと、魚はDHAがないと育たないからだ。そのDHAを持つのがアジやサバなどの天然魚なので、天然魚で魚を養殖するという構造になっている。では、魚が持つDHAやタンパク質を別の方法で作れれば、天然の魚を減らさずに養殖が実現できるのではないかと考えた。それを実現するのが当社の最終的なミッションだ」(高田氏)
ただし、現状のAlgaleXの藻類製造技術では、天然の魚の代替になるまでには価格が下がっていない。高田氏は「これからさらなる技術革新が必要ではあるが、この未利用資源から藻を通じて必要な栄養素を作り出すという技術は、将来的には養殖の持続可能性への解になると考えている」と語る。
また、藻を育てる餌になる泡盛粕の品質に“ロット差”があっても一定した品質を保てると高田氏は自信を見せる。
「藻などの微生物を育てるときには、基本的には餌や条件などのインプットが同じでないと、一定したアウトプットが出てこない。しかし当社の場合、泡盛粕にどれだけロット差が出ても、培養工程を制御しながら最終的に狙ったスペックまで落とし込んで生産する技術を持っているのがユニークなポイントだ。この技術を磨きあげて、最終的には魚よりも安く、栄養価の高い藻を作り出すことを目指して行く」(高田氏)
養殖魚向けの飼料に使えるまで単価を下げるのはかなり難しそうだが、海洋資源を持続可能にするためには重要な取り組みになりそうだ。
「考えたくはないが、この業界に身を置いていると、魚が本当に取れなくなるときが来ると考えざるを得なくなる。そのときにAlgaleXの技術を使えば何とかできるのではないか。世界にそう思われる企業でありたいと思っている。今のうちから植物性のDHAや、持続可能な水産業に興味がある事業者とお互いがウィン・ウィンになれる取り組みがあれば、沖縄県の内外を問わず一緒に取り組んでいきたい」(高田氏)
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