パナソニック オートモーティブシステムズは2月14日、車室空間ソリューション室の取り組みについてセミナーを開催した。既存の車室空間をベースに、パナソニックが持つ音響や照明、衛生技術などを組み合わせた3つのコンセプトカーを披露した。
パナソニック オートモーティブシステムズ 車室空間ソリューション室室長の大田馨子氏は「私自身、パナソニックでコンシューマー向け製品の企画を担当してきた経験と、オートモーティブ以外から異動してきたメンバーも含め、車に求められるこれからを一緒に模索しながら活動している。大切にしているのはエンドユーザーの気持ちに寄り添うこと。そのためにユーザーの声を聞くことに時間をかけている」と車室空間ソリューション室の役割を話した。
コンセプトカーは「今までは、カーメーカーと新たな商品を検討するのがメインの活動だったが、それをパナソニック側からの提案に変えていきたい。当然カーメーカーも車の新たな形を模索しているので、すでに気づきもあると思うが、それでも構わない。私たちが持つ商材を強みに、エンドユーザーの声を聞いた上での試みになる」(大田氏)との思いから作られたもの。2025年、2028年をターゲットに据えた5つのコンセプトカーを考えており、セミナーでは「ファミリー」「シニア」「Z世代」をテーマにした3つを披露した。
ファミリーは、2020年のコロナ下で開発をスタート。人との接触や外出を控えることが求められる中、衛生面に配慮し、次亜塩素酸を用いたミストやUV光を備え、手元、足元をクリーンな状態で保つシステムを装備した。
3列シートの広い車室内には、左右の座席の間に長いテーブルを用意。外食がしづらい状況を加味し、車内でも快適に食事ができる環境を整えた。テーブルの上にはスポットライトを備え、食事が美味しく見えるようなライティングを採用しているという。
シニアは、約6万人のユーザー調査を経て、課題を洗い出して生み出されたコンセプトカー。70代のドライバーをターゲットにしており、「身体機能が落ちている部分を補完する」「長年身につけてきた運転技術を、今の時代に合わせアップデートする」に注目したという。
特徴的なのはダッシュボード上に取り付けられたマスコット。ドライバーと話すことでコミュニケーションを取り、運転をサポートする。これは「運転中に夫が横に座っているとアドバイスしてきて気になる」といった声を受け、「マスコットであれば受け入れやすいのでは」という思いから採用したもの。一人暮らしの人向けにも「ドライブ中に会話することで気分展開になるのでは」という提案の意味も込める。
車内にはカメラを配置し、ドライバーの顔を認識することで、左右確認を促すなどの支援ができるとのこと。外部にマイク、内部にスピーカーを備え、外の音が聞き取りやすくなる配慮もされている。
Z世代は、コンセプトカーというよりも、知ることでZ世代のニーズを見つけたいというプロジェクト的なプロトタイプ。駐車場と車がセットで利用できる賃貸物件的なサービスや後部座席が簡単にプライベート空間に変わるプロダクト、スマートフォンから車内の空調や照明が制御できる仕掛けなどを提案する。
いずれのコンセプトカーも、カーメーカーに提案済み。大田氏は「研究段階なので、どんなヒントにつながっていくのは見出しきれていない。それと平行し、ここでのサービスが新規事業の何かしらのアイデアになればいいなと思っている」とコメントした。
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