しかし、そうした利点はおそらくエンジニアリング面での課題をさらに増やすだろう。Young氏によると、モーターとスライド機構によって電力消費量が増える可能性が高いという。
「いくつかのブランドから、課題が山積しているという話を聞かされた」(同氏)
Motorolaがこのようなコンセプトを示したのは、今回が初めてではない。2022年のレノボの「Tech World」カンファレンスでも、巻き取り式スマートフォンのコンセプトを披露している。しかし、MWCでも披露したことは、この分野におけるMotorolaの意欲の高さを物語っている。
巻き取りやスライド、拡張が可能な画面を備えたスマートフォンを作ることに関心を持っている企業はMotorolaだけではない。約2カ月前、サムスンも未来のスマートフォンとタブレットの形に関するビジョンを示した。そのときの主役はコンセプトモデル「Flex Hybrid」だった。Flex Hybridは、閉じた状態だとノートPCのような見た目だが、本体を開くと、画面サイズを10.5インチから12.4インチまで引き伸ばせるようになる。
LGも、「CES 2021」で巻き取り式スマートフォンのコンセプトを先行的に披露して注目を集めたが、その後まもなく、スマートフォン事業から撤退した。中国のOPPOは、画面サイズを6.7インチから7.4インチのタブレットサイズまで引き伸ばせる巻き取り式スマートフォンのコンセプトを開発している。
その一方で、折りたたみ式スマートフォン(一般に、未来の巻き取り式デバイスの先駆けになると考えられている)は依然としてスマートフォン市場全体でごく小さなシェアしか獲得できていない。International Data Corporation(IDC)によると、折りたたみ式スマートフォンが2022年のスマートフォン出荷台数に占めた割合はわずか1.1%であり、2026年には2.8%に増加する見通しだという。それでも、メーカー各社は先を見据えている。
「差別化を実現するには、イノベーションを続ける必要がある」。そう語るのは、The NPD Groupのエグゼクティブディレクター兼モバイルアナリストを務めるBrad Akyuz氏だ。「ライバルに勝つにはそれしかない」
「コンセプト」という言葉が肝要だ。これらのデバイスは、製品ではなく、各社が未来のスマートフォン開発の方向性を示す概念実証である。つまり、Motorolaやサムスン、その他のデバイスメーカーの巻き取り式スマートフォンがいつ発売されるのか、あるいは本当に発売されるのかどうかさえ不明なのだ。
折りたたみ式スマートフォン市場は、青写真の役割を果たすかもしれない。サムスンが折り曲げ可能なディスプレイ技術のデモを披露したのは2013年だが、半分に折りたたむことができる最初のスマートフォンを発売したのは、2019年のことだ。
巻き取り式スマートフォンが近いうちに登場するかどうかに関係なく、アナリストは、このデバイスがテクノロジー業界の定番製品になるまでには数年かかると考えている。Akyuz氏は約3~4年と予測しているが、市場調査会社Gartnerのディレクターで、通信業界を担当しているBill Menezes氏は3~6年と予想している。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
トラディショナルからモダンへ進化するBI
未来への挑戦の成功はデータとともにある
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境