なぜ大阪メトロは「QR」「顔認証」「クレカのタッチ」改札を導入するのか--交通系ICにはない利点 - (page 3)

交通系ICにはないメリットとは

 2021年の南海電鉄を皮切りに全国でスタートした鉄道事業者のオープンループ対応(クレジットカードのタッチ決済を利用した改札)だが、大阪を中心とした関西エリアは当面の震源地になるだろう。理由の1つは冒頭にも挙げた2025年の万博であり、諸外国からの集客、そして最新技術のデモンストレーションを兼ねたお披露目という側面が大きい。

 オープンループならびに、アプリやWebサービスを使ったモバイル端末でのQRコード乗車の最大のメリットは「クレジットカードやデビットカードさえあれば、誰でもそのまま公共交通を利用できる」という点にある。わざわざ日本でしか流通していない交通系ICカードを、空港などで購入する必要がないわけだ。

 また、交通系ICカードそのものはクレジットカードで購入できたとしても、場合に応じて残高をチャージする必要がある。これは現金でしか行えず不便だ。その点でインバウンド利用に最適なほか、日本国内在住者でも「ふだんは交通系ICカードをほとんど使わない」という人でも利用のハードルは低い。

交通系ICなしでの移動の自由度が向上

 南海電鉄が先行した理由の1つは「関西国際空港へのアクセス路線を持つ」という点が大きいが、南海電鉄だけでは大阪市内での沿線ならびに和歌山や高野山エリアにしか行けず、大阪でも難波以北では交通系ICカードが必要になる。

 だが今回、大阪メトロが対応を表明したことで、アクセスできる範囲は格段に広くなる。もともと、関西の鉄道事業者は南海電鉄でのオープンループ乗車の実証実験の行方をずっと見守っており、これが一定の成功を収めたことで、大阪万博に向けた本格導入動きが加速した格好だ。

 今回は大阪メトロの発表だったが、競合他社もこれに続くことはほぼ確実視されている。阪急阪神ホールディングスは2024年度までに全駅でのQRコード対応改札の導入を表明しており、実際すでに一部の駅では導入が始まっている。

 これにより、交通系ICカードを持たないインバウンド旅行者であっても、スマートフォンさえあれば阪神電鉄ならびに阪急電鉄のカバーエリアである、神戸、京都、奈良、三重方面にまで簡単に足を伸ばせるようになる。ポストペイド型交通系ICカード「PiTaPa」を推進する「スルッとKANSAI協議会」でも、2024年春をめどにしたQRコード乗車サービスの開始を発表している。

 スルッとKANSAIはJR西日本を除いた関西エリアの私鉄連合と呼べる存在であり、前出の阪急阪神HDのみならず、南海電鉄や大阪メトロ、さらには他の私鉄事業者を含めて連動した動きと考えられる。2025年の大阪・関西万博を前に、2024年にはタッチ決済対応はともかく、QRコード乗車のサービスが一斉に導入されることが予想され、交通系ICカードなしでの移動の自由度がかなり向上するはずだ。

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